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『知らされた真実』





『それなのに何も知らないフリをするなんて、ちょっと変だ。何かがおかしい。だから、もう一度真意を知りたくて、叔父に電話した。叔父はすぐにつながって、何てことはない感じに答えたんだ。”だって、最初の電話のときはまだ過去に戻る前だっただろう?” って。………つまり、叔父は、俺が時間を遡れるようになることを、最初から知っていたんだ』


穏やかになりつつあった彬くんの声に、悔しそうなヒビが走る。

けれどそれよりも……



ちょっと待って、―――――知っていた?最初から?叔父さんが?



わたしは、あまりにもたくさんの情報量でパンクしそうで、

ギリギリで回す思考の中、状況を整理した。

彬くんの叔父さんは実は叔父さんではなく、アヤセさんという他人だった。

そしてそのアヤセさんは、なぜだか彬くんをずっと監視していた。

最後に、アヤセさんは、彬くんが時間を戻る力に目覚めることを、前もって知っていた………



だとしたら、なぜ、そのアヤセさんという人は、彬くんのそのことを話さなかったのだろう?

いや、でも……仮にアヤセさんが全てを知っていたとして、それを最初の彬くんとの電話で教えてしまってたら、その後彬くんは、過去に時間を戻ることができなかった―――――その可能性はないだろうか?

アヤセさんが何もヒントを与えなかったからこそ、彬くんはわたしを想う気持ちが大きくなって、その結果過去に戻れたのだとしたら、アヤセさんのとった行動は大正解だ。


それに、さっき、彬くんはアヤセさんに監視……いや、見守ってもらっていたと言った。

ということは、そのアヤセさんという人は、彬くんが時間を行ったり来たりできるようになることを見越して、ある意味、先導していたということなのだろうか?

そしてそんな重要人物に、彬くんは、この子の病気のことを教えられた……

じゃあやっぱり、わたし達の子供が心臓の病気になるのは間違いないのだろうか……


冷静になればなるほど、絶望的な事実の色が濃厚になってくるようだった。



『叔父の話では、叔父も、俺と同じような力を持っているらしい。それで、俺にも同じ力があると分かった叔父は、俺がその力を得たあと、とんでもないトラブルを起こさないように気にかけていたんだ。正直、俺は、最初から教えといてくれと腹が立った。けど、俺が過去に戻る前に叔父から何か聞くことで、もしかしたらその力を得られなくなる可能性があったんだと説明されて、納得せざるを得なかった。さっき言ったバタフライエフェクトのことだ。それが起こらないとも限らなかったんだ。だって、もし俺が過去に戻れなかったら、千代はあの階段から落ちて、骨折どころか命を落としていたかもしれないだろ?何か一つでも条件が違ったら、まったく別の未来になっていたかもしれない。だから、過去に戻るということは、下手したら未来に大きな変化をもたらしてしまうかもしれないんだと、きつく念を押された。その後叔父から、この力について少しだけ教えてもらった。叔父自身もすべてを把握してるわけじゃないらしくて、色々慎重に試したりして研究の最中だと言ってた。このとき俺が知ったのは、自分の感情が高まったときにこの力が発動されることが多いとうこと、過去から現在に戻るタイミングはその時々だけど、はじめの頃は長い時間は滞在できないということ、でも慣れてくると、それもコントロールできるようになる場合があるということ、過去で自分がとった行動が原因で、人の生き死にに影響を及ぼす場合もあるということ、逆に、自分が過去に戻らないことで、過去の歴史を変えてしまう場合もあるということ、だった。あのときの千代の事故が、まさにそのいい例だ……』


長い説明になっても、一語一語を流したりはせず、彬くんは、しっかりと、その意味や内容を(かたど)るようにしてわたしに伝えてきた。

それは、わたしに知らしめる為というよりも、もしかしたら自分自身の理解を深める為なのかもしれない。

なぜだかそんな風に感じた。



『わたしの事故って、わたしの両親が亡くなったときのこと?』


『ああ、そうだよ。あの日、病院で、千代から ”手首にほくろのある男の人に助けられた” と聞いた俺は、おそらくそれは過去に戻った今の俺(・・・・・・・・)だと思った。問題は、いつの俺が過去に戻ったのか…だった。なにしろ、高校の時みたいに、何年も経ってから過去に戻って千代を助けるというパターンもあったわけだからな。それで千代にそれとなくその男の様子を訊いたら、偶然にもその時の俺と似たような格好だったと知って、俺は、すぐに過去に戻れるのか試してみた。そのせいで千代を病院で一人きりにさせてしまったけど、とにかく俺は、千代を助けなきゃと必死に考えたんだ。病院の駐車場で、車の陰に隠れるようにして、懸命に念じてみた。今ここで俺が過去に戻らないと、千代が車に轢かれてしまうかもしれないと、焦る気持ちが先走ってなかなかうまくいかなかったけど、しばらくした時、それは突然起こった。ほんの一瞬で、俺は、病院の駐車場から交通量の多い交差点の歩道に移動していたんだ。ちょうどその近くにあった店の窓ガラス越しに壁時計が見えて、時間は、千代が病院に運ばれたとされる時間の少し前だった。場所は、よく知ってる繁華街。でも俺は、肝心の千代が事故に遭った明確な場所を聞いてなかった。大急ぎで辺りを探しまわった。そうしたら、ぎりぎりのところで千代を見つけられて……その後のことは、千代の記憶と同じだ』



そんなまさか、信じられない……本当に、そんなことがあるのだろうか。

結果的に、二度も彬くんに命を助けてもらっていただなんて。


でも………でもきっと、事実だ。



わたしに今できることは、そうやって、彬くんから知らされる真実をしっかりとひとつずつ、ちゃんと理解していくことしかない……そう思ったのだった。










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