『感知した真実』
物語が核心に進みつつあると直感したのだろうか、わたしは自分でもよく分からないけれど、彬くんに先を促していた。
すると彬くんは、赤ちゃんに向けていた体を今一度正し、わたしをまっすぐに見据えた。
それは思いつめてる表情にも見えたし、けれど穏やかな眼差しにも思えた。
もしかしたら、先ほどから繰り返し披露してくれた、常識外のセオリー とも言えるいくつもの出来事達を経て、諦めざるをえない心境に至ったのだろうか。
何にしても、これから聞かされる話こそが、今のわたし達夫婦に突きつけられてる現実なのだと、身震いしそうな時間の訪れを察した。
『……今日、久しぶりに、アヤセさんが俺に会いに来たんだ。ゆっくり話したいことがあると言われ、夕食を一緒にとることにした。まあ、結果として夕食どころじゃなくなったんだけど……。アヤセさんが未来から時間を戻って来てる人だというのはもう知っていたから、話というのは、何か未来に関係してることなんだろうと思った。俺達の子供が生まれた直後のこのタイミングで突然現れたアヤセさんに、妙な胸騒ぎはあったんだ。でもただの勘違いだと言い聞かせてた。残念なことに、それは勘違いではなかったけど……』
『それはさっき言ってた心臓の病気のこと?』
『ああ、そうだ。アヤセさんが言うには、この子は近いうちに心臓に病気が見つかるそうだ。放っておいたら死に直結するような病気だ。でもそれは、俺達の生きてる今のこの時代には、治療法が確立されていない病気なんだ』
『そん、な……』
その深刻さに、わたしは言葉を失ってしまう。
部屋の隅には、何も知らず健やかに寝息を奏でる息子がいるのに。
その寝姿はもちろん、起きているときだって、どこにも、なんにも、異変なんか見当たらないのに。
元気な赤ん坊そのままなのに。
けれど狼狽えるわたしに対して彬くんは、
『でも助かる方法がひとつだけあるんだ』
凛々と訴えてきたのだった。
わたしは、彬くんの信じ難い思い出話がようやくここに帰結するのかと、感情の枠外で感知した。
『………それは、この子を、未来の住人であるアヤセさんに、預けるということ……?』
もうそれ以外考えつかなかった。
今のこの時代には治療法が確立されていない病気だと、彬くんは言った。
だが、例え今のこの時代には確立されていない治療法でも、未来では当たり前に完治する病気なのかもしれない。
そう仮定しないと、未来から来たというアヤセさんにわたし達の息子を託す説明がつかないのだから。
返事を聞くまでもない、そう思っているのに、それでも彬くんの口から直接知らされたかったわたしは、じっと待った。
やがて彬くんは、さきほどの穏やかさを隠した苦悶の表情で、
『―――そうだ』
唇を噛み眉を歪めながら、認めたのだった。




