第31話 ある、ゴブリンのお話し 2(過去編)
ぐちゃ……ぐちゃ……。
深い森の中を草木やぬかるんだ地面を、ただただ歩いている、緑色の影───一匹の喋るゴブリンがいた。
「はぁはぁ………」
喋るゴブリンは頭の傷口と掌に薬草をすりつぶした物を塗って、少し大きめな葉っぱを使って応急処置をしていた。
だが、傷とぬかるんだ地面、それに………数日前に起きた事に心を痛めながらひたすら目的地に向かって歩いていたのだ、最早体力は残り少なく、このままではその内、この、薄暗い森の中が彼の墓場になるだろう。
「もう少し………」
彼は1つの希望を抱きつつも、もう1つの絶望の道を頭の隅で考えていた。
「あ」
集落から徒歩数日。彼は知っているなかのもう1つの集落にどうにかたどり着いたのだ。
「ぎ!!」
「ぎ!」
ここは、山のすぐ麓で、近くには鉱山などがあり。ここのゴブリン達は付近にあるゴブリンの集落の中では一二を争うほどの強さを誇る。彼は鉱山を利用して鍛冶をして、剣と盾を自作して、例え他の魔物が入り込もうならば、自らが応戦して、たちまち退治するであろう。
そんな、武力により付近より平和な集落では、子供のゴブリンが手を結んでくるくると集落の入口付近で回って遊んでいた。
「ぎゃ!?」
「ぎゃ!?」
入口にいた二匹のゴブリンは森の中から現れたボロボロの喋るゴブリンを見て、ピタリと回るのを止めて一目散に、集落の中に駆け込む。
(どうしようか………)
喋るゴブリンは此処に着いてからは、やっと着いた………。とした安心感が最初は来るが。後々に、不安と恐怖が一斉に喋るゴブリン襲いかかる。
(ダメだダメだ………)
顔を左右に振りながら不安感を頭の中から無くそうとする。
そんな事をしていると、奥から一匹の老いた、少し威厳がある他のゴブリンのボロい布を纏ったとは違い、ちょっと手の込んだ綺麗な布を着たゴブリンが護衛と思われる鎧を着けた………立派、とは言いがたいが、ゴブリンの知識の限界を使った、所々歪んだ鎧に、剣を左腰に着けた、二匹のゴブリンが老いたゴブリンの一歩後ろの右と左を歩いていた。
「ぎぎぎ………ナニヨウダ?タノシュウラクノドウシュゾクハ、キホンハムカンショウノハズダガ?」
老いたゴブリンは喋るゴブリンの少し離れたところで立ち止まって疑問をぶつける。この老いたゴブリンは長年生きた事によって得られた知識のお陰であろうか、喋れるようだ。片言だが。
「………喋れるの?」
「!?ナニ!?」
老いたゴブリンは驚愕した、理由は様々なだが、ゴブリンはやはり何処のゴブリンでも、皆知識には最低限あれば良いと考えてる。老いたゴブリンは何かしらの理由によって知識を得ようと考えたのであろうか。だが、目の前のゴブリンは見た限り、まだ若いゴブリン。老いたゴブリンは"そんな若造が知識を得ようとした?………あり得ん"胸の中で理由を考えるが、普通のゴブリンではまず有り得ない行動に少し疑問を考えるが、ある事をふと考えた。たまに………偶然の更に偶然で起きる、異常種の存在が長年の知識にあった事を思い出した。
「マサカ………イジョウシュカ………………」
老いたゴブリンは少しうつむき考え込む。一瞬、喋るゴブリンから見えない角度でニヤリと不気味に微笑んだ。 そののち、顔を上げて再び喋るゴブリンを見た。
「ナゼコノシュウラクニ?イタシュウラクハドウシタンダ──」
「ぎゃあ!!」
「ぎゃあ!!」
護衛のゴブリン二匹は老いたゴブリン以外に喋るゴブリンを不気味に思ったのか。老いたゴブリンの前に立ち剣を喋るゴブリンに敵意剥き出しで向けた。
「っ!?」
(ここでも………こうなのか………やっぱ、何処の集落に行っても………)
喋るゴブリンは二匹の護衛に恐れ一歩下がりながらも、"どの集落でもこんな風に敵意を向けれるのか、その後──"と、最悪な事を考えた喋るゴブリンは顔を更に恐怖に染めて、限界の体を振り絞り、再び森の中に逃げたそうと──。
「キサマラ………ワシノハナシノトチュウダ!!ダマレ!!」
「「ぎ!?」」
護衛は老いたゴブリンの一喝に驚き、すぐさま、振り返り膝まつく。
「ワカッタナラダマレ!!ウシロニサガッテオケ!!」
「「ぎゃ!」」
膝まついていた護衛は、すぐさま立ち上がり、再び、老いたゴブリンの後ろに下がる。
喋るゴブリンは現状を理解が出来ず、唖然として固まっていた。
「ゴホン………デ?イッタイナニヨウダ?」
「へ?………あ、自分がいた集落から………追い出されて、住むところを………」
「ナルホドナ」
再び老いたゴブリンが1泊間を置いて。
「シャベレルナラアルテイドチシキガアルダロウ?ナラ、ソレヲツカッテワガシュウラクニツクシテクレルナラ、スムコトヲキョカシヨウ」
「本当ですか!?」
「「ぎゃぎゃ!!」」
護衛二匹は老いたゴブリンに抗議するように、声を上げる。
「ダマレ!!(ナニ、リヨウスルダケダ)」
護衛二匹だけに聞こえるように、最後に呟く。
「オエタチハ、ミナニツタエテコイ」
「「ぎ!!」」
護衛二匹は返事をした後、集落の奥に他のゴブリンに伝えに走っていった。
「本当にいいんですか?」
「アア、シカシ、チャントハタライテモラウゾ」
「は、はい!ありがとうございます!!」
喋るゴブリンはペコペコしながら、嬉しさの余り、涙を流していた。
(コレデ、モクヒョウニ、アトスコシダ………)
老いたゴブリンの思わくも知らずに………。
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