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手遅れ36

「じゃあ、レイは転移で木の移動をお願い、オキ爺は斧で枝を切って積み重ねられる様にしてくれる」

 ギルが指示をする。

「良いわよ」

「うむ。解った」

 オキ爺は担いでいた斧で、早速、私が転移させた木の枝を落としていく、私は転移で木を次々移動させる。

「じゃあ、僕達は地盤を整えたり、オキ爺の手伝いかな」

「そうね。さ、始めましょうっ」

 皆が作業を開始する、チズが切り落とされた枝や根を集める、ギルが地面を波打つように動かし、雑草を一ヵ所にまとめる、シンジは土が露になった地面を固くしていく、コヴァルは腕を組んで見ている、うん、期待して無い、其なりの木を転移させて、十分であろう空間を確保した私は、ギル達を手伝って木材置き場を完成させる。

「じゃあ、運ぼうか」

「私に任せて」

 私は、枝と根が切り落とされた木を、転移で積み上げていく、途中、上手く積み上がらずに崩れて、ギルが下敷きになりそうになったけど、ギルは「うわあぁっ」と華麗に交わし、事なきを得る、流石はギル、咄嗟のアクシデントにも見事な対応、私の未来の夫なだけはあるわっ、ギルは優しいもの、未来の嫁である私の失敗を笑って許してくれる、私を不機嫌そうな顔で睨んでいるなんて事は無い、私はギルの顔を見ないようにして、ギルから逃げる様に移動して、オキ爺のところに行く。

「まったくっ、レイは危なっかしいよっ」

「うん。レイちゃんはちょっとぬけているね」

 何か聞こえた様な気がするが、気のせいよね、出来る女ことレイちゃんがディスられる訳がない、気のせいね。


「オキ爺。ちょっと杭を造ってくれないかしら」

「ん、あぁ、良いよ、長さや太さ、本数はどうするんじゃ」

「そうね、木材が転がらない様にする杭だから、それに耐えられるくらいのを、六本くらいかしらね」

「ふむ。ちょっと待っておるんじゃよ」

 オキ爺は身体強化の理術を使って、ササッと木を斧で切って、杭を造ってくれた。

「これで良いかのう」

「うん。有難う、オキ爺」

「うむ」

オキ爺は微笑み、作業に戻る。

 さて、私は索敵様のお力で周りを認識する、ギル達が崩れた木を積み上げている、また崩れないように、先っぽと根元を逆にしたり、太く大きいのを下にしたり、色々工夫しながら積み上げている、私は、ギル達が積み上げている奥の地面に、転移で杭を挿すために、土を杭の分だけ森に転移させ、空いた三つの穴に転移で杭を挿す、これで後ろに崩れる事は無い。

「奥に杭を挿したわよ、手前にも挿すからちょっと作業を止めてくれるかしら」

 ギル達は無言で作業を止めて私を見る、なんか冷たい、「有難うっ、レイ、愛してるっ、好き好き大好きだよっ」とか「流石はレイちゃん、出来る女は違うねっ、ギルが羨ましいよ、こんなに良いお嫁さんをもらえるんだから」とかないのかしら、きっと作業で疲れてしまって口を利く余裕がないのね、そんなに疲れているなら、ボケッと突っ立ってるコヴァルに回復してもらえば良いのに。

「じゃあ、オキ爺達を手伝おうか」

「そうだね」

 ギル達はオキ爺達を手伝いに行ってしまう、これはアレねっ、転移を使える私の邪魔になると思って気を利かせてくれたのね、そうよねっ、決して私と作業すると何か危険な目に遭うから私を避けたって事ではないのよねっ、私は木を転移で積み上げる、ギル達は楽しそうに会話し、笑いながら作業している 、私は疲れたのかしら、目から汗をかく、決して疎外感から涙を流している訳ではない、私は一人孤独に木を積み上げ続ける。

「ただいま戻りました。おっ、結構進んでますね」

 ジンが転移で帰って来た、ギル達がお帰りの言葉を掛けつつ集まって行く、私は汗を拭い、笑顔で話し掛ける。

「もう用事は終わったの」

「ええ。終わりました、後は皆に付き合いますよ」

「ジンさんっ、どうですかっ、立派な資材置き場が出来ましたよっ、明日からは村造り開始ですっ」

 何をしてきたのか聞こうと思っていたら、シンジがジンに報告する、うるさいし暑苦しいわっ。

「ええ、立派ですね。どうしますか、明日に備えて今日はもう帰りますか」

 皆で話し合い、転移させた木を全部積み上げて、木を加工する場所を造ってから帰る事に決めた、ジンやコヴァルに回復してもらいながら作業を続け、もう終わると言う所でソイツは現れた。

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