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【管理者】





龍神。


龍人の国のトップであり、王。


順位はあまりには意味がないと言われている世界序列において唯一、龍神だけは絶対に一位だと言われている。


昔、剣聖と戦い勝ったという話もあるくらいだ。


世界一の危険人物とも言われている。


龍人の国に何か危害を加えた国は全て単身で滅ぼしに行く。


そして、危害を加えていなくとも龍人の国に危害を加える可能性のある国も全て滅ぼしたそうだ。


そんな災害級の危険人物である龍神。


その本人がなぜか今、俺の前にいる。


そして、俺を殺すと言っている。


「理由を聞かせてくれないか?」


「いいだろう、冥土の土産に聞かせてやる。」


冥土の土産に聞かせてやるってホントに言う人いたんだな。


「我は【管理者】という固有スキルを持っている。

【管理者】というスキルは、自らの守る者に危害を及ぼす可能性のある者が現れた際、我に知らせてくれるというスキルだ。

我の守る者、というのは龍人の国だ。

龍人は強い。

よって、龍人の国に危害を加えるというのはまず無理だ。

しかし、極稀にだが圧倒的な力を持った者が危害を加えてくることがある。

それが貴様だ。

だから、貴様が我が国に危害を加えられる程、成長する前に殺す。」


別にそんなことするつもりないんだけどな。


「龍人の国に危害を及ぼすつもりはまったくないから、俺を殺そうとするの止めてくれない?」


無理そうだけどね。


一応いってみる。


「だめだ。

前に同じことを言った奴がいた。

我はそいつを見逃した。

そいつはその後、順調に成長し圧倒的な強者となった。

数年後、とある国が戦争を仕掛けてきた。

我が、国にいない時を狙って。

普通の軍であれば我が国の兵が負けることはない。

それどころか、一人も死者を出さず完勝するだろう。

しかし、この時は違った。

我が見逃した奴がその軍にいたのだ。

屈強なる龍人の兵をそいつはいとも容易く虐殺した。

結果、我は多くの国民を失った。

【管理者】に引っ掛かった者を見逃したせいでだ。

だから、貴様にはここで死んでもらう。」


なるほど、まぁわからなくもない。


かといって龍神と戦うなんて絶対に嫌だ。


俺は絶対に死なないけど、痛みを感じないわけじゃない。


ボッコボコにされるのは嫌だ。


なんとか逃げたい。


今はまだ、龍神に勝てるほど強くはないからな。


「しかし、不思議だな。」


なんのことだろうか。


「我の【管理者】に引っ掛かったというのに、あまり強そうには見えない。

その割りには、いつでも我を殺せるという顔をしている。

まったく、不思議なやつだ。」


まぁ、殺すってだけならできる。


魔眼を使えば一発だ。


でもこの人は国のトップだし、殺すと色々と問題がある。


だから、魔眼は使えない。


かといって勝てそうな相手ではない。


もし、戦ったら俺は死なないが、フクシアは間違いなく死ぬだろう。


「俺と一対一で戦わないか?

それと、フクシアは見逃して欲しい。

お前の狙いは俺なんだろ?」


だから、本来はしたくなかった選択をした。


フクシアを死なせるわけにはいかないから。


痛いのは嫌だけど、龍神と戦うと決めた。


「いいだろう、そこの小娘は見逃してやる。

まぁ、貴様が死ぬのは確定しているがな。」


これは、負けるとわかっている勝負だ。


だが、やるからには本気でやるとしよう。


勇者との戦いでは出さなかった本気をだして。


密かに練習していた新技を使うのもいいかもしれないな。


「フクシア、宿に戻っていてくれ。」


「……やだ、私も戦う。」


そう言うフクシアは少し震えている。


明らかに無理をして言っているのがわかる。


「大丈夫、俺は死なないから。

絶対に、フクシアのところに帰るから。」


まぁ、死ぬほど痛い思いをすることにはなるんだろうけれども。


「……絶対、だよ。」


心配そうに俯くフクシアの頭を軽く撫でる。


「約束する。

絶対にフクシアのところに帰るよ。

だから、少しだけ待っててくれないか。」


「……わかった、早く、戻ってきてね。」


そう言ってフクシアはこの場を去った。


「別れの挨拶はすんだか?」


別れの挨拶? そんなんじゃない。


「断言しよう。お前は俺を殺すことはできない。

勝つのは、俺だ。」


精一杯の虚勢を張ってそういった。


勝てるなんて微塵も思っていない。


ただ、負けないように頑張るだけだ。


ねばってねばって、ねばり続けて龍神に俺を殺すのを諦めさせるしかない。


「ふむ、なかなか言うじゃないか。

弱者が。」


だけどね、どうせやるなら勝ちたいじゃないか。


「ちょっと強いだけのトカゲが俺を殺すことなんてできないさ。」


トカゲというワードにぴくり、と龍神が反応した。


「トカゲ、か。

昔、まだ死神が生きていた頃、同じこと言われたな。

貴様を殺す理由が一つ増えたぞ。」


へぇ、死神ね。


俺は深紅の大鎌をアイテムボックスから取り出す。


そして、傘のように肩に大鎌の柄を掛け、こう言う。


「その死神ってのは、こんな大鎌を持ったやつかい?」


「貴様っ、どこでそれをっ!」


大鎌を見て、目を見開く龍神


「ある人に貰ったのさ。」


嘘だ。


人じゃなく神に貰ったのだからね。


「そんなことはできないはずだ。

その大鎌はあの女の、あの死神だけの物だ。

他者に譲渡するなどできるような物ではない。

あの大鎌はそういう物だったはずだ。

あの大鎌は人の作った武器ではないのだからな。」


「なんのことかは知らないが、貰ったのは事実だ。」


「それはないな。

もし、そんなことができるとすれば、それは神くらいのものだろう。」


そうだね。


それが正解だ。


「さて、そろそろ始めるとしようか。」


そろそろ、フクシアも充分遠くに離れただろうしね。


「やっと、殺される決心がついたか。」


「それはないね、俺を殺すことなんてできやしないんだから。」


「ふっ、我に対してそこまで言える者はそんなにいないぞ。

興がのった、貴様にハンデを与えてやろう。

一分間、好きなだけ我から離れるがいい。

その間、我は動かん。

一分後、戦いを開始するとしよう。」


「いいのか? そんなハンデを与えて。

遠くから攻撃しほうだいになるぞ。」


「貴様程度の攻撃を一分間けらい続けたところで、傷つく程我は弱くない。」


「そうか、一応礼を言う。」


俺が、勝てる可能性ができたのだから。


「殺す前に名を聞いといてやる。」


「ブラッドだ。

死神、ブラッドだ。」


「死神を名乗るのか。

あの大鎌といい、不思議なやつだ。

我はカラミティ・ロマノフ。

龍神、カラミティ・ロマノフだ。

死神ブラッド、一分間のハンデ有意義に使うがいい。」


「あぁ、そうさせてもらうとするさ!」


こうして龍神と死神の戦いが始まった。


化物と化物同士の戦いが。




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