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プロローグ

 今日もまた代わり映えのしない1日が始まった。


 大学を卒業して近所の工場に就職してから早5年、単純なライン作業を終え今日も帰路へつこうとしていた。


「おう西村! このあと武田と飲みに行くけど久し振 りにおまえも行かないか?」


「すいません林さん、今日この後、宅配来るんで急いで帰らないと……」


「なんだよ、またプラモでも作ってんの?」


「まぁそんなところですね」


「ふーん……まぁしゃあねぇな! せっかくうまい焼き鳥屋連れてってやろうと思ったのに!」


「すいません、また誘ってください」


 そう言ってそそくさと帰る準備をする。


 別段、人間関係に不満がある訳じゃない。2年先輩にあたる林さんも多少強引だが、飲み代は奢ってくれるわ、ちょくちょく休憩中に缶コーヒーなど買ってくれる気のいい兄貴分なのである。


 そういう人との繋がりも大事だとは思うが、俺は元来インドア派の人間だ。

 なにか1人でこつこつ物を作ったりするのが好きなのでさっき言ってたプラモデルなんかの趣味も同僚たちによく知られている。


 今日は最近はまっているレザークラフトのキットが届く日で、朝からワクワクしていた。


 疲れた身体を引きずって帰宅し、自作したワークテーブルを片付けて、宅配の到着を待っていた。


ピンポーン


「きたきたぁ!」


 玄関前も掃除したし、玄関から見える部屋の中も綺麗にしてある。配達員も不快な思いをしないだろう。

 どうでもいいと思うかもしれないが、こういうのは気持ちが大事なんだよ気持ちが!


ウキウキしながら玄関のドアを開ける。


「はーい……はっぁ!?」


そこで目に入ったのは鬱蒼とした森、見たことない花、むせ返るような青い匂い。


なぜか家の前がジャングルに覆われていた。


「ははは……俺そんなに疲れてんのかな……それともストレス?」


きっと自分が思っているより疲れてたんだ…今日は早く寝てレザークラフトは明日にするか…


「なっ! ない!? あれ!?」


さっきまで握っていたドアノブがない………っていうかドアがない…


恐る恐る後ろを振り返ると、いつもは見慣れた1DKの俺の部屋ではなく、ただ木や岩が見えるだけ……


「嘘だろおいっ!」


頭が真っ白になり呆然とする。

 

ふと足元を見ると、受け取ってもいないし印鑑も押してない、届くはずだったレザークラフトキットが入っているであろうダンボール箱が目に付いた。


仕方なくダンボールを開け中を確認すると、入っていたのはただの紙ペラ1枚……そこにはこう書かれていた。





拝啓、西村 京 様


この度は、弊社『ゴッツクラフト』の製品『誰でも作れるレザークラフトキット中級者編ー革財布BKー』をお買い上げ誠にありがとうございます。


しかしながら弊社の配送手続きの不手際により、西村様自身を異世界『アンシャネス』へと転送してしまいました。


西村様の身体を分解、転送、再構築することにより、なんとか魂の劣化は守られましたが、因果律の関係で元の世界の西村様の存在がなくなってしまったことにより、現在、帰還の方法がございません。


『アンシャネス』は、いわゆる剣と魔法の世界となっており、危険な魔物なども跋扈しております。


つきましては、現在地点から半径500メートルの神域結界、また再構築の際、西村様に生きていけるだけの肉体、スキルを付与させていただきました。


『アンシャネス』での行動は特に使命などはなく自由にしていただいて構いません。


大変心苦しいのですが、弊社からのお詫びとさせていただきます。



幸多い異世界生活を願って ゴッツクラフト

                 神 





……え?


こうして俺は訳もわからず異世界『アンシャネス』の森の中に投げ出されサバイバルをする羽目になったのだった。


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