古代ギリシャの線文字A(5.方角の漢字など)
方角を表す漢字に関しては、何故、特定の方角を表すのか、説得的な説明に乏しいかと思われる。ついては、字源を線文字Aに求めれば、次の通り。
1. 北
(1)北極星の略号 [ ]の左右逆転
(ア)線文字Aの中からKI-TAと読む記号を探せば記号(A544)が該当し、TA(*59)-KI(*67)と書いた上、右上に小さく [ ] と記してある。この記号 [ ] は、大熊座の柄杓(北斗七星、Big Dipper)と小熊座の柄杓(Little Dipper) について、水汲む部分が向き合う姿と考えられる。
[ ] で囲まれる空域を星座表で確認すると、竜座のκ星に行き着くが、これが当時の北極星だった。北極星は歳差運動のため紀元前1793 ~ 同1000年には竜座のκ星にあった。歳差運動とは、地球が太陽の周りを公転する間に地軸が勢いを失ったコマの様に揺らぎ、2万6千年の周期で回転する運動である。これに従い地軸を北方に延長した先に求められる北極星もずれていく。
従って記号(A544)は、[ ] が「北極星」乃至「北」を示す略号である事を示していよう。
(イ)白川静説では、中国の北方に脅威の民族がいたので、折り合いが良くない事を示す漢字「北」が生まれた由。ミノア人がNorth の記号として [ ] を使っていたので、中国で、同様の発想から、左右を逆にした記号を作り、「北」にした可能性があろう。
(注1)漢字「死」は「北」の上に、地面を表す横棒を引いた記号かも知れない。その場合、遺体の頭を北に向けて埋葬した事、また左側の「タ」は、身体を西に向けた事を示す可能性があろう。
(注2)北極星は、日本語文明では「北辰」、「子の星」。「北辰」は、末尾に古代の北極星、κ星のある竜座の由来だろう。北極星は、中国で「天帝」、「太一」と呼ばれ、北斗七星は「北斗」で「天帝の乗車」とされていた。
(2)北のタコ
インダス文明では、巨大なタコが宇宙を包み込み、北極星を中心に毎日、8本の足で天空を回転させている旨の神話があった模様。この「北のタコ」の神話が中国に伝わり、漢字に影響を及ぼしたとすれば、漢字「北」は、先ずタコの足を象徴する「八」を書き、その左右にタコの目を書き加える事により誕生した、と考えられる。
2. 南
〇 甲骨文の「南」は、船の舳先に人が立ち、両手を挙げる姿か。
〇 金文から、今日の「南」に至る漢字は、指南するコンパスの針に由来しよう。
3. 東
上から順に、SI(*41)- KA(*77)- TI(*37)と書く。その際、SIの縦棒を、KAの円内の縦棒と一致させた上、全てを貫く様にする。すると上から「山」、輪郭の丸い「田」、そして上向きの矢印が垂直に並び、山の下から太陽が昇る構図となり、まさに「東」を表す。
4. 西
(1)甲骨文の「西」は、舌の様に見える記号で、真ん中に縦線が引かれ、更に横線が3本引かれて8つの部分に分かれる。舌の中国語の発音を、シァとすれば、西の発音、シャと近いので、舌の形状が、中国語の発音を表す。
更に「舌」と区別し、「西」の意味を付与するため、この記号を8つに分割し、日本語で「に、し」と発音したのだろう。
(2)現代に通じる漢字の「西」は、次の通り。
(ア)NI(*30)と書き、SI(*41)を書き加える。SIの縦棒は、NIの横棒の左右の×印の間から書き下ろすが、NIの縦棒と一致しないよう、少しずらして垂直に下ろす。またSIの(ホッチキスの針の様な)横棒がNIの縦棒を垂直に貫き、抱える様に書く。更にSIのホッチキスの針先を横棒で結べば(亜にも似た)「西」の原型が登場する。地平線に太陽の沈む図柄である。
(イ)NI-SIを「二つのSI」と解釈し、SI(*41)を二つ書く。その際、先ずSIを順方向に書き、これを180度回転させた上、二番目のSIには、縦棒を少しずらし、真ん中に箱が出来る様に巧く重ね合わせて書く。すると漢字「亜」から上下両端の横棒を省いた図柄が登場する。次に最上部に横棒を渡し、また2本の縦棒の下に突き出た部分を消せば「西」である。
5. その他
(1)王
「王」の字源は、線文字AのNE(*24)で、北極星(子の星)と解釈される。
(2)手
「手」の字源は、線文字AのTE(*04)。この記号は、縦棒から左右対称に、上中下と、3連の「小枝」が伸びる形で、先端の「指」は、7本。この「小枝」を2連にすれば、「指」が人の手と同じ5本になった筈だが、その場合 PA(*03)と混同する可能性があり、敢えて3連にしたのだろう。
(3)人
横縞のスカートの人物が、小さな三角を背負う姿(*100/102)の記号があり、人の姿と解釈される。オリオン座と冬の大三角形を合わせたデザインで、元々、荷物を背負う労働者あるいは赤子を背負う女性と見られる。
この人物像を「にんべん」と解釈すれば、記号(A567)は右側が北極星で「個」、(A568)は右側が鏡で「我」、(A569)は右側が本で「体」の漢字に発展したと考えられる。
(4)示
DI(*07) の字源はジグラット(メソポタミアの神殿)であり、これを様式化したのが「示」であり「示す」辺だろう。
(5)界
線文字Aの(A526)は、上にKA(*77)、すぐ下にE(*38)と書くので、KA-Eと読めるが、形が「界」に酷似するので、その字源と見られる。因みにKAの字源を鏡、Eの字源をエジプトのピラミッドとすれば、この記号は「エジプトの上の鏡」を指し、エジプトとその北の海域(地中海東部)を表すのだろう。