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番外編 リバ試験官登場! 後半 1

ん?後半は一話で終わる?誰が言ったそんな事!……すみません!

「さーて!とうとうやってまいりました中級神の試験!」


 場所は変わらず、気絶した下級神はせっせと転移させられて強制退場。会場にいた中級神は待ちに待ったと表情に表せながら席を立ちあがった。


「では。行ってまいります」

「リバ様約束の物忘れないでくれよ!!」

「私のも忘れないでよね!!」

「はいはーい行ってらっしゃーい」


 中級神が移動したことを確認した上級神三人はリバに挨拶をした後に、リバに手を振られながら転移していった。

 先程から世界は改変され、岩石地帯から草原へと変わり周囲には山あり、川あり、森あり、海があった。下級神の試験は一定範囲内が試験場所に設定してあり、それ以外の場所には行けないようにリバが結界を張っていた。だが中級神の試験はこの世界全体が試験内容であり、今回試験を受ける中級神は三人と数が少ない。

 上級神になるためにはある程度実績が必要で、毎回一桁程度で。たまに二桁、反対にゼロ人といった事も稀にある。しかし、いくら三人と言えど中級神と上級神の試験には一世界が必要なのだ、たまに頭角を現せる化け物のような中級神が、試験官の上級神を世界ごと消し飛ばした事件があった。


「今度は逆に中級神が消し飛ばない事を祈りますかね……」

「流石に彼女もそれは分ってるでしょ?あの後、憧れのクラに説教食らって落ち込んでいたからね」


 そう、その先犯が──今回の試験官の一人でいたあの女性上位神である。リバとメイは昔の事を言いながら、起こらないことを祈っていた。




「では、まずは一回目を開始したいと思います!!受験者の中級神は、最近生意気な先輩上位神で試験官であるアルバート様に一矢報いる為に受けたそうですね……。男同士の妬みもまた………ごちそうさんです!」


 草原に二人が佇んだ。片方は今回の受験者の中級神。もう片方は四角い眼鏡を掛けて、片手には本を持ったまま優雅に佇む上位神であるアルバート。

 中級神はその立ち振る舞いが気に入らないのか、これでもかと顔を歪ませて、まるでリーゼントの不良がガンを飛ばしている表情をしていた。というかリーゼントであった。


「アルバートさんよ!俺はあんたが気に食わねえ!」

「ん?どういうことですか?」


 ぺらぺらと本を捲って試合開始の合図を待っていたアルバートは、声を掛けられてやっと中級神がこちらを睨み付けていることに気が付いて困惑していた。


「ほんっとふざけてやがる!!なーにが『キャーーー!アルバート様ーーー!』だ!!羨ましい!!」


 悔しがりながらリーゼント中級神は地べたを踏んだ。


「しまいには付き合っていた彼女も『私、アルバート様ファンクラブ会員になるから、別れるから』だと!ふっっっっざけんな!!俺は許さねえ!この恨み晴らさでおくべきか!!」

「ふぅん……」


 彼女が奪われたと被害妄想したリーゼントはこの試合を好機に、恨みをぶつける気であった。


「どうやらどうやら、女を巡る男の戦いってやつ!!ほ、ほ、ほわああああ!!燃え上がりますね!!」


 勝手に燃え上がっていろと、観客から聞こえてくるが、都合のいい耳には聞こえません!股をすりすりと擦りながら興奮している彼女の姿はすでに痴女にしか見えない。てか、変態なのであまり変わらないか。


「すみませんが、開始はまだですか?メギナー?」

「ここでアルの冷静な突っ込み!!はい、開始します」

「「「誰だお前!?」」」


 アルバートの一言で突如真面目モードにキリッと雰囲気を変えた彼女は凛々しかった……ほんまに、あんた誰!?皆がそう思った。


「では、リーゼント野郎VSアルの試験の開始の合図をします。試験開始!!」


 パタリと本を閉じると、それを転移させ。違う魔方陣が施された本を手に取った。


「では、試験を開始します。掛かってこい」

「言われなくともわかとるわぁ!」


 リーゼントは走り出し、一直線にアルバートに向かい始めた。数メートル手前で思いっきり何もないところを殴りつけた。ひょいと、首を倒して攻撃をアルバートは避けると、後ろにあった森が轟音と共に半分吹き飛んだ。


「空気か」


 ちゃと、眼鏡を掛け直して後ろの状態で判断した。


「よけんじゃねえよ!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」


 リーゼントはその場で連続で殴りつけだした。リーゼントの魔法により固められた空気は殴りつけられてアルバート目掛けて大量に飛んでいく。


「じゃあ、これはどうだ?【マジック・遮断】」


 飛んでくる不可視の攻撃をよそに、ぺらぺらとページを捲ると、指をそのページに付けて魔方陣を発動させる。

 発動させたのは自分の位置を遮断する魔法だ。密かに創造神の加護を使って威力を高めた『それ』は、通常では障壁のようなものを発生させるが、強化された『それ』では文字通り遮断する魔法だ。アルバートの周囲はこの世界から遮断され、その場にいるが、別世界にいる『こと』に変わった。


「はあぁぁ!!??」


 空気の塊はアルバートを認識出来ずに、そのまま何もなかったようにアルバートの体を通過していった。


「なんだそれ!ありかよ!」

「ありだ【マジック・プレス】」


 アルバートはお返しと言わんばかりに、空気の壁をリーゼントに頭上から叩きつけた。


「ぐ、ぐううううう!!どうだ!き、きかんぞ!」


 ははは!と笑いながら空気の壁を両手で持ち上げるリーゼントは、アルバートに見せつけるようにそうした。


「ふーん【マジック・プレス&プレス】」


 ドン!と壁の重さがアルバートの魔法により二倍に押し付けるように変わった。しかし、リーゼントは変わらずどうしたどうしたと、アルバートを煽っていた。


「これは?【マジック・プレス&プレス&プレス】」


 さらに、三倍まで重さを上げるが…………。


「は、ははは!ききき、効かないな!そんなもの!」


 やせ我慢をしているようにも見えないが……。


「リーゼントはどうやらアルの空気の壁をどうにか持ち上げて耐えているようです。リバ様。あれは今どのくらいでしょう?」

「ん~~そうだね。三倍なら三t程度でしょう。なんも問題ない。たかが三tだよー」


 リバの言う通りで、現在は三tほど力が加えられているが、神にとってはその程度である。リーゼントは場を盛り上げるためにわざとああやって苦しいフリをしているのだ……多分。


「遊びは終わりだ【マジック・プレス×百】」

「っは!?う!?」


 リーゼントの足元の地面は一瞬にして一メートル程陥没を起こし、周囲の地面は押し出されるように盛り上がっていく。


「おおっと!アルったら本気に移りだしました!」

「流石に百tは中級神にとっては辛いかな?」


 神は上に上がるほど加護の力を受ける事ができ。リーゼントは中級神で破壊の加護を受け、アルバートは創造神の加護を受けている。実力的に中級神は上位神に勝つことはまず不可能なのだ。加護の強さにより。一部例外を除いてだが……。


「まだまだああぁぁぁ!!」


 しかし、どうやらリーゼント野郎は耐えてしまったようだ……っケ!!


「耐えんなボケェ!!大人しくアルにやられとけ!!」

「リバ様。ツッコミを入れてもらえませんか?」

「ノーコメントでお願い」


 豹変もここまでくれば何も言う気が失せてくる。鬼の形相でリーゼントをメギナーは上から見下ろしていた。メイはツッコミを入れるつもりがないのでリバに丸投げしようとするが、華麗に回避した。だって怖いもん。


「司会の嬢ちゃんがスゲー怖いんだが……」

「………」

「そのままやっちまいな!!ア~~ル~~!!」


 鬼になったと思いきや。百面相のように瞬時に表情を変えて、可愛らしい声でアルバートを応援しだすメギナー。司会としての誇りはないのか、片方を応援するなよ……と、観客(神達)は思った。しかし、口には出さない。だって怖いもん!


「はぁ…。試験はこれで最後……で。次は医務室で会いましょう」

「は?何言って──」

「【マジック・プレス×千】」


 ドォォォォォォォォン………。


 今度は上空千メートルに出現させた空気の壁(千t)を重力加速を合わせて食らわせた。アホなほどに威力とスピードを増した壁は、地面をリーゼントごと押し込むように押し潰してった。

 底が見えないほど直径一メートル程の円状の穴がぽっかり空いた。


「終了!アルの勝ち!!リーゼントは死亡!さようなら!」

「「「「いやいやいやいや!!終わらせるなよ!!」」」」

「はぁぁ……メイ?」


 司会の暴走で思わず額を抑えてあちゃーとするが。隣のメイに言いたいことは分かるよね?とアイコンタクトした。


「問題なくリーは医務室まで転移させているので無事です……ッケ!」

「……(あの子。随分と女性に嫌われているね………)」


しみじみそう思ったのであった。

お読みいただきありがとうございました!

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