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仕方が無いかな

 ヘッドホンをしたそいつは新聞紙の上で独り芝居の真っ最中だろう。

 準備だけして風呂に入って来ると伝えておいたんだ。

 だっていくらダチとは言え、野郎の自家発電とか見たいもんじゃないしよ。

 青いビニールシートを敷いて新聞紙を敷いてティッシュの箱を置いてと準備してやったんだけど、すっかりその気になっちまってよ。

 映像スタートと共に、食い入るように見ていたからきっとやっていると思う。


 けど不思議だよな。


 今は男なのに、自分の映像を見て興奮している男を見ると、妙に下半身がうずくんだ。

 いや、つい視ちまったと言うか、透視って言うのかな、見えたからさ。

 さすがにまだ転身して抱かれたいとは思えないけど、それでも妙にうずくんだ。

 だから、もしかすると、こいつに、そのうち……はぁぁ、どうにも性同一性障害になりそうな魔法だよな。

 いかん、風呂の中でもだえている場合じゃない。

 冷水を浴びてその気も消えて一安心。


「はぁぁ……凄かったぜ。近年に無く満足したって言うかよ」

「出所は聞くなよ」

「ああ、ヤバい代物ってのは分かってるさ。けど、意外だったな」

「たまたま入手してな、お前にそのうちやろうかと思っていてな」

「くれるのかよ、こいつを」

「死んでもオレからとか言うなよ」

「オレか、ああ、マジだな、言わねぇさ」


(こいつの第一人称がオレになったって事は、漏らしたら恐らく殺されかねねぇな。つまりそんだけヤバい代物ってこったろ)


「で、その猫はまだ剥がねぇのか」

「うん? 何の事かな」

「はぁぁ、なら良いさ」

「いいかい、僕から出たとか絶対に言わない事、約束だよ」

「ああ、オレも命が惜しいからよ」

「何の事だい? 僕はそんな怖い事はやらないよ」

「中学の時の苛めっ子が重傷になった件、あれ、本当は」

「僕は知らないよ」

「じゃあ高校の時の西原が落石事故に遭った件はどうなんだよ」

「僕は修学旅行には参加してなかったじゃない。なのに出先での事故にどんな関係があるんだい」

「用意周到だよな、お前って」

「そういや、あの山ってさ、紅葉がキレイだったんだってね。僕も見たかったよ」

「紅葉って旅行は春だった……うっく」

「真っ赤な紅葉が地面にジュウタンみたいになっていて、凄くキレイだったそうじゃないかい、クククッ」

「ううう、悪い、もう、何も聞かねぇから、その笑いは止めてくれ。頼むから」

「どうしたんだい、震えているみたいだけど、寒いのかい」

「忘れる、忘れるからよ」

「何の話をしているんだろうね、クククッ」

「たーのーむー、もう、止めてくれぇぇぇ」


 興味と好奇心か。


 殺すのが猫ならまだ良いけど、それが人間になった時にどうなるかだよね。

 確かに殺しはつい先日のあれが初だったけど、中学と高校では殺し切れなかったんだ。

 やっぱり甘かったんだろうけど、特定はされなかったんだよね。

 中学の時は少しヤバかったけど、高校の時は旅行サボって単独で随伴して、ここぞって時に落石で……

 あれで死ぬと思ったんだけど、人間ってなかなかにしぶといもんだよな。

 だから今の破滅魔法はとても気に入ってるんだ。


 なんせ確実に殺せるから。


 ふうっ、困った奴だな。

 オレの猫を剥ごうとしないでくれるかな。

 いかんな、どうにも起きちまったか。

 ずっと眠らせていたってのに。

 まあなぁ、この前の殺しが呼び水になったのかも知れんがな。

 ずっと寝かせておいたってのに、たった2回の殺しで目覚めちまうのか、情けねぇな。


 仕方が無い、こうなれば。


「おい、朝まで酒に付き合え」

「まさか、目覚めちまったのかよ」

「ふん、誰のせいだ、この野郎が」

「分かった、朝まで付き合うからよ」

「おしっ、なら、朝まで宴会だぜ、クククッ」

「付き合うからその笑いだけは止めてくれぇぇ」


 ~☆~★~☆


 ああ、飲み過ぎたかな。

 頭が痛くてクラクラして、吐きそうでううう……


『我、体調不良を癒す事を望むなり、身体回復』


 はああ、気分すっきりだね。

 さすがにあいつにも言えない僕の魔法ってか。

 あいつには悪いけど、この快適さは独り占めさせてもらうよ。


「おーい、朝だぞー」

「うっ、でかい、声を、出すな、ううう」

「見事な二日酔いですな」

「おめぇ、あんなに、飲んで、何で……前は、オレより、弱かった、はずだろ」

「天気快晴、どっか行くかい、くすくす」

「どうなって、くそ、頭が……」

「本日はぁ晴天なりぃぃ」

「やーめーてーくーれー」

「くすくす」


 そういやこいつ、確か高校の修学旅行で体験したとか言ってたよな。

 それからぐらいか、ストライクゾーンが下がったのは。

 だから何かあったのかと思ったが、そろそろ時効じゃないのかい?

 二日酔いのヨッパを脅しながら、少しずつ聞いていく。

 もう時効だろうと何度も言えば、少しずつ当時の話をしてくるこいつ。

 勢い付けで酒を飲んで、行為になりはしたけどまともに覚えておらず、小遣い全て巻き上げられて這う這うの体で追い出されたってか。


「けどそれでロリに走るってのはどうなんだ」

「大人の女はもう懲り懲りだぜ」

「あのモデルなら抱きたいか? 」

「うっく」

「おい、鼻血出てるぞ」


 上を向かせてトントンと首筋を叩いてやるが、まさかそこまで顕著な反応を示すとは思わなかったな。

 これってもう手遅れと言うか、不治の病と言うか……もうまともな交際は無理だろうな。


「後腐れは無いんだけど高いんだよな」

「本気で本気なのか、そいつはよ」

「本番、生の中出し問題無しだ」

「ううう」


 はい、トントンと。

 昨日、あんだけ抜いてこれかよ。


「いくらだ、貯金定期全部下ろす。だからいくらか教えてくれ」

「そこまでしてヤりたいのか、あんなガキと」

「当たり前だろ、オレの理想だぞ」

「3500万だ」

「うえっ、それはいくら何でも……ううう、マンション、売るかな」

「おいおい、お前のマンションってな、ありゃ親のだろ」

「生前分与ってのでオレの物になってはいるんだけどよ、あれを勝手に売ると多分勘当されるだろう。けどよ、あの子とヤれるのなら惜しくねぇぜ」

「あいつ、処女だからな。ちゃんと馴染ませてやらんと痛がるぞ」

「ううう」


 トントントン……は良いけど、どうすっかなぁ。

 確かに興味もありはするが、さすがに男に抱かれるってのはな。

 まあ、相手がこいつならまだましか。

 かれこれ腐れ縁ってぐらいの付き合いだし、知らない男よりはましか。

 どうしても無理なら途中で止めても良いんだし、ここはひとつ試してみるか。


「マンションは売るな」

「けどよ、預金と定期だけじゃ1800万ぐらいにしかならねぇぞ」

「3500万はエンコー代だ。一晩ならもっと安いが、処女だから少し高いだけだ」

「そ、そうなのか。なら、いくらでいい」

「処女喪失で1千万、一晩500万で合わせて1500万だ」

「分かった、金はすぐ作る。んで、何時なんだ」

「明日は休みか」

「明日か……有給取れば何とか」

「いや、連絡すれば今夜いけるぞ」

「で、朝まで良いのか」

「学校に遅れなければな」

「うううう、わ、分かった。今から金作って来るからよ」

「オレはちょっと用があるから、家のカギはあいつに渡しておく。だからオレの事は気にせず、あいつと楽しくやってくれ」

「ああ、分かった」


 さて、これでもう後戻りは出来なくなったな。

 しっかしなぁ、まさか1500万で納得するか? 普通。

 ああ、そういや女物、出しておかないとな。

 通販で買いはしたものの、あんまり種類が無いと言うか……

 あいつは夜に来ると言っていたので、ちょっと買い出しに出る事にする。

 車で行くと足が付くので、ここはやっぱり転移魔法を使うべきだろう。

 隣の隣の隣の県の繁華街近くの路地裏に転移。

 ふうっ、まだまだ魔力が少ないからきついな。

 ふむ、どうせならここいらで少し殺しておこうか。

 それでしっかりとまた寝てくれるだろうし。


 札束を持ってうろうろするだけで、簡単に釣れる雑魚達。

 腎臓爆発で簡単に無力化した後、苦しんで苦しんで死ぬ事になる奴ら。

 10人も殺せば魔力は2000を軽く超え、レベルも30が近くなる。


 名前 野村 洋平

 年齢 30

 性別 男

 階級 29

 耐久 1320/1320

 魔力 2280/2280

 戦闘 15

 防御 25

 霊魂 13


 うん、いい感じだな。


 殺せば魔力の補充にもなるようで、転移の消費分がもう消えている。

 気分も最高だし、後は買物をするだけだ。

 いかに間近で雑魚が倒れたと言っても、内蔵の損傷だからオレに疑いは来ないと、クククッ。


 ああ、いかんな、まだ起きるのか。

 

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