第48話 ある、ゴブリンのお話し 19(過去編)
「ま~~たく!真打ち登場!って事か~にゃ?クラくん?」
体を直角に曲げながら体を後ろに振り向きそうクラに言う。
「そこのふらふらのお前に、う~んそこの──ゴブリン?も倒れてるやつの所に集まっとけ。邪魔になる。」
「無視かい!?僕~は無視かいクラくん!?」
目の前のチツから目を離さないままギルトアイとゴブリンに、ダイエとリンカと所に移動しろと指示を出すと、チツが手を上に上げながらクラにぷんぷん!と抗議を始めた。
「何を言ってやがる!?お前には奴から漂う歪な気配を感じないのか!?あんな化け物に勝てるわけがねぇ………。見た限り知り合いそうだが、それなら分かるだろ!?不可能だ!」
チツから感じた気配に、オニルにも動じなかった心がポッキリ折れたギルトアイは、不可能だとクラに止めることを必死に言う。
「これでも………か?」
「っ!?化け物が二人もかよ………」
クラがほんの少し隠していた力のほんの少しを出すと、ギルトアイはピリピリと肌に来る気配にクラも化け物の一人だと体で理解した。
「分かったら離れてろ──チツが来るぞ」
「ムシムシ無視はしないで~ね」
両掌を上に向けると、掌の上で空間が渦巻き始める。
「空間巻き巻き~」
のんびりした声と共に起きる。周囲の空間が吸い込まれるようにチツの掌の渦巻いた空間に流れていく。
「………」
「っく!?流される!?」
「うおお………、流さ──れない」
腕を組んだまま微動だにしないクラに対してギルトアイは踏ん張るが徐々にに引き込まれていた、何故かゴブリンも同様に微動だにしていなかった。
「起きろ!馬鹿!」
「グハ!?何しやが──何だこれ!?」
「踏ん張れ!怪力馬鹿!俺だとリンカを持ったまま耐えられん! 早く踏ん張れ!!」
気絶していたダイエを叩き起こし、状況理解をさせる前に先に踏ん張れとギルトアイは指示を出した。
「行くぞチツ」
ヒュン。
クラはチツの後ろに転移を行いそのまま右手で背中目掛けて殴り掛かる。
チツ前を向いたままぐにゃりと体を直角に前に曲げて避けるとそのまま両足の隙間から後ろにいるクラを視るとにやっと笑い。
「ばぁ!!」
口を開いて、口の中の空間からナイフを発射させた。
「効くか」
しかし、魔法障壁を展開させたクラには届かず、キン!と音と共に弾じかれた。
ぶわぁんとチツの体が空間に飲み込まれると、数メートル先の空間から現れた。
「ありゃりゃ、せめて驚いても良いんだよ?」
「時間稼いで何をするつもりだ?」
「………?分かんない?僕も分かんない!」
「構わないが………コピーが死んだんだ、当然リバも時期に来るぞ」
「怖いねぇ~怖い怖い………リバは子供の格好なのに冷血だからチビれそうだよ!」
ブルブルと自分の体を抱き締めながら身震いを始めるチツに対して、睨み付けらながら佇むクラ。
「じゃあこれはどうかなぁ?」
キャィィィィィィィン!!!
クルクル来るとチツがその場でバレリーナのように何回も回転した後にピタリと止めて、ピースポーズをした瞬間。高速回転する円盤状空間が幾つもの数がチツの周囲に出現した。
「行け!クルクル空間君!」
チツがクラに向けて指差すと、円盤空間は物凄い音を出しながらクラに向かって不規則にカクカクと高速で動き出した。
「【無限障壁】」
クラはそれに対して自身最強の防壁である【無限障壁】を展開した。
【無限障壁】は名の通り無限に障壁を使用者の周囲を包み込むように展開する。僅か二層式の障壁だが、一層が破壊されると同時に入れ替わるように破壊された障壁に二層目の障壁が移動する。
すると、元二層があった位置に新たに障壁を自動で展開する。
破壊去れど無限に展開される。しかも、障壁にはクラの神壊魔法付けられた物だ。普通の攻撃ならぶつかる瞬間に破壊される。
「ちょっと~それは卑怯だよ」
当然、神空魔法を籠められていないただの空間魔法では蟻が象に殴り掛かる程に無に等しい。
障壁に当たった瞬間に円盤空間は飛散していく。
「にゃら!数でアタック!」
ばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば!!
何となく一億程の円盤空間を出現させたチツは、雨が降るかのように円盤空間をクラに襲い掛からせる。
「効くかそんなもん」
「たたたたたたた!!まだだもんね!もっと!」
さらに十億。
「もっともっと!」
さらにさらに百億。
「追加だ~よ」
ついでに一京召喚させて襲い掛かる。
当たる飛散当たる飛散と永遠と飛散していく円盤をチツは見るとにやぁ~と笑みを浮かべ。
「じゃあ周囲が歪み始めたし。これでも食らえ!神空魔法【歪な棘】」
漂う飛散した空間がピタリと動きを止めると、クラの周囲を巻き付き覆い尽くすように棘の形へと変えていく。
「ヒャーーーハァーーー!!封印!」
【歪な棘】によってクラの周囲の空間が絡まるような固定された。脱出不可能な封印を行う神空魔法だ。
絡まるように固定されたせいで転移は発動せず、一般人は永遠に死ぬまで封印されるだろう。
パチン!
「【無効】」
バキバキバギ!!
黒緑色の棘の球体の中から指パッチンの音が響くと、バキバキと棘が折れ剥がれていく。
棘が崩れていく中、目を細めてチツがそれ見届けていると………。
「きたぁぁねぇぇぇ………?」
シュンシュンシュン。
「「「は!我等が神!」」」
三人の【ラグナロク】がチツを囲うように平伏しながら転移して現れた。
「………何をするつもりだ?」
「予定通りとは違うけど………彼を連れていくだけだよ?」
棘が残骸と成り果ててその場に散らばると、現れた【ラグナロク】に警戒しながらクラはチツにそう言う。
チツは首をクイクイと動かし、向けた方向にいるゴブリンを連れて帰ると言った。
「ヴっ!………俺?…………あだまがぁ痛い………」
ゴブリンは頭を抱えながら、襲い掛かる頭が割れるような痛みに耐えたがら自分の事?と返事をする………が。
「ぐ………黒無!!!」
「ギ!!ギャア!!」
途端に、目を真っ赤に染め上げると。睨み付けるように黒無に命令する――纏えと。
ズズズズ………。
「おやぁ?想像以上の怪物さんだったかなぁ?」
槍の形を崩すと、手を伝いながら体全体を覆うように黒無がゴブリンを包んでいく。
「何だ!?」
「クソ!今度は何だ!?」
地面が地響きを経てる。生き物全てがこの場所から遠ざかっていく……本能から逃げろと、逃げなければ自分という存在が──終わると。
「………」
ゴブリン──いや、違う。尖った耳に細く緑色の体だった筈なのに、彼は人間の子供と一寸も違わない姿へと変わっていた。黒い鎧を纏った人間の子供の姿になり。ただただ目を瞑ったまま棒立ちする。
「よーし!皆で捕獲してこーい!!」
殺伐とした空気をぶっ壊すのんびりとした口調でえいえいおー!と、腕を伸ばして【ラグナロク】に合図をする。
「「「っは!」」」
三人が一斉にその場を飛び立ち、ゴブリンに向かう。
三方向から襲い掛かるが………。
「【創空破】」
ゴブリンは言葉を呟く。ただそれだけ───一人は謎の塊に押し潰され、一人はバラバラに体が吹き飛び、最後は………空間ごと引き裂かれた。
「空間に創造に──破壊魔法?……あり得ない。加護を与えてないぞ俺は」
「あらーら?クラ君もわーかんないか?仕方がないねー僕ちんもさっき気が付いたんだもん」
「何を言ってやがる?」
「まだ分かんない?彼──加護を何も持っていない。………最上神の三つの力の象徴【創造】【破壊】【空間】神はいずれかの派閥に生まれながらに分かれ、いずれかか………その他を司る。だが、本当の意味で【異常】の彼はどんな小さき存在も何かしらの加護を受けている筈なのに、彼は加護を持っていない──いや、もつ必要がないかな?」
「まさか………」
「これ以上は言うつもりはない、私の目的に必要な存在だということが分かったから………貰うよあれを。神空魔法【隔離空間】」
「な!?」
ピシリ!!
チツとゴブリンを囲うように空間にひびが入いった。
これにより、外と中は空間の壁により隔離されたのだ。
「この野郎!!神壊魔──」
「おっと、そんな事したら空間が破壊された影響の余波で彼が死んじゃうよー?」
「ッチ!出てきやがれ!」
「んんんー?耳が遠くてー聞こえなーーい!!」
クラの言葉に耳に手を当てながら惚けた表情でチツが被せるように答える。
さらにその後に何かを行ったのか、クラの姿はひび割れた空間越しに見えるが、声がチツとゴブリンに届かなくなった。
ベロベロベーロと、クラに向かって舌をベロベロさせて煽ると満足したのか、ゴブリンの方にくるりと向いた。
「さてー?どう料理したあげようかな?」
「………誰?何で閉じ込める?」
「おんやー?少し人格に影響したかなー?ゴホン!………お答えしよーう!………貴様は私の部下になれ、素直になるなら死ぬことはないだろう。成る気があるなら私の手を取れ」
断れば殺すと、目で示すかのように冷えきった瞳でゴブリンを見詰めながら手を差し伸べる。
………だが、しかし!
「俺は働く気はない!………お休み」
「ん?………………んんんん?」
寝た………。チツの言葉に部下=下で働けと理解したゴブリンはきっぱりと断りその場に寝転がった。
チツは手を伸ばした状態で予想だにしない返事にどういうことー?と、思いながらピタリと停止してしまった。
「はぁ~なーら良いや──死」
バリィィィィ!!
「おい、よくも煽りやがったな。」
ガラスの破片のように飛び散っていく空間の外から、若干イラついた様子のクラがとうとう【隔離空間】を破壊した。
「あちゃー!残念!少し遅い──ってあっぶね!!」
「ウガァァァァァァァ!!!」
突然起き上がったゴブリンが、黒い鉤爪のように纏っている右腕を叫びながらチツに振りかざす。
ばっ!と横にチツはどうにか避けるが──腹部から血が流れ落ちる。
「いたたた避けた筈にゃのに………空間魔法かな?」
「ふー!ふー!」
「ぐへぇぇぇぇ!?」
「お前ら動くなよ!!」
ドゴォォォォォン!!
荒い吐息を吐き出しながら黒いグローブの様な左手を地面に叩き付け、周囲を吹き飛ばしながらクレーターを作る。
衝撃で変な声を出しながら吹っ飛んでチツ。
クラは瞬時にギルトアイとダイエとリンカの前に移動して、衝撃に対して自身の足を前に出しながら踏みつけ、それにより前に踏みつけた衝撃で、ゴブリンの衝撃を消し去った。
「仕方がねぇ、吹き飛んだチツは後回しだ。猛獣を静める為に行くとするか」
頭を掻きながら、そうクラは決心した。
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ブクマもありがとうございました!




