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手遅れ26

 さて、マツターケは大分減ってるけど、ギルが食べたがってた、マツターケご飯と、もう一品くらいは作れるかしら。

「ギル。マツターケご飯と後一品、何か食べたいのはある」

 私はマツターケの石突きを、理術で切り落としながら聞いてみる。

「僕はマツターケご飯があれば良いよ、レイが食べたいのを作れば良いんじゃない」

 ギルは人数分の米を釜に入れ、理術で水を出し、研ぎながら答える、そうねぇ、何が良いかしら。

「土瓶蒸しなんか良いんじゃないかのう」

 オキ爺が勝手口から皿や調味料を持って入って来る、そうね、そうしましょうか。

「土瓶に分けるの面倒だから鍋で作るわね、鍋なら一つで済むもの」

「なんじゃっ、それではマツターケの香りが逃げるじゃろうっ、皆で鍋を突っつくんじゃなく、土瓶で香りを閉じ込めるのが肝じゃろう、土瓶からお猪口に注いで、マツターケの香りを楽しみ、マツターケの出汁が出た汁をチビチビやるのが土瓶蒸しじゃろう、スダーチを絞ったりするのもいいのう、それで土瓶の蓋を開けてじゃよ、マツターケやハーモなんかをつまんでじゃよ、また汁を飲んだり、ニポーン酒を飲んだりしたら最高じゃよ」

 マツターケを沢山つまみ食いしたのにまだ欲しがりますか、妥協しませんね、マツターケに関して、オキ爺さんは、土瓶蒸しを想像するのを止めて下さい、目を閉じて口を半開きにするのを止めて下さい、涎が垂れますよ。

「解ったわよ、オキ爺には土瓶で出すわ、それで良いでしょ、後、ハーモは無いから、ニワトーリの胸肉か何かを入れるわよ」

「そうか、そうか、それなら良いんじゃないかのう、いや、皆の分も土瓶で出すほうが良いとは思うがのう、そうか、そうか、儂のが土瓶ならそれで良いんじゃないかのう、面倒なら仕方ないのう、儂だけ土瓶でも仕方ない、仕方ないのう」

 オキ爺は一人納得して台所を出ていく、いや、オキ爺さん、手伝ってくれないんですか、あなた暇ですよね、使った皿も洗わないんですね、そうですか。

「ははっ。オキ爺は本当にマツターケが好きだね」

 ギルは釜に蓋をのせて竈に置く。

「そうね。何だか駄目な老人になるわよね」

 私はマツターケを軽く洗って、大きな氷で冷している冷蔵庫からニワトーリの肉を取り出し、下拵えをしていく。

「ははっ、そうだね、駄目な老人になるねオキ爺は、マツターケの事になると」

 ギルは竈に理術の火を着ける、米が美味しく炊ける火力、時間で想像してある筈、もう、皆これくらいは失敗する事無く出来る、私達は仲良く、楽しく会話しながら料理を終える、今日はマツターケご飯とマツターケの鍋、オキ爺は土瓶蒸しね、後はダイコーンを煮て味噌を掛けたのと、カツーオ節を掛けた冷奴とサラダ、サラダは残り物の野菜を適当に入れて、自家製ゴーマ垂れを掛けたもの、食堂に料理を運んで行く、オキ爺は既に晩酌セットを卓に置いて待っていた、ま、良いわ、まだ始めてない様だし、料理を運んでいると皆が帰ってきた。

「ただいま」

「ただいまー」

「ただいま戻りました」

「お帰りなさい」

「おお、お帰りお帰り」

「今日はマツターケご飯だね、美味しそう」

「ごめんね、夕御飯作るの手伝わないで。私も運ぶね」

 チズ以外はとっとと席に着く、これよ、この気配り、気遣いが出来ない駄目な男が多いんじゃないのかしら世の中には、か弱い少女が料理を運んでいるのに手伝わない駄目な男、寧ろ早くしろと催促する駄目な男、其の点私のギルは違うわよね、今日は最初から手伝ってくれていたけど、もし仮に、今ギルが帰って来たとしたら絶対に運ぶのを手伝ってくれていたわ、私のギルは優しいのよっ、気遣いが出来るのっ、違うのよっ、特にコヴァルっ、お前みたいに無言で入って来て無言で席に着く様な奴とは比べるのも烏滸がましいわっ、お前怖いのよっ、いつの間にか近くに居たりして吃驚するのよっ、ただいまくらい言いなさいよっ。

「良いわ、チズも座ってて、そんな気遣い、してくれなくても良いわよ、もう少しで運び終るし」

 気遣いを大きめに言ってみたけど男共は特にこちらを見るわけでもなく、卓の上の料理を見たり、会話したりしている、良いのよ、私にはギルがいる、貴方達がモテる事無く一生独身だったとしても知った事ではないわ、折角、私がモテる男になれる切っ掛け、気遣いが足りてませんよと、遠回しに指摘してあげたのに気付かないなんて、一生、深奥な、繊細な気遣いや思いやりの精神を持たずに、薄っぺらく大雑把に生きて行けば良いんだわ。

「解った。じゃあお言葉に甘えるね」

 チズも席に着く、もう食事の用意が終わるけど、来ないわね。

「来たね、クロ。はい、ご飯だよ」

 ギルがクロのご飯を床に置き席に着く、私も座る、じゃあ、食べましょうか。

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