漂う腐臭
「臭っ。」
11層に足を踏み入れると、10層までは感じることのなかった異臭が漂っていた。
なにかが腐敗したような臭い。
「……臭すぎ。」
「これは酷いな。
さっさと次の階層に行こう。」
鼻が曲がりそうな臭いを我慢しながら進んでいく。
すると、どろどろになったゾンビが現れた。
こいつがこの臭いの原因か。
倒さないといけないんだけど近寄りたくない。
臭いし。
フクシアも近づくのをためらっている。
「……ブラット、倒して。」
「仕方ないなぁ。」
剣で斬りつけたら剣がベトベトになりそうなので、魔法で倒すとするか。
多分魔石も消滅するだろうけど。
いや、だってあの臭いが剣につくなんて嫌じゃん。
臭う剣と一緒にダンジョンを進むなんて絶対にやだ。
魔石はもったいけど魔法でサクッと倒そう。
「ライトボール!」
腐臭を撒き散らすゾンビに光の球が放たれる。
轟音とともに輝く爆発が巻き起こり、ゾンビは消滅した。
「……ゾンビが出たらまたお願い。」
フクシアはゾンビと戦う気はないようだ。
よっぽど嫌なのだろう。
俺も嫌だ。
俺達はこの酷い腐臭の漂う階層から一刻も早く、出ようとガンガン進んだ。
その結果、二時間程で20層へとたどり着くことができた。
なぜそんな早く進めたかというと、この20層までゾンビしかでなかったからだ。
ゾンビに近寄りたくないというフクシアは、遠距離攻撃の手段がないため戦闘に参加することはなかった。
なので、20層まで出てきたゾンビは全て俺が倒した。
もちろん俺もゾンビには近寄りたくないので全て魔法で。
そのせいで魔石は1つもとることはできなかった。
あのゾンビに近寄よって戦うよりは、ましだったと考えるようにしよう。
オークぐらいの強さの魔物なら手加減した魔法で倒して魔石をとることができるんだけど、ゾンビぐらいのレベルになると手加減した魔法では倒せず、どうしてもオーバキルになってしまう。
MPが無限にあるってのも、良いことばっかりじゃないってことだ。
まぁ無限にMPがあるおかげで、20層までガンガン魔法を使い続けることができたんだけどね。
さて、20層ということでスケルトンナイトのようにやはりフロアボスがいるらしい。
マップによると今度は首なしの鎧、デュラハンとスケルトンナイトが3体いるそうだ。
デュラハンは、スケルトンナイトよりも遥かに強いらしい。
「そろそろフロアボスのとこに着く。
俺が魔法で倒すか、俺とフクシアで剣で戦うかどっちにする?」
「……ブラットはどうしたい?」
「俺は、今回は剣で戦いたい。
魔法だと魔石まで消滅しちゃうからな。
でも次のフロアボスはデュラハンとスケルトンナイト3体だ。
フクシアが安全に倒せるかわからない。」
「……私がスケルトンナイト3体、ブラットがデュラハンでどう?」
「フクシアは、スケルトンナイト3体と同時に戦っても勝てそうか?」
「……10層で戦ってみた感じだと、5体までなら同時に戦っても勝てそう。」
まじか。
それなら大丈夫そうだな。
「わかった、それでいこう。
スケルトンナイトは任せた。」
「……任された。」
話してるうちにデュラハンのいる場所についた。
スケルトンナイトとは格が違うのが、見ただけで伝わってくる。
威圧感がパナイ。
デュラハンってどうやって倒せばいいんだろ?
首ないし。
スケルトンみたいにバラバラにすればいいのかな。
みた感じ、デュラハンはとても頑丈そうだ。
深紅の大鎌で戦った方がいいかもしれないな。
黒鉄の剣だとフクシアがゴーレム斬った時みたいに、折れちゃうかもしれないし。
そう思い俺は黒鉄の剣をアイテムボックスにしまい、変わりに深紅の大鎌を取り出した。
「フクシア、準備はいいか?」
「……大丈夫。」
「じゃあ始めようか。
リジェネレーション!!」
いつものようにフクシアに継続回復の魔法を掛けた後、大鎌を右手に持ちデュラハンと距離を詰める。
近くでみるとやはり威圧感が凄い。
めっちゃ強そうだ。
でも、最後に勝つのは俺だ。




