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手遅れ34

 さて、今日の訓練は何をするのかしら、私達は訓練所に移動済み、オキ爺は農作業をしている、午後からは一緒に村を開発する予定。

「では。昨日の続きをしましょう、レイとコヴァルは転移、ギル、シンジ、チズは、索敵を練習して下さい」

 各自返事をして練習を開始する、私はギルを覗いたり、おパンツ様を保護する事無く、小石を転移させる、索敵様と転移様のお力で自由自在に小石を転移させる。

「二人はもう、完全に転移を使いこなせていますね」

 ま、コヴァルはエルフだし、私は優秀だから、当然ね。

「じゃあ、次は、自分を転移させて下さい」

「えっ、自分をって、ジンを、それとも私を」

「あぁ。自分を、です」

 ジンは自分の胸に手を当てて言う。

「大丈夫かしら、失敗して、ジンがどっか行っちゃったりしないかしら」

 いきなり人じゃなくて、獣とかで練習してからの方が良いような気がするわ。

「心配しなくても良いですよ、小石と同じ要領ですれば大丈夫、失敗しませんよ、じゃあ、コヴァルからやって見て下さい」

 コヴァルは無言で頷く、大丈夫かしら、私は少し不安に思いながらコヴァルとジンを見る、おおっ、ジンが一瞬で横に数メートルー転移した、成功ねっ、コヴァルは続けて何回かジンを転移させると、今度は自分で転移しだした。

「うん。コヴァルはもう大丈夫ですね、じゃあ。レイ。やって見てください」

 コヴァルは転移で何処かに行った、羨ましくなんか無い、私も直ぐ出来る様になるのだからっ。

「やるわよ」

「ええ。どうぞ」

 全く緊張感が無い様子でジンが言う、信頼してくれているのよね、私は集中する、索敵様のお力で周囲を完全に認識する、そしてジンを、アソコを認識しない程度に深く認識する、後は移動、ジンが数メートルー転移する想像をする、石を転移するのと変わらない、集中、ジンが数メートルー転移する。

「出来たわっ」

「レイも出来ましたね、では同じ要領で自分を転移させて見てください」

 ジンは微笑みながら言う、今度は私を転移させろって事ね、大丈夫問題無いわっ、行くわよっ、私は問題無く転移をする、おおっ、これは便利ね、流石は転移様、これは色々な可能性が拡がったわっ、私はジンの前に転移で戻る。

「出来たわ」

 私は嬉しくて笑顔になる、これで予定通り、ギルを管理出来る。

「えっと。駄目ですからね、大丈夫ですよね、もう人に迷惑を掛ける様に理術は使わないんですよね、悪い事に使わないって昨日確認しましたよねっ、何だか悪い笑顔の様に自分には見えるのですが」

 何を言っているのかしら、私が悪い事に理術使うわけ無いじゃないの、私はギルと愛を育む為に理術を使うのよ、それに私の笑顔が悪い笑顔に見えるって、ジンは目が悪いのね、眼鏡でも造れば良いんだわ、何、嫉妬かしら、私がギルしか相手にしないのが気に食わなくて、仲を引き裂こうと言うのかしら 、手に入らないなら壊してしまえ、みたいな感じかしら、私の外見を扱き下ろして自信を無くさせ、私からギルと距離をとる様に仕向ける気かしら、なんと言う小物っぷりっ、セコいわっ、病んでるわっ、私が好きなら好きって男らしく言えば良いじゃないっ、お断りするけど、私とギルのお似合いっぷりを見て、学んで、新しい恋を探せば良いのよっ、大丈夫、ジンならきっと素敵な相手が見つかるわよ。

「何だか不快です、何ですか、今度は人を見下す様に見て」

「見下してなんか無いわよ、そうだ。ジン。図書室の本をもっと増やしてくれないかしら」

「何故ですか」

「それは私が真・神賢者レイちゃんに為る為に決まっているでしょう」

「いや知りませんよ、何ですか真・神賢者って」

「ん、解らないのジン。索敵様で図書室の本を認識する事で、一時的に知識量を増やすのよ、其に因り神賢者レイちゃんが降臨するんじゃない、今の図書室では神賢者レイちゃんね、ジンの知識を全て本にして認識する事で、真・神賢者レイちゃんが爆誕するのよっ、だから早くやって、本増やして」

「……レイ。それは勝手に理術を、新しい理術を私に許可を得ずに試した、そういう事ですか」

 不味いっ、何か怒られそうだわっ。

「違うわよっ、これは索敵様でしょうっ、索敵様のお力を本を認識する事に使っただけで、新しい理術を勝手に開発した訳じゃないわよっ、そうでしょうっ、私は悪くないわっ、約束は破ってないわよっ」

「……そう、ですね。これは索敵の使い方の一つですね、でも前に言いましたが、勝手に理術を開発するのと、図書室の知識で勝手に色々開発するのは駄目ですからね、危険ですし面倒な事になりますから」

 フゥー、良かった、お咎め無しね、ジンは怒ると怖いわ、本当に殺される気がするもの。

「解っているわよ。でも、ならなんで図書室の本を増やしたりしたの、知識を使っちゃ駄目なんでしょう」

 ジンは少し寂しそうな顔で言う。

「それは、万が一に備えているからですよ、私が死ぬ事があるかも知れません、その時は本の知識を正しく使って私の意志を継いでほしい、まぁ、面倒なら焼いてしまうなりしてください」

 ジンが死ぬ事なんてあるのかしら、初めて会った時から全く老けていない、この自称アフラー様の僕が。

「ま、そんな事無いでしょうけどね、一応覚えておくわ、意志を継ぐなり燃やすなりしろって言ってたって」

「ええ。そうして下さい、本は後で増やしておきます、じゃあ、訓練を続けますか」

「何をするの」

「索敵の訓練をしてください、範囲を拡げる訓練を」

「ん、解ったわ」

「あ、後、索敵は飽く迄索敵として使って下さい」

「えっ、どう言うこと、神賢者レイちゃんになっちゃ駄目って事」

「いや、神賢者は知りませんが、別に知識を勝手に開発に使わなければ構いませんよ」

 ん、じゃあ、何を禁止しようとしているのかしら、私は首を傾げる。

「まぁ、今は範囲を拡げる事を重視して下さい、範囲が拡がれば、どんな遠い所に居ても、神賢者とやらになれますよ」

「それは良いわねっ」

 なんか怪しい、索敵様には、まだ何か秘密があるのかしら、ま、余り深く考えるのは止めましょう、ジンに怒られる事に為るかも知れない、私は索敵様の範囲を拡げる訓練に集中する。

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