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新手の豆まき

 つい最近のことである。『大混戦! ツイットブラザーズ』なんてゲームが発売された。最大四人まで対戦ができるテレビゲームである。

 ツイットブラザーズ、略してツイブラを入手した幽は、オフ会と称してネット上で知り合った二人と、ついでに友人の黒も巻き込んでゲーム大会を始めたのであった。


「さー、取り敢えずどんなもんか一戦やってみようか? 二人は踊り手と歌い手だけど、この手のゲームは平気?」

「おう! 全然問題ないぜ」

 幽の問いにライルが元気よく返事をした。そのとなりで無言ではあるがリツもしっかりと頷いている。二人とも、実は早くゲームをやりたくてウズウズしているようだ。

「それじゃ、ちゃっちゃとキャラ選択しちゃおっか。ステージは毎回ランダムでいくよ」

「初見なのにか?」

「初見だからこそだよ、黒。得意なステージじゃ燃えないもんね!」

 そう言って幽は手早くキャラクターを選択した。すると1Pと表示された場所に『鶴ヶ谷咲』という名前の女子高生が現れる。彼女は本を持っていて、どう考えても戦闘には向いていそうになかった。

「またお前はそんなのを……」

「いや、こういうキャラのが案外強かったりするんだよ? その証拠にほら、二人だって」

 幽が視線を向けた先にはライルとリツのキャラクターの表示がされていた。どうやらいつの間にか選んでいたらしい。ライルは『鬼灯稔』という線の細い美少年を、リツは『保健室の少年』という正に少年を選んでいた。確かに見た目だけではあまり強そうには見えなかった。

 三人のキャラクターが決まってしまっているので、黒はこれ以上口を挟まず自分のキャラクターを選ぶことにした。総勢四十名はなかなか迷うところがある。どうして三人はこんなに決めるのが早いのかと疑問に思いつつもあった。

 それから少し悩んで、幽にどつかれながら黒が選んだのは『春市エスト勇』という機関銃を構えたオッドアイの少年だった。

 そしてゲームをスタートさせると、ランダムでステージが選ばれ、よくある一般的な教室が表示されたのだった。



 画面の中を赤い液体が舞う。液体は教室中に散らばった食べ物に飛び散り、食べ物を赤く染めた。それを運悪く黒が操作していたエストが食べてしまう。

「げッ!? 回復の筈なのにダメージが!?」

「あっはー! 俺の稔のタバスコのせいだな」

「……そのタバスコ厄介だよ!」

 ライルが得意気に言うと、リツが忌々しそうに舌打ちした。そして保健室の少年を操作し、積極的にライルの稔を狙いにいく。

 タバスコをぶちまける稔もそうだが、金平糖をばら蒔いて座敷わらしを呼ぶ保健室の少年も食べ物を大事にする戦い方をしていなかった。まさかそんなものが武器になるとは思ってもいなかったので、初めて見たときは四人で爆笑したものだ。

「ぎゃああ!? 本が飛んできた!?」

 タバスコをぶちまけ続けて無双が始まり、調子に乗り初めていたライルだったが、直ぐに悲鳴をあげることになった。そう、言い出しっぺである幽の存在を忘れてはいけない。

「読書好きの武器ってやっぱり本なんだねー」

「いやいやいや、物理的な武器にはしないだろ。本は大事にしろよ」

 本をとてつもない速度で投げる女子高生こと鶴ヶ谷。弱いと思われていたが全くそうではなさそうだった。他のキャラと同じようにパンチや蹴りも繰り出すので、戦闘面についてはなんの問題もないらしい。

「……! くらえ、にごう――!!」

 本を投げて他の三人を近付けさせない鶴ヶ谷に、白熊のぬいぐるみが投げられた。保健室の少年が拾ったアイテムだ。にごうは鶴ヶ谷にぶつかると、鶴ヶ谷を強制的に布団の中に入らせて眠らせてしまう。なんとも恐ろしいアイテムだ。

 今のうちに。そう考えたリツが眠った鶴ヶ谷を狙いにいこうとする。一人だけに美味しいところを持っていかせまいと、ライルも便乗してその後を追った。すると、その三人をまとめて射撃する影が現れる。タバスコで大分ダメージを受けていたエストだ。機関銃の銃弾は貫通弾だったらしく、三人に難なくダメージを重ねていく。誰かが壁になることはなく、非常に優秀な火力のようだ。

「……あ! ツイットボール!」

 このままダメージが積もっていけば、ロクに何もできないまま終わってしまう。打開策を考えながらタバスコを撒き散らしていたライルは、画面上部に飛ぶ青い鳥を見つけた。

 この青い鳥はツイットボールと言い、一番最初に一定のダメージを与えたキャラクターが一発だけ必殺技を撃てるようになるものだ。必殺技は非常に強力で、撃てさえすれば必ず勝てるとまで言われている。ダメージが溜まりにたまった今、狙うべきはこれしかなかった。

「ツイットボールは俺のものー!!」

「いやいや、僕がもらうよ!」

 稔がタバスコを青い鳥に向けて噴射すると、布団から抜け出た鶴ヶ谷が負けじと本を投げつけ始めた。するといつの間にか三人を銃撃していたエストも機関銃を上に向けていて、保健室の少年も上に向けてお菓子を蒔いていた。その光景はまるで新手の種まきのようである。

「っしゃあ! 俺の勝ち!」

 いち早くツイットボールにダメージを与えたのは稔だった。発見が早かったのが功を奏したらしい。

 画面の中でツイットボールが割れると、画面全体が若干暗くなり、稔の目が怪しく赤く光出す。先ほどまでタバスコをぶちまけていたのとは別人のようだ。

『――鬼車ギア解放します――』

 そんなボイスが流れ、いつの間にか日本刀を構えていた稔は、動きが硬直した三人を斬り倒していく。これが必殺技だ。三人はなす術なく教室の外へ放り出され、ここでゲームが終了となった。

「ええええ、そんなのないよー!」

「もう一回だ!」

 画面がリザルトを映し始めると、幽とリツが同時に不満げな顔で言った。調子に乗ったライルは「ふはははは、返り討ちにしてやるぜ」なんて言ってニューゲームのボタンを押す。

 かくして、仁義なきゲーム大会は始まったのであった。

すぺしゃるさんくす


幽、黒……+-さん

春市エスト勇……ココさん

ライル、リツ……ツユリハさん

鬼灯稔……井鷹ゆあみさん

保健室の少年さ座敷わらし……長良川五十鈴さん

にごう……エディナさん


ありがとうございました!

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