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第93話 消えた神

「やっと倒れやがったか……」


 仰向けで大の字の形で地面に倒れている傷塗れのちょび髭紳士を見下ろしながら、めんどくさい表情をして呟いた。


「ったく。これはどうすればいいんやら」


 三人の戦闘によって、クレーターが所々あったり、木々は千切れる物や倒れている物。余波燃えていた家は吹き飛び、辺りに居たよく分からない集団は戦闘の合間を縫ってクラが叩きのめしたので、ちょび髭紳士同様に地面とキスをしている。


 後味が悪い、そう思わずにはいられない。クラは余程のことがない限り、余計な事はしないようにしている。まぁ……その世界を回る旅をしていたら例外なのだが、基本的には干渉することは殆どない。

 リバの指令を受けてここに来たのはいいものの、まさか即座にあんな出来事に出会うなんてことは想定しておらず。取り敢えず様子見で現場を見ていたが……やはり気持ち的には良い物では無い。


 特に小さい子供の叫び声なんて聞きたくもない。


「チツの野郎の干渉が分かったから、やる事をやりに行くか」


 周囲の状況を確認すると、遠くの方でこちらに向かってくる一団らしき気配がするので、この村の状況を確認しに来た衛兵か騎士団だろうと考えた。

 距離的にもものの一時間ぐらいで来るだろうから、この世界の事はここの人間に任せることにして、クラは気絶しているちょび髭紳士二人を両肩に抱えた。


「そらっと」


 転移する前に、息があるであろう者たちに向けて回復魔法を使用して傷口を癒すと、クラは元凶を抱え。この世界から転移していった。


 〉〉〉


「………まさか、ここも攻撃するとはな」

「ボス!?」

「あ、パパ!」

「お、無事だったか。ゴブ、シナナ」


 転移してみると………そこはホモが溢れる地獄の世界、という状況ではなかった。


 ここはホモランド。監獄として使うこともあれば、何かあった時の集合場所として使っている。

 暑苦しい男共の姿が目に入るであろうと少し心構えをしていたが、転移してみれば、綺麗な街並みは所々粉砕された跡や燃え広がった焼け焦げた跡がある。


 如何やらここで戦闘があったらしい。


 ある意味で、喧嘩を売った奴が凄いと思わなくもない。理由としては、クラの仲間の中でも悲しい事に最強の人物なのだ。全くにもって悲しい。何故ホモが仲間の中で最強なのだと……密かに嘆いたことは少なからずあるクラである。


 世の中変態が最強を欲しいままにする。変態=強いという方程式が完成しているのではないか?とも最近思っているのだ。


 そういうことで。ホモーがいるホモランドに攻撃してもほぼ返り討ちなので、クラは驚いていた。



 一足先に居たゴブとシナナは、クラが転移してきたのに気が付くと近くにより、シナナはクラの腰に抱きついた。


「そっちは何ともなかったのか?」

「特になかったよ。─────ゴブが移動するのをめんどくさいって移動するのを拒否した以外」

「ボス。頭にたんこぶ出来て痛いです」

「自業自得だろ。動け。チツが何かしてるっぽい状況でそんなこと言われても俺は知らんぞ。シナナに殴られても」

「もう、ニ十回殴られました」

「………」

「聞いてよパパ!こいつねあれが─────」


 ゴブの言葉を聞いてふと、頭が異様に膨らんでいる事に気が付いて目を向けると。それは超巨大なたんこぶである事に気が付いた。

 若干涙目でシナナの事と自分の頭を指差してクラに訴えかけるように言うが、当然バシッと切られた。どうやらゴブの頭は一回どころではなくニ十回の拳骨を喰らったらしく、流石のクラも何とも言えず少し引き攣った苦笑いをするが、腰にしがみ付いているシナナが顔を上げてあれこれと、ゴブのせいで起こった迷惑話を語り始めた。


(これは─────まあ。……自分のせいだな、うん。そう言う事にしとくか)


 シナナの話を頷いて聞いている風を装いながら、落ち着かせるために頭を撫でる。すると、頭を撫でられて機嫌がよくなったシナナはすぐに話を止めて顔をクラのお腹に埋めながら頭を撫でられるのを堪能した。


「お、ボス!来たのか!」

「ん?ああ。ホモーか、ちょいと頼みごとをな」

「どうしたのだ?俺の筋肉美を見るのなら三百六十五年間いつでもオーケーだ!っはっはっはっはっは!」

「いや、それはいい」

「そうか………残念!」


 そこに現れたのはお馴染みの筋肉で変態のホモーだ。ずだだだだ!と砂埃を上げながら猛烈な勢いでクラの目の前に到着すると、すぐさまポージングを取って挨拶をした。

 クラの言葉を聞いてやっとボスも俺の筋肉美を、この世界を理解したか!と一人で勘違いするが、どうやら違った。テンションが最下層からすぐに最上層にランクアップ!男ホモーはテンションが低いのが大っ嫌いなのだ!


「このちょび髭を投獄していてくれ」

「おお!我らの国の入居者か!?」

「頼むからちゃんと『投獄』してくれよ!」

「分かってるさ!ボス!しっかり!!!投獄(仲間に)しておくさ!」

「ああ、もういいや………」


 笑顔で気絶しているちょび髭紳士を手に受け取ったホモー。


 ホモーはニッコリと了承した。ホモーは知っている。といいつつ、そう言うことだろボス!と、クラの真意を分かっているからだ!


(絶対に分かってないだろ!おい!ここはホモ量産工場じゃないんだぞ!)


 クラの心の叫びは当然のこと、聞こえず。親指を立ててグットポーズを取った後、来た時のように走り去っていった。


 走っていくホモーが抱えている人物を見た周囲のホモ達から歓喜の声が聞こえたような気がした。クラは耳を塞ぎたくなる思いの中。出荷されていくちょび髭紳士を哀れんだ目で見送った。



 数分後。


「はぁ……。もういいや。─────取り敢えず、俺は行くぞ」

「ボス行くんですか?」

「あの野郎!性懲りもなくパパを独占しようとするのね!」


 気持ちを切り替え。今回の元凶を探しに取り敢えずリバに合流しようと考えたクラは神域に転移しようとする。


「だがな……どうするか」


 リバと合流したとしても、リバは世界の状況が状況の為。あそこから動くい事なんてそうそう出来る訳がない。

 だが、チツが一人で行動している可能性が低い。どこかしらで仲間が動いているので、本人と共に行動している仲間がいる可能性がある。そうなると、クラはリバの対応だけで手が一杯だ。他の奴らの攻撃は致命傷になる事は無いがチツの戦闘中に邪魔をされたらそれだけでも致命打になる。


 けど、チツの事だからまた一人で行動している可能性もないことにはないのだが、もしもということがあるので一人で行動する事はなしだ。


 チラッと抱きついているシナナと、頭の治療に専念してすっかりたんこぶが縮んでふぅ……と、一仕事したと溜息を吐いているゴブに目を向ける。


(二人掛かりなら大抵の奴はいけるだろうからな……もしもの事を考えて)


 ゴブとシナナ。今の二人であれば大抵の相手ならどうとでもなる。

 相手はチツの仲間になる、それを考えると少し心許ないので、ある事を考えつくと、二人に声を掛けた。


「ゴブ、シナナ。これからリバの所に行ってチツの野郎の場所を探してもらう予定だが。ちょっと一緒に来てくれないか?」

「え?いいの?」

「ボス。いいんですか?」


 二人のいいのは、来てもいいのではなく。因縁がある相手のチツのことになると基本的に一人で対処しようとしているクラが珍しく一緒に来てくれと言ったからだ。

 クラとリバ、チツの三人の間で何があったのか二人は当然全く知らない。三人の、最上位の神になったことで起きた物事のせいで拗れてしまったことまでは知っているが深くは知らない。二人は知らない自分が言ってもいいのかと、少し申し訳なさそうに聞いた。珍しくゴブも。


「ああ。多分だが、チツの仲間がいる可能性がある。二人には俺がチツの野郎と戦っている間に邪魔が入らないようにしてほしんだ。……頼めるか?」

「「任せて(問題ないです)!」」

「………ありがとうな」


 二人の即決に嬉しくなったクラはガシガシと少し乱暴気に二人の頭を撫でると、そのまま二人の肩に手を置いた。


「取り敢えずリバの所に行くぞ」

「「はい(了解です)!」」


 シュン。


 〉〉〉



 そして三人は転移した。


「何だよ……これ」


 何もない、だだっ広く。


 真っ黒な世界だけが広がる。


「リバ!何処だ!?…………おい!返事をしろよリバァァァ!!!!」


 ─────神域に。


お読みいただきありがとうございました!

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