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スキル『裁縫』

あれから数日が過ぎ今日も日課のトレーニングをしている。



 この数日、木材を加工してかぎ針を作り、ハールスパイダーの糸を編み込んでいた。

  とりあえずパンツとランニングシャツが今日完成するだろう。次はズボンを作る予定だ。


  今までの服は蜘蛛に追いかけ回され、枝であちこち破けてしまったのでもう使い物にならない……

  ボロボロで手ぬぐいにも出来なさそうだったので昨日、供養葬をしたのだ。よく今まで耐えてくれたと思う。ありがとう。

 

 そのため 新しい服は急務であったのだ。


 編み物は小学生の時にハマっていて、よく同級生にからかわれたものだ。

  しかし今役に立っているのだから俺の趣味も捨てたもんじゃなかったって事だろう。


 全裸でランニングから帰ってきた俺は、鼻歌を歌いながら作りかけのシャツを取り出し最後の仕上げをしていた。


「~♪  っと、できた!」


 結局あの後、1個しか糸ボールを拾えなかったのだ。使い切ってしまったが、また拾いに行けばいいだろう。少し丈が短いが大丈夫かな?


そう思って出来たばかりのシャツとズボンを見てみた。


―――――――――――――――――――――――


 《投蜘蛛糸の防刃ブリーフ》

 ハールスパイダーの糸で作られたブリーフパンツ。

 しなやかな履き心地と防刃性が特徴。 質:良


 《投蜘蛛糸の防刃スポーツブラ》

 ハールスパイダーの糸で作られたスポーツブラ。

 しなやかな付け心地と防刃性が特徴。 質:良


 ―――――――――――――――――――――――


「なっ…………」


 俺は無言でスポーツブラを地面に叩きつけた。



ピンポーン


 《スキル『裁縫』を獲得しました》



「なんでスポーツブラなんだよ! 丈がちょっと短いだけじゃねぇか!」


 ていうかズボンも無いから結局パンツ一丁になる事を完全に失念していた! こんな事なら供養葬しなければよかった……いや、でも血塗れでもう着たくなかったし……


仕方がない……この後、糸ボールを探しにいくか……


 俺は渋々といった感じでパンツとスポーツブラを着けていく。思ったよりふわふわで気持ちよく、体にフィットしている。


「うーん……悔しいが付け心地がいい……」


 でも俺の背丈に合わせて作ったはずだったけど、たしかに短いな……鳩尾までしかないや……背でも伸びたのか? いやいやもう三十路手前だ、背が伸びるなんて有り得ない。

 

 もしかして神様が肉体を再構築してくれた時におまけで伸ばしてくれたのかな?自分の手足を見てみると確かに記憶にある前の体とは違い程よく筋肉も付いているので違うとは思うが、あまり違和感がないので気にならない。まぁ鏡も無いから確認できないけど……


「まぁいいや……探索に行こう」


 少し怖いがしっかりと『隠形』を意識して行動してれば大丈夫だろう……ついでに、できればでいいが魔獣が魔法を使ってるところを見てみたい。

 

 あれから数日、呪文を唱えてみたり物を不思議パワーで動かしてみようとしたりしたけど、何も起きなかった……もし魔法を使ってるところが見られれば何か糸口が掴めるかもしれない。



 俺は槍と斧を背中に結ぶと、竹かごを持って森へと向かった。


 先日の戦闘した場所の辺りをくまなく探すが糸ボールが見つからない……まさか回収されたのか?

 あれだけ沢山投げつけてくれたんだ、一つくらい落ちててくれてもいいじゃないか!


  仕方がない……先ずは蜘蛛を探すか……


 そう思って慎重に森の奥へ足を踏み入れる。

 10分ほど進みそろそろ引き返そうかと思った時、前方の藪の奥から悲鳴が聞こえてきた。


「ギィギャー!」


 俺は咄嗟にその場でしゃがみ込むとゆっくりと藪の中に入り向こう側を覗いてみる。


「ギシャジジジジジ」


 カチカチと顎を鳴らしながら獲物を追い詰める蜘蛛が見えた。獲物は2メートル程の大きなヒト型で、ツノが額から1つ生え、全身深緑色をしていた。いわゆるゴブリンだろう……デカイけど……

 

糸ボールを当てられたのか、足が変な方向に曲がっていた。


―――――――――――――――――――――――


 種族 : タクティクスゴブリン


 生命力 : 427/1040

 体力  : 240/1870

 魔素量 : 90/420

 筋力 : 743

 技量 : 521

 知力 : 457

 魔力 : 570

 速度 : 441

 幸運 : 236


 スキル:『棒術』『筋力上昇(大)』『威嚇』

 魔法:『土魔法』


―――――――――――――――――――――――


……なかなかなステータスだ。ゴリラの劣化版っぽいが、コイツも魔法を持ってる。しかし10匹ほどの蜘蛛に囲まれて今はどうすることもできないみたいだ。


 もしかしたら魔法を使うかも、と『万物視』を発動し、目を皿のようにして観察する。

 

 じわじわと包囲を狭めていく蜘蛛に悔しそうに威嚇するゴブリンが最後の力を振り絞り地面を強く叩いた。すると一番近くにいた蜘蛛の下の土が盛り上がり、腹に勢いよく突き刺さった。


「!! ッギジジ!」


 深手を負った蜘蛛を見て怒り狂った仲間たちが一斉にゴブリンへ襲いかかった。


「ギャァァ!」


 最後の威嚇も虚しく蜘蛛の牙が次々と緑色の肌を突き刺していく。そして、しばらくすると鳴き声が聞こえなくなった。


 俺はしばらく放心していたが、自分の状況を思い出し糸ボールがないかと辺りを見渡す。するとなぜかスイングスパイダーが糸ボールを回収し、体に括り付けているではないか!


 くそ! やっぱりあいつらが回収したのかよ! 何に使うんだ!?


 俺も必死で探したが、もうどこにも見つからなかった。


 仕方なくトボトボと家へ帰る後ろ姿は、まさに不審者であった。

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