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手遅れ37

「ナニヲシテイル」

 はて、誰かしら、私は可笑しな声を出した人を探す、その声の主は、日の沈みかけた、夕焼けに伸びる森の影に紛れて、そこにいた、人だと思った、白い服を着た白い肌の青年だと思った、だが違った。

「コヴァルやめろっ」

 ジンが叫ぶ、私がソイツを見つけた時には、コヴァルが刺突剣でソイツを突き刺していた。

「ナニヲシテイル」

 ソイツは刺された事などまるで気にした様子もなく、同じ言葉を繰り返した。

「化け物がっ」

コヴァルが飛び退く、皆がソイツの異常さに気付いた様で、ジンに駆け寄る、ソイツを良く見てみると白い何かだった、霧の様な、淡い光の様な、人の様な何かだった、怖い、私はジンに駆け寄り、ジンの後ろに隠れながら様子を窺う。

「何をしてると聞かれれば、森を開発していると答えますが、あなたはどちら様ですか」

 ジンがソイツに答える、いつの間にかクロが居て、ジンの前で毛を逆立てて、ソイツを威嚇している。

「ン、ナンダソレハ、ソンナカワッタヤツマデツレテ、コンナセカイノハズレデ、ナニヲシテテイル」

 ソレってクロの事かしら、ニポーンを世界の外れって言う事は、違う大陸から来たのかしら。

「いやいや、自分の質問には答えてくれないんですか、何者です、お前、アンラーのお仲間ですか」

 ジンが刀を抜く、初めて見るその刀身は、夕日に染まりキラリと瞬く。

「皆、離れて下さい」

 ジンの言葉を受け、皆でジンから離れる。

「コヴァル、あなたも離れて下さい」

 傍に残り、戦う気であっただろうコヴァルにも離れる様に言うジン。

「自分が負けたら、皆を連れて逃げて下さい」

「それ程の相手なのか」

「はい」

 コヴァルが驚いた様に聞き、ジンが肯定する、ジンが負ける、そんな事あり得るのかしら、コヴァルがジンから離れて私達の近くに来る、皆がジンを心配そうに見詰める中、私は索敵様でアイツを認識してみる、何なのっ、索敵様のお力が届かないっ、外見の認識だけで内部が全く見えないっ。

「ナンダ、オマエハワタシトタタカイタイノカ、サッキノヤツトイイ、アフラーノケンゾクハ、コンナニコウセンテキダッタカ」

「戦いたいと言う訳ではないですが、あなたがアンラーと係わりがあるなら、戦わないわけにはいきません、自分をアフラー様の眷属と知っている相手なら尚の事」

 ジンが腰を落とし、刀を構える。

「ワタシハアンラートハカンケイナイ、ワタシハオマエタチ二キョウミガアル、オマエタチガシヨウトシテイルコトニキョウミガアル、コレカラドンナヘンカガオキルノカ、キョウミガアル」

「……何なんですか、あなたは、何が目的なんです」

「ワタシハウンデイル、トウノムカシニウンダンダ、ダカラヒマツブシヲスル、オマエタチニツキマトウコトニシタ」

 ストーカー宣言いただきました、なんか変なヤツからストーカー宣言いただきましたっ、ちょっとジンッ、お断りしてっ、間に合ってますってお断りしてっ、きっぱりすっぱり断ってっ。

「いえ、せっかくですがお断りします」

 良く言ったっ、ジンッ、そうよっ、ジンはノーと言える男なのっ、はいはい何でも彼んでも言うこと聞いて、鬱になったり、酒に逃げたり、家族に当たり散らす弱い男とは違うのっ、帰りなさいよっ、どっか行きなさいよっ、何かモワァッとしててきめぇぇんだよっ、消えろっ。

「子供達も怖がってますし、いや、私も怖いですからお引き取りください」

 そうよっ、怖いのよっ、見た目も声も変なくせにジンより強いっぽいとかっ、怖いのよっ、何されるか解らないわよっ、「オマエタチニツキマトウコトニシタ」じゃねぇぇよっ、マジ勘弁っ、マジ死んでほしいっ、後、ジンさん、怖いって言っちゃうのっ、そこははったりで平然としてた方が良いのではっ。

「ワタシハオマエタチヲガイスルキハナイ」

「そうですか、それは良かった。でも見た目や声が怖いのでお引き取りください」

「ン、ナンダ、ソンナコトハドウトデモナル」

 そう言うと、キモコワな白いヤツがピカッと光り、光が消えるとそこにはショタ……美幼児がいた。

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