再会
気がつくと俺は真っ白な果ての見えない広大な空間にいた。
浮いているようなそうでもないような感覚だ。
なぜそんな曖昧な表現をしたのかというとそもそも地面がないんだよ。
下を見ても真っ白。
底が見えるという訳でもない。
確か俺は宿のベッドで寝ていたはずだ。
ということはこれは夢か。
なんか前にも似たような感覚を体験したことがあるような気がするな。
いつだったかな。
しばらくすると後ろから声を掛けられた。
「やぁ、久しぶりだね。元気?」
振り返ってその人物を見た瞬間この感覚を前に体験したのがいつだったか思い出した。
そう、この世界にくる前に神に連れていかれたあの草原だ。
この世界にきて俺が最初に目覚めた草原とはまた違うあの草原だ。
あの不思議な雰囲気の漂っていたあの草原と、この空間は似ている気がする。
後ろを振り返りそこにいたのはあの時の神だった。
「元気?じゃないですよっ。
あんな呪いつけられたら貯金もなかなか貯まらないじゃないですかっ!」
丁度いい。
あの厄介な呪いをつけてくれたこの神には一度文句を言いたかったんだ。
「まぁまぁ、そんなに怒らないでよ。
怖くてお姉さん泣いちゃうよ。
スマイルスマイル。」
いやいや、まったく怖い何て思ってないだろ。
目が笑ってるじゃないか。
てかあの時と性格変わり過ぎじゃないか?
「だってさー、確かに好きな能力をあげるとは言ったけどあんなに多く要求されるとは思ってなかったんだもん。
私だってね好きであんな呪いをつけた訳じゃないんだよ?」
「確かあの時は与える能力が多いから呪いをつけるって言ってましたね。
呪いは本当に必要だったんですか?」
「うん。
呪いは必要だったんだよ。
世界のバランスってやつがあるからね。
プラスの能力のみをつけてあげるわけるにもいかなかったのさ。
プラスの能力ばっかたくさん与えてあの世界に送ってしまったら、世界のバランスが歪んでしまうからね。
そこでマイナスの能力を加えることによってうまく均衡を保つことにしたのさ」
世界のバランスに関しては俺にはよくわからないが、もし俺が多くの能力を要求しなければ呪いは受けずに済んだのだろうか。
「そうだね。
例えば君が不死身になる能力だけでいいとあの時要求していれば呪いはつけなかったかな」
あれっ?
今俺って声に出してたっけ?
「いや君は声には出していなかったよ。
私が心を読んだだけさ」
そんなことができるのか……?
神だしそれくらいできても不思議じゃないか。
てことは、さっきから俺の心のなか丸聞こえだったのか。
「どこでもというわけじゃないんだ。
ここが私の空間だからそんな芸当ができるのさ」
ということは俺も空間魔法で作った空間の中でなら人の心を読めるのか?
「残念ながらそれはできないね。
これは神の特権とでもいったところかな」
そうなのか、よくわからないな。
俺をわざわざこんな空間に呼んだってことは何か用でもあるのか?
そういえば、俺をこの世界に転移させた理由とかは一切聞いてなかったな。
「うん、そうだね。
まだ君にはこの世界にきてもらった理由を伝えてなかったね。
もちろんこの空間に君を呼んだのはそれもあるんだ。
それとは別に一つアドバイスをしにきたってのもあるけどね。
どっちを先に聞きたい?」
アドバイスの方で。
まずは軽い話しから聞きたい。
「じゃあアドバイスの方から言うね。
ちょっと君にはショッキングかもしれないけど、私のつけた呪い【マネーロスト】を解く方法はその世界には存在しない。
もちろん効果を誤魔化す方法も抜け道もないよ。
だから君の考えている奴隷に金を預けるという方法もまったく意味がないんだ。
だからその為だけに奴隷を買おうとしているなら止めることをおすすめするよ。
というアドバイスさ」
そうなのか……。
まぁいいさ、俺が奴隷を買おうと思っているのは呪いの為だけじゃないしな。
ずっとこの世界で独りというのは寂しいからな。
隣にいてくれる存在が欲しいってのと一緒に戦える仲間が欲しいって思いの方がむしろ本命だ。
呪いの効果を誤魔化す為ってのはついでぐらいにしか思ってなかったしな。
ダメ元で試してみるかとかそんな感じだ。
きついのは、この世界にはこの呪いを解く方法は無いということの方だな。
神につけられた呪いなんだし解くのはかなり難しいとは思っていた。
しかし、心のどこかで解くのは難しくともいつかは呪いを解く方法を見つけられると信じていた。
そんな希望も神から直接この世界に呪いを解く方法はないと言われ消え去った。
「あのー、落ち込んどるとこ悪いんだけど君をこの世界に呼んだ理由について話してもいいかな」
いつまでも落ち込んでいても仕方ないな。
話してくれ。