バカばっか
白の世界。
そう表現しても間違いではないだろうというくらい、真っ白な空間。
俺は気づくとそこにいた。
以前、似たような空間にきたことがある。
似たような、というより同じ空間だろう。
ということは、ここは前回と同じく夢の中なのだろう。
あの時は確か、後ろから神が声を掛けてきたな。
そして俺は、それにみっともないほど驚いた記憶がある。
しかし、今回は二回目。
経験があるのとないのでは、かなり違う。
今回はどんな風に出てきても、絶対に驚ろかないぞ!
そう、心の準備をしながら神が出てくるのを待つ。
この空間にきてから、もう十分程たっただろうか。
神はまだ出てこない。
もしかして忘れてるとかないよね。
そんなことを考えていると、俺の立っている場所が光だした。
俺は突然の出来事に慌てて、一歩下がる。
すると、少ししてふさふさしたものが出てきた。
頭だ。
徐々に見覚えのある顔が出てきた。
俺をあの世界に呼んだ神だ。
そして数分程かけて、やっと全身が出てきた。
くっ、今回は驚かないと決めてたのに少し驚ろいちまったぜ。
「もっと他にもやり方あっただろっ!」
この神はなぜ普通に出て来ないんだろう。
そんなに俺を驚かせたいんだろうか。
「えへへ、今回はエレベーター風にしてみた。
どう、驚いた?」
えへへ、じゃねえよ。
てか、相変わらずキャラがぶれぶれだな。
そんなんでいいのか、神さんよ。
「いいんだよーっだ。」
なんか、この前会ったときより軽くなってる?
「そうかもねー。
なんか最近疲れちゃってさー。」
神でも疲れることなんてあるんだな。
「それにしても今夜は随分とお楽しみだったねぇー。」
覗いてたのかよ!
めっちゃ恥ずかしいな。
「いやー、なかなか激しかったねー。
見てて私もちょっと興奮しちゃったよー。」
神も興奮したりするんだな。
なんだったら一発ぶちこんでやろうか?
俺のビックな聖剣を。
「べつにブラットだったらされてもいいよー。」
そう言って、その大きな胸を腕で寄せて誘惑してくる。
冗談でいったんだけどな。
一瞬、その大きな膨らみに釘付けになるがすぐに視線を逸らす。
ダメだ、負けるな俺。
俺にはフクシアがいるんだから、こんな誘惑に負けてはいけない。
「そっかー、残念。」
こてんと、首を傾げ上目使いでそう言う神。
あざとい。
しかし、俺はなんとか耐える。
そうそう、今度あったら聞きたいことがあったんだ。
あのブラットの加護ってなんだ?
「あー、あれね。
あれはねー私からのサービスだよ、サービス。」
サービス?
「ブラットってさー不老で不死身じゃん。
でも普通の人間って寿命でいつかは死んでくじゃん。
てことはさ、百年もすればブラットの知りあいは全員死んで居なくなるでしょ。
一人ぼっちで生きてくのは可哀想かなーって思ってね。
ブラットに一定以上の好意をもつ者には、不老のスキルを与える加護をつけてあげることにしたんだよー。」
そうだったのか。
以外と優しいんだな。
「でしょー、私って優しいでしょー。
もっと感謝してくれちゃってもいいんだよー。」
その一言がなければ、完璧だったんだけどな。
で、俺をここに呼んだってことはなんか用があったんだろ?
「あぁそうそう。
最近、ちょっと面倒なことが起きちゃってねー。」
神は少し真剣な表情になって言う。
「フラストル王国が勇者を召喚しちゃったんだよ。」
そりゃまたなんで勇者なんか召喚したんだよ。
「この前、人族に味方してた死神が死んだっていったじゃん。
それであのバカな国はね、臆病だからまだ攻めてくる気配もない魔王を恐れたんだよ。
死神が死んだ今、魔王が滅ぼしに来るかもしれないってね。
そして、勇者を召喚したんだ。」
魔王は後、数百年は人族を滅ぼしにこないんじゃないのか?
「うん、そうなんだよ。
でもフラストル王国はそれをわかってない。
そして、問題はそれだけじゃないんだ。」
まだなんかあるのかよ。
「王国もバカだか勇者もバカだったんだよ。
召喚された勇者は四人、そして巻き込まれて召喚された者が一人。
まぁ、その巻き込まれた者はおいといて。
召喚された勇者は皆バカだった。
大して強くもなってないのに、魔王討伐に出発しちゃったんだよ。」
バカだな。
バカ過ぎる。
「召喚された勇者はね、一人が男で他の三人は女なんだよ。
そしてその女は全員、一緒に召喚された男の彼女なんだよ。
ハーレムってやつだね。
召喚された勇者達は魔物を少し倒したぐらいで、自分達は物凄く強くなったと勘違いした。
そして、女達はもう魔王も倒せると思いこんだのさ。」
それで、魔王討伐に出発しちゃったのか。
「男のほうは、最初は魔王討伐はまだ早いんじゃないかって言ってたんだけどね。
結局、女達に乗せられて出発しちゃったんだよ。
ホント、バカばっかりで嫌になるね。」
王国は止めなかったのか?
「いや、王国も魔王討伐に出発するのはまだ早いって止めてはいたよ。
でも結局、勇者達を止めることはできなかった。
数千年前の勇者は一人で魔王を倒したんだから、今回は勇者が四人もいるんだし余裕だっていう彼らの言葉に負けてしまったんだよ。」
勇者が四人もいても勝てなさそうなのか?
「無理だね。
今の彼らが魔王と戦ったとしたら瞬殺だね。」
数千年前の勇者は一人で魔王に勝ったのにか?
「それは事実だ。
しかし、彼らは少し勘違いをしている。
数千年前の勇者は召喚されてからたった一ヶ月で、魔王討伐に出発するなんてバカな事はしなかった。
数年間、修業を続け戦いの日々を重ねてから出発したんだよ。
レベルはもう少しで四桁に届くといった所まで強くなってから出発したんだ。」
レベル四桁か。
とてつもない強さだな。
四桁とか想像もつかない。
それで今回の勇者はどれくらいの強さなんだ?
「平均でレベル60って感じだね。
正直言って弱すぎる。
魔王どころかブラットでも瞬殺できるよ。」
弱っ。
よくそんなんで、魔王を倒せるとか思ったな。
アホすぎる。
「今、魔王に挑んでも無駄死にするだけなんだよ。
それどころか、無駄に魔王を刺激してしまう。
そして、勇者が魔王を倒してくれると信じきってる人族は、あっけなく魔王軍に滅ぼされるだろうね。
勇者が負けるなんて、ちっとも想定してないんだから。」
そりゃそうだろうな。
それで、俺に何をして欲しいんだ?
「勇者達を止めて欲しい。
勇者達は迷宮都市を経由して魔王城へといこうとしている。
そろそろ迷宮都市につく頃だと思うよ。」
やだよ。
面倒臭い。
「止めてくれるというなら、なにかあげるよ。」
呪いでも解いてくれるのか?
「それはまだできない。
でも、ある程度のことなら聞いてあげるよ。
なにか欲しい物とかないかい?」
欲しいものねぇ。
特にないかな。
あっ、一つあった。
魔法の威力を押さえられるアイテムとかあったら欲しいな。
「そんなのでいいの?
威力をあげるアイテムじゃなくて抑えるアイテム?」
いやこれ以上の威力上げてどうすんだよ。
「じゃあ枕元に魔法の威力を抑える指輪を置いとくね。
勇者のこと頼んだよ。」
そう言って神は消えていった。
あれ? 迷宮都市にくるってのは聞いたけど、迷宮都市のどこにくるとかは聞いてないぞ……。




