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手遅れ24

 ギルは部屋かしら、階段を上り扉の前に着く、さて、どうしましょう、ギルはおパンツ様を履いて部屋にいる筈、まだ怒ってる筈よね、私の話を聞いてくれるかしら、もう少し時間をおいた方が良いのかしら、でもギルは私を変態だと思っている、覗きや下着の窃盗をする性犯罪者だと思っているのよね、違うのに、覗きや下着が目的なんじゃないのっ、ギルの身体や下着が目的なのよっ、愛なのよっ、ギルの身体を見たいし触れたいっ、ギルのおパンツ様はご褒美なのよっ、ギルのって事が重要なのっ、ギルの全てが欲しいのっ、ギル以外はどうでも良いのっ、でもこれは上級者の考えなのよね、初級者には理解不能、愛の上級者と初級者の間には幾つかの扉があるの、私は愛の上級者でギルはまだ愛の初級者、扉がある事にさえ気付いていない初級者、もっと精進して欲しいわっ、でも、私も悪い、ギルに嫌われるのが怖くて本当の自分を隠していた、ギルは私を楚楚とした、可憐な少女と認識してしまった、ある意味ギルを騙していた事になるわね、愛するギルをっ、ごめんなさいギル、ギルはそのせいで私に幻想を、理想を見ていたのよね、そして今日、本当の私、愛の上級者である私を知ってしまった、怒るのも混乱するのも当然ね、今、どうするのが最善かしら、初級者は上級者を理解出来ない、変態だと思ってしまう、今日の内に仲直りは無理かしら、時間を掛けるしかないかしら、私は初級的愛だけでは満足出来ないわ、愛の抑圧はしたくない、ギルを愛の上級者に育てあげるしかない、あれをやるしかない、私は扉をノックする。

「ギル。居るかしら、話をしたいの」

 ふむ、無視ですか、そうですか。

「ギル。入るわよ」

 扉を開け部屋に入る、ギルは椅子に座って私を睨んでいる。

「勝手に入って来るなよ」

 ギルが怒ってるわっ、睨んでるっ、また私でビクンビクンしちゃってるのねっ、良いわっ、もっと打ち付けてっ、パンパンゴリゴリ無茶苦茶にしてっ、もっと私で感情を爆発させて良いのよっ。

「用が無いなら出ていけよ」

 いけないいけない、上級プレイをしている場合ではないわ。

「ギル。私はギルの事が好き、愛しているの」

「なっ、なんだよ。なんだよっ」

 動揺してるギル、可愛いわ、このまま上手く上級者への道に誘導するのよっ。

「ギルが好きで、好き過ぎて変な行動をしてしまったの、私達は婚約してるんだし、夫婦はお互いの裸を見たり、下着の洗濯をするのは当たり前の行為だと思うの」

「夫婦ならそうかも知れないけど、僕達は夫婦じゃないし、レイがしたのは一方的に、無断で見たり、盗ったりしたんだから全くの別物、只の犯罪行為だよね」

 ふむ、全く以て正論ね、そうです、私が犯罪者です、違う違うっ、諭されてどうするのっ、私が丸め込むのっ、言いくるめるのよっ。

「ギルッ」

「なっ、なんだよっ」

「私はギルが好きなのっ、犯罪行為をも思わずしてしまうくらいギルが好きなのっ、愛しているのっ」

「いや、犯罪」

「解ってるわっ、解っていてもやってしまったのっ、悪い事だって解っていたけどやってしまったのっ、ごめんなさいっ、本当に悪い事をしたと思っているわっ、でも解って欲しいのっ、好意に基づく行動だったって、ギルをもっと知りたくてしてしまったの、愛故の、好意の行為なの」

 私、上手い事言ったかしら、好意の行為。

「何かふざけてない」

「ふざけてないわっ、ギル、見てっ」

「なっ、なにしてるのっ、レイッ」

 私はストンとスカートを脱ぎ、シャツのボタンを外していく。

「ギルを一方的に見てしまったお詫びよ、ギルも私の裸を見れば対等な関係だわ」

 ギルは顔を背け、目を手で覆っている、当然顔は真っ赤。

「良いよっ、そんなの良いから服を着てっ」

 はて、あわよくば此処で一気に仲直りを通り越して大人の階段全力ダッシュをして仕舞おうと思ったのに、上手くいかないものね。

「ギル、私を見て、それで対等よね、許してくれるわよね」

「良いよっ、許すよっ、だから服を着てっ」

 よし、言質はとったわ、必勝っ、困った時の色仕掛けで仲直り成功ね、後はゆっくりギルを上級者の道に教導して行けば良いわ、私は服を着てボタンを留める。

「ギル、着たわよ」

「レイはっ、なんだよっ、何で下がスッポンポンなんだよ」

 おっと、うっかりしていたわ、パンツとスカートを履き忘れていたわ、いけないいけない、ギルったら耳まで真っ赤ね、そんなに必死に顔を背けなくて良いのに。

「ギル、下も履いたわよ」

 真っ赤な顔の儘、恐る恐るこちらを向き、目を開けるギル。

「良かった、ギルと仲直りできて」

 私は微笑む。

「レイは露出狂でもあったんだね」

 何が気に入らないのか、ギルが悪態を吐く、私が態と下半身を見せたとでも思っているのかしら、うっかりしてただけなのに、それに。

「私は露出狂じゃないわ、ギルになら、ギルにだけ見て欲しいの」

「なっ、何を言うだっ、何を言うんだよっ、レイッ」

「何と言われても、私の本心よ」

 私はギルの目をじっと見つめる。

「……そっか、僕はレイを誤解、と言うか理解しようとすらしていなかったのかな」

 ギルが悲しそうにに顔を歪める、そうね、でも私も隠していたんだからお互い様よ、上級者になれば自ずと理解出来るから心配しないで良いわ。

「さて、仲直りも出来たし、どうする、理術の訓練に戻る、私は夕御飯の用意をするわ」

 オキ爺のつまみ食いが数本で済んでるか心配だわ。

「……僕も手伝うよ」

「そう。じゃあ、一緒に行きましょう」

 ギルに手を差し出してみる、どうかしら。

「うん。行こう」

 良かった、ギルは私の手を握って歩き出す、本当に仲直り出来たわ、もうこんな失敗はしないわっ、慎重に、確実に、焦らず、法に触れずにギルと愛を育むのよっ。

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