臨時パーティー
目の前で倒れている女性は起きる気配がまったくない。
よく見るとかなり若い。
歳はフクシアとあまり変わらないんじゃないんだろうか?
近くに仲間らしき人物はいなかったので、多分ソロで潜っていたのだろう。
装備は安そうな革鎧と鉄の剣で、あまり強く無さそうだ。
まぁ、Eランクダンジョンなんかで倒れているのだから強い訳もないか。
とりあえず、体をゆさぶってみる。
しばらくすると体がピクリと動いた。
やっと起きたようだ。
「あれ?私はゴブリンに襲われて倒れたはずじゃ?」
やっぱ、あのゴブリンに負けて倒れていたのか。
弱々だな。
なんでそんな弱いのにソロで、ダンジョンに潜っていたのだろうか。
「あなたを襲っていたゴブリンなら倒しておきましたよ。」
「そうだったんですかっ。
助けて頂きありがとうございます!」
頭が地面につきそうな勢いで頭を下げてきた。
「仲間とかはいないんですか?」
俺がそう言うと金髪の女性は少しくらい表情になった。
「パーティを組んでくれる人なかなかがいなくて。
1度組んでくれた人も私が弱いのを知ると、それ以降組んでくれなくなってしまいまして。
でも、私には戦うことぐらいしかとりえがないので、仕方なくダンジョンに潜ってました。」
だからソロだったのか。
まぁ、女性としてはとても魅力的だが一緒にパーティを組みたいかといえば弱そうだし、組みたいと思うやつはいなかったのだろう。
「Eランクのダンジョンで倒れるくらい弱いのに、なんで冒険者になったんですか?」
「私は村の中では腕の立つほうでした。
迷宮都市にいけばダンジョンで稼げると聞いて私なら余裕じゃないかと思って迷宮都市で冒険者になりました。
しかし、ダンジョンで稼ぐのは私の思っていたより厳しく、でも今さら村に帰ることもできずソロで潜っていたのです。」
村の中で、腕が立つってくらいじゃきついだろうな。
特にフロアボスのゴーレムなんかは絶対に倒せないだろう。
「あの、もしよかったらダンジョンを出るまでついていってもいいですか?」
少し可哀想になってきたな。
できれば連れていってあげたい。
「フクシアこの人連れていってもいいか?」
「……ブラットがいいならいい。」
「外までならいいですよ。」
「ありがとうございます!
この恩はいつか絶対返しますねっ!」
「俺はブラットです。
こっちはフクシア、ダンジョンを出るまでですがよろしく。」
「……よろしく。」
「フェリエです!
よろしくお願いします!!
後、敬語とかは使わなくていいですよっ。」
こうして、ダンジョンを出るまでではあるがフェリエが俺達のパーティに加わった。
少し進むとコボルトと遭遇した。
「フェリエ、まずは一人で戦ってみてくれるか?」
「了解ですっ!」
さて、フェリエはどれくらい強いのだろうか。
フェリエはコボルトにかなり大振りな動きで斬りかかった。
コボルトはそれを避け鋭い爪でフェリエの頭を狙って拳を振るう。
なんとか、右手の盾でそれを防ぐがコボルトに斬撃を当てることができていない。
フェリエは10分程攻防を繰り返し、やっとコボルトを倒した。
フクシアだったらコボルトぐらいなら一瞬で終わるんだけどな。
「どうでしたかっ?」
「やっぱ弱いな。」
「……弱い。」
「そんなぁ。
あれでも頑張ったんですよ?」
フェリエは下を向いて落ち込んだ様子でそう言った。
「まぁ、これから強くなるかもしれないんだしそんな落ち込むなって。」
あの戦いを見た感じ、フェリエ一人で戦わせていたらダンジョンを出るまでに死んでしまいそうだ。
あの強さでソロでダンジョンに潜っていて、よく今ままで無事だったな。
それからは、フェリエに一人で戦わせることはせず、三人で戦いながら進んだ。
まぁフェリエの出番は殆んどなかったが。
「ブラットさんとフクシアさんってめっちゃ強かったんですね!
なんでEランクダンジョンなんかにいるんですか?」
「ダンジョンに潜るのは初めてだったんだよ。
次からはCランクダンジョンの死者の魔窟に行こうと思ってる。」
「そうなんですかっ!
よかったら、私も一緒に行かせて貰えませんかっ?」
「それはダメだ。
フェリエはEランクダンジョンで倒れるくらいなんだから、Cランクダンジョンに行ったら死んじゃうだろ?
後、パーティを組むのはこのダンジョンを出るまでだ。」
フェリエは可愛いから是非パーティに入って欲しいのだが実力がなぁ。
残念だ。
「やっぱりパーティは組んで貰えませんか?」
「フェリエが強くなったらパーティを組んでもいいぞ。」
「その時は絶対ですよっ!」
その後は、順調に進んでいき無事にダンジョンを出ることができた。
フェリエとお別れをしてからギルドで魔石を売却した後、宿に帰った。
【マネーロスト】発動。
所持金、金貨14枚銀貨1枚のうち4割の金貨5枚銀貨6枚銅貨4枚をロスト。




