穏便に終わらせようと思っていた時期が俺にもありました
「魔王討伐に行くのを止めてくれないか?」
さて、これでさくっと魔王討伐に行くのを止めてくれたら楽なんだけどな。
そういうわけにもいかないだろう。
ハーレム勇者君は自分の聞き間違いではないとわかり、ますます意味がわかないといった表情だ。
「理由を教えてもらえますか?」
まぁ、そうなるよね。
俺としては、言いたくない。
だってさ、理由言ったら絶対怒るでしょ。
「言いにくいんだけどね、君達はまだまだ弱いからだよ。
魔王討伐に行っても無駄死にするから、今は止めてほしい。」
それを聞いてハーレム勇者君が表情を歪ませる。
お怒りのようだ。
まぁ、そうだよね。
うん、わかるよ。
俺でも多分怒ると思うしね。
でも、弱いのは事実だ。
「弱い? 本気で言ってるんですか?
俺達は"勇者"ですよ?」
勇者の部分を強調してそう言うハーレム勇者君。
でもさ、勇者がイコールで強いってことでもないらしいんだよね。
「勇者だろうと関係ないよ。
君達はまだ弱い。
今は魔王討伐は止めてほしい。」
「俺達は勇者です!
強いんです!
誰にも負けたりなんてしません!
あなたは、何を根拠にそんなことを言ってるんですか?
弱い一般人が何を言ってるんですか?」
はぁ、ハーレム勇者君がキレちゃったよ。
何を根拠にかって言われたら、神から聞いたんだけどね。
それを言ってもどうせ信じないし。
あと、君よりは強いと思うよ?
「そうよ! 弱い一般人がなに言ってるのよ!
隼人は勇者で強いんだから!
あなたみたいな一般人はね、私たちが魔王を討伐してくるのを待ってればいいのよ!」
「そうだよぉー。
ゴミが隼人になに言ってるのぉー。」
女の勇者達も少しキレ気味だ。
口々に俺にたいして文句を言う。
はぁ、もう諦めちゃってもいいかな。
貰った指輪は返すからさ。
返しかたわからないけど。
「……ブラットは弱くない。」
ずっと黙っていたフクシアが口を開いた。
弱いとかゴミとかバカにされて少し、フクシアもお怒りのようだ。
「へぇ、そうなんですか。
それでも一般人にしては、でしょう。
俺達はあなた達の止められたぐらいで、魔王討伐に行くのを止めたりしませんよ。
弱い一般人のあなた達はただ待っているだけでいいのです。」
最初に弱いって言ったのは俺だけどさ。
そんなに弱い弱いって何度も言うなよ。
だって。
フクシアがキレちゃうだろ?
「……ブラットは弱くない……ブラットはあなたより強い!」
あぁ、ほらフクシアもキレちゃったよ。
あーあ。
どうしよ。
「ほう、"勇者"である俺達よりも強いと。
なかなか舐めたことを言ってくれるじゃないですか。
魔王討伐、止めてあげてもいいですよ。
俺達と戦ってあなた達が勝ったらね!」
「いいのか?」
「なんですか?
怖じ気づいたんですか?
別にいいですよ、やらなくても。
俺達は魔王討伐に行きますから。」
違う。
怖じ気づいたんじゃない。
なんて好条件なんだと喜んでいるだけだ。
でかした、フクシア。
思わず、ニヤっと笑みを浮かべてしまうのをなんとか抑える。
「いいだろう。
その勝負受けてたとうじゃないか。
俺が勝ったら、魔王討伐に行くのを止めろよ。」
「いいでしょう。
俺達が負けたら、魔王討伐に行くのを止めると約束しましょう。
そちらはあなた達二人でいいんですか?
こっちは四人で戦うんで仲間をよんでもいいですよ?」
残念、仲間なんてフクシア以外にはいないのさ。
だが、二人で戦うつもりもない。
「大丈夫だ、お前達ぐらい俺一人で充分だからな。」
「つまり、俺達勇者四人を一人で相手するということでいいんですね。」
「あぁ、それでいい。」
こうして俺と勇者は戦うことになった。
予定とは違うがまぁ、いいだろう。




