ドラゴンの襲撃
カーン、カーン、カーン、カーン。
鐘の音が鳴り響く。
その音で俺は目覚めた。
俺の上ではいつものようにフクシアが眠っている。
少し嫌な予感がした。
いつもは朝に鐘の音などしないからだ。
耳をすますと、悲鳴のような声が外から聞こえてきた。
俺は上に乗っかっているフクシアをどかし、窓の外を見てみた。
そこには、必死になにかから逃げようする人々がいた。
悲鳴あげながら走る人。
子供を抱えながら走る人。
皆、必死になにかから逃げていた。
人々の逃げる方向の反対をみると、街の外壁のあたりに巨大な生物がいるのが見えた。
ドラゴンだ。
誰かが戦っているようで、今はまだなんとか街には侵入していないようだ。
フクシアをすぐに起こしにかかる。
「おきろ!フクシアっおきろ!」
「……眠い…もう少し寝る。」
まだ少しフクシアは寝ぼけているらしい。
いやいやと身をくねらせながら駄々をこねるフクシアの体を強くゆすり、意識を無理矢理覚醒させる。
「……なにかあったの?。」
フクシアを抱っこして窓の近くにつれていく。
口で説明するより早いと思ったからだ。
そして外のけしきをみせる。
「……ドラゴンっ?!」
フクシアもやっと状況を理解したようだ。
さて、どうしようか。
俺には2つの選択肢がある。
1つは逃げるという選択肢。
この世界のドラゴンというのがどれ程強いのかは知らないが、逃げ惑う人々の様子を見る限りあっさり勝てるような魔物ではないだろう。
フクシアを連れ他の街へと逃げるのもいいかもしれない。
数日後には、この街を出て迷宮都市へと向かおうと思っていたのだし。
2つ目は、あのドラゴンと戦うという選択肢。
この街では色々なことがあった。
兵士のおっさんと仲良くなったり、武器を買いに行ったり、屋台や露天を巡ったり、フクシアと出会ったりと。
それなりに愛着もある。
色々考えたがここで逃げて後で街が滅んだなんてことになったら後味が悪いなと思い、ドラゴンを倒そうと決意した。
「フクシア、ちょっとドラコン倒してくる。」
「……ブラットが強いのは知ってる……でもドラコンには勝てない。」
「大丈夫、勝てるさ。」
最悪、本当に勝てそうになければ魔眼をつかえばいいしな。
「……ドラコンは本当に規格外なんだよ?……ブラットが死ぬのは嫌。」
「大丈夫、俺は死なないから。少しここで待ってて。」
「……ブラットが行くなら私も行く。」
「ドラゴンと戦いながらフクシアを守りきれるかわからないから、できればここで待ってて欲しい。」
多分、俺の不死を活かした戦いになるだろうから一人の方が戦い易いと思う。
「……じゃあ後ろで応援する。」
どうやら意思は固いらしい。
「いつでも逃げられるようにしておくって、約束出来るならついてきてもいいよ。」
「……わかった……約束する。」
お互い服を着た後、いつもの革鎧を装備しドラゴンのいる外壁へと向かう。
右手にはいつもの黒鉄の剣ではなく深紅の大鎌を持って。
外壁につくと多くの武装したおそらく冒険者の人々が倒れていた。
フクシアには後方で待機してもらっている。
多くの冒険者が倒れている中でただ一人立っている人物がいた。
いつも外壁で門番をしている兵士のおっさんだ。
兵士のおっさん強っ。
兵士のおっさんもこちらに気づいたらしく、声をかけてくる。
「おい!あれはお前のかなう相手じゃねえ。早く逃げろ!」
あの兵士のおっさんには外壁の門を通る際、何度もギルドカードを見せている。
なので、俺がEランクということも知っている。
多分ドラゴンはEランクの冒険者にかなう相手ではないといっているのだろう。
しかし、俺は普通のEランク冒険者ではない。
不死身で、絶対に死なないEランク冒険者だ。
その実力は普通のEランク冒険者の比ではない。
おそらくSランク冒険者と戦ったとしても、最後に勝つのは俺だろう。
「俺は死にませんから。」
そう兵士のおっさんに告げ、深紅の大鎌を右手に持ちドラゴンへと斬りかかっていく。




