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第42話 ある、ゴブリンのお話し 13(過去編)

「クソ!!」


ガン!………ドン!!


 ここは王都の城の中の一室。

 彼───ギルトアイは自らの寝室兼研究所の部屋の一室にある、右と左に積み重なれた本棚に囲まれた椅子と机がある部屋で八つ当たりぎみに、椅子を蹴り飛ばした。ガタガタと椅子がぶつかった衝撃で本棚が揺れるが、無視をする。


 普段の彼の様子からは想像が付かないほどに苛ついていることが伺える。


「クソクソクソクソ!!」


ドンドンドンドン!!


 蹴り飛ばされた椅子に追い討ちを欠けるように、さらに上から足で思いっきり踏みつけ出した。


「はぁはぁ………」


 ギルトアイはバラバラになった椅子に目をやりながら息を切らす。


「………」


 少しは気分が晴れたのか。息を整えると、少子無言で残骸を見続けだした。

 すると、残骸から目を離して「───」と、ゴニョゴニョと何かを喋ると、残骸が一瞬光を放つ。すると、瞬く間に無傷の椅子の姿に戻った。

 椅子を、奥にある机の手前に運ぶと、その椅子の上にのし掛かった。体の力を抜きながら全体重を欠けるようにぐだぁ………と、椅子の上でだらけるように乗った。

 ギルトアイは部屋の天井を見続けながら意識が途絶えるように、椅子の上で眠っていった。


〉〉〉



「うわぁ………人がいっぱい………めんどくさいなぁ」


 喋るゴブリンはやっとのことこの国の王都に辿り着いた。


 国を長年守り続けた聳え立つ頑丈な石造りの城壁は、今も尚。その鉄壁を保持し続けたいた。


 喋るゴブリンは上から深くフードを被り、全身黒い姿で、何処からどうみても怪しい人物一直線の姿になっていた。

 しかも、よくよく服を見ればぐにゃぐにゃとたまに蠢いていた。生理的嫌悪感を抱くように蠢く服(?)に、ゴブリンは焦って服を見て「う、動くなよ!」と、言うと、ピタリと蠢きを止めた。時折、小さく「ぐぎゃぁぁぁ………」と、まるで、この姿に変えるのが嫌だと、抗議するようにゴブリンの頭の中で響き渡る。


 そんなこんなで、王都に入るために出入り口である門の列に並んだ。だが、喋るゴブリンにとっては十分に多い人達だが、一般市民と馬車を使い列に並んでいる人々にとってはいつもよりかなり少ない列に若干不安による戸惑いが隠せないのか、そわそわと列に並んでいた。


 そんな中にどうみても怪しい人物のゴブリンは、奇怪な目に晒されながらも、どうにか意識を保っていた。


(吐きそう………)


 とゆうか、今にも欠陥寸前であった。


 口元を押さえながら、ふらふらと進んでいくと、やはり、人数が少ないからか、すぐに順番が回ってきた。


「身分証を」


 門の前に左右に佇む門番の二人の内の一人が喋るゴブリンに対して身分を証明できる物の提示を求めてきた。


「え?………あ、ああ、そ、そのぉ………」


(そんなものある分けないい!)


 身分証がいることが知らなかった喋るゴブリンは提示を求められたことに焦りに焦り始める。

 このまま「無い」と、言い、怪しまれて魔物と分かったら───悪即斬!


 最悪な想像をして、喋るゴブリンは冷や汗をだらだらと欠きながら、どうするどうすると、更に焦る。


「まさか………身分証を持っていないのか?………」


 一向に身分証を渡さない喋るゴブリン(怪しい人物)を怪しむ目で見ながら、そう聞く。


「………無いです」

「………なら、仕方がないな、中に入れ──」


 ゴーン!!ゴーン!!ゴーン!!ゴーン!!


 門番がその言葉を言う前に、王都の中から鐘の音が四度程、鳴り響いた。


「な!?緊急避難!?」


 門番は四度の鐘の音を聞くと見るからに焦り始めた。


「!?早く中に入らせろ!!」

「俺も!!!」

「子供がいるの!入れさせて!」


 喋るゴブリンの後ろにいる人々が一斉叫び出した。わぁーわぁーと、抗議したり「先に入らせろ!」と、醜い争いを始めたりしたのだ。


 そう、4度の鐘の音は緊急避難の知らせで、それを知る人々は外に何かしらの【こと】が起きたと、そう思い、誰よりも一足先に入りたいと思い、喚き始めたのだ。


「落ち着いてください!残りの待ちの人数が少ないので、焦らず入ってください!君も本来なら駄目な所だが、仕方がないから入りなさい」

「へ?、あ、うん」


 最初に、喋るゴブリンの対応をしていた門番は、待ちの人達の対応に終われ、もう一人の門番が喋るゴブリンに中に入ってと、促した。


(これで、夢にまで見た王都へ………)


 流れに呑み込まれて、そのまま他の人達と共に、王都の中に喋るゴブリンは入っていった。


〉〉〉



「緊急避難の音………」


 リンカは今、うやむやな気持ちを晴らす為に、訓練場にて素振りをしていた。

 無心に無心にと、無心になれていないが、ひたすら木剣を素振りをしていたのだ。

 風を切る音を鳴らせながら素振りをしていると。周囲に鐘の音が四度程、鳴り響いた。

 リンカは即、外に何かしらの事が起きたと判断して、団長として動かなければと、判断するが。


「そうか………私はもう………」


 普段なら訓練場に訓練する前に普段着から訓練用の服に着替える。

 そして………団長として、国の最強の一人として授けられた青いレイピア───【蒼華そうか】を肌身は出さず腰に付けていたが──今は無い。


 団長の任を解かれた時点で【蒼華】は所持することが許されず、城の宝物庫に納められたのだ。

【蒼華】を持っていないことに気が付くと。


「しかし、民衆を助けることにあるないは関係ない」


 自分に、もう強敵に戦うための武器が無い。しかし、それがどうした、戦うのに武器は関係ない、必要なのは臆せぬ気持ちの力だと、言い聞かせると、訓練場を後にして走り出した。



〉〉〉



「ギュギュギュギュギュ!!」


 醜い存在───鼠色の布を体に巻き付けただけ服のような物を身に纏った人間・・は、王都がどうにか見えるぐらいの地点にて、不気味な笑いを腹を抱えて笑いだす。


「ギャァァァァァァァァァ!!」

「グォォォォォォォ!!」

「グラァァァアアア!!」


 醜い存在の笑い声に同調するように、後ろにぞろぞろと存在する数万という、魔物が一斉に叫び出す。

 魑魅魍魎と化した広野で醜い存在は後ろを振り向き、不気味に微笑むと。


「あはははは!!ぎゃはははは!!殺し合え!ゴミどもがぁぁぁぁ!あはははは!!ギギギギギ!!!」


 醜い存在の言葉が合図の様に、一斉に魔物達が食べ合い、殺し合い始めた。叫び声、断末魔が飛び交うなか、醜い存在は慈悲深い目で新たな【誕生】を見守っていた。


─────そして。


「ガガガガガガ!アガガガガガ!」


 数万という膨大な数の魔物から一匹が生き残り。全ての魔力をその一匹が独占した。


「生まれた!!生まれたぁぁぁ!!」


 醜い存在は歓喜する、大空に両腕を伸ばしながら目を見開いて喜ぶ。


 生まれたのだ、人為的に。




─────【異常】が。




お読みいただきありがとうございました!

ブクマもありがとうございました!

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