『一人じゃない』
彬くんはすぐにわたしに向き直ると、『千代、その人に助けてもらった場所はどこだった?』と訊いてきたのだ。
『え?どうして?まさか、わたしを助けた男の人を探しに行くつもり?』
それ以外考えられない。
『でももう結構時間経っちゃってるから、きっとあの辺りにはいないと思うよ?』
どうせ探すのなら、後日改めてちゃんと探した方がいいように思う。
あの通りには色んなお店があるから、目撃者だっているかもしれないし、他にも手がかりが見つかるかもしれない。
なのに彬くんは、真剣な顔でなおも催促したのだ。
『いいから。詳しい場所を教えて』
彬くんは、少しも引く気を見せない。
『じゃあ、わたしも一緒に行くよ』
『いい。千代はここで俺の母さんを待ってて』
『でも……』
『ダメだ。千代は母さんと一緒に俺の家で待ってるんだ。俺に任せて、とにかく、場所を教えて』
彬くんは絶対に譲らないと言わんばかりの強さで告げた。
そのあまりの圧に負けて、仕方なくわたしは詳細を伝えるしかなかった。
『……わかった。じゃあ俺は行ってくるから。母さんが来るまで少しの間一人になるけど、平気?もう馬鹿なこと考えたりしない?』
『それは、……うん、もう大丈夫だと思うけど…』
彬くんにあれだけ ”一人じゃない” と刷り込まれれば、気持ち的には、ずいぶん落ち着いていた。
『よし。俺の家に着いたら、先に休んでてくれていいから。俺を待たなくていい。わかった?』
そう言うや否や、彬くんはわたしの返事も待たず、かなりのスピードで駆け出し、ロビーから出ていったのだった。
その様子からして、どうしてもわたしの命の恩人を探し出したいという気持ちが透けて見えるようで。
それだけ、その人にお礼を伝えたいということだろう。わたしを助けてくれたことへの感謝を。
駆けていく彬くんの背中に、わたしへの愛情が見え隠れしていた。
一人きりになってしまったわたしだったが、ちっとも寂しさを感じなかったのは、きっと、その愛情を、確かに見つけたせいなのだろう。
わたしは、常夜灯達と一緒に迎えを待ちながら、彬くんがあの男の人を見つけられますように……そう願っていた。




