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ドラゴンになった僕の今  作者: 龍骨埋没
1章 呼ばれるドラゴン
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7 魔女 と ドラゴン


 トオルは街長の好意に甘え、お茶に誘われていた。

 翼を折りたたみ椅子に座ってビスケットを齧る。

 焼いた粉物の香ばしさ、砂糖とバターを混ぜただけの味なのに、なんとも懐かしくサクサク食べてしまう。

 久しぶりに飲んだ気がする紅茶。ティーカップを丁寧に持ち苦味とスッキリした後味。暖かな紅茶が喉を通り抜ける感覚が人間だったときを思い出させてくれた。長々と語ったが一言で完結させるならば、


「美味しい」


 トオルは満足気に笑った。正面の街長が少したじろいだのには気づかなかった。

 街長の住居と呼ぶには、いささか慎ましやかな家は暖炉のあるリビング。大きな円形のテーブルで街長と向かい合うトオルの目に、同じく紅茶を飲む街長の姿が見えた。

 日雇い、日給の条件を提示したトオルは仕事を手早く済ませ給金を受け取った帰りに声をかけられ――というか何か仕出かさないか見張られていたらしい――現在に至る。呼ばれた意図は不明であるが、トオルは紅茶と皿に並べられたビスケットの味に尻尾を振りたくなっていた。尻尾は感情とリンクしているのか、嬉しいと振りたくなり落ち込むと下がり、怖いと股に挟んでしまいそうになっていた。


「今日は色々と、ありがとうございます」


 向かい合った街長に言えば、動揺しながらもうなずいてくれる。


「い、いや。いいんだ。それよりも本当にバイトのためだけに街へ?」


「えっと、他には日常生活品とか、家具とか、買いたいです」


「・・・・・・そ、そうなのか。力ずくで奪ったりとかは?」


「そんな酷い真似は嫌ですよ」


 ドラゴンに襲われた街。その長ともなれば気苦労も絶えなかったはず。

 密かにトオルは街長へ同情心をたかめていた。しかし街長は、まだ幾ばくかの疑念を抱いている。そのためお茶会に招いたのであるが・・・ボロを出さない。どころかお礼を言われ今では切なそうな目で見つめられている。


 街長、御年おんとし65年。

 ドラゴンの小童にお礼を言われ、同情される。

 初めての経験に妙な気分になっていた。


「それと、本は売ってます?」


「売っているよ。買って行くといい」


「はい! それと、また仕事先が欲しいんですけど」


 街長はしたたかに考える。

 このドラゴンは控えめな性格をしているし、本日の荷物運びの日雇いを実にラクラクとこなしていた。そのことから考えうるに非常に役立つ。さらに人に同情できる優しさ、悪く言えば甘さがあるのだ。


 これは、すこし給金を誤魔化しても働いてくれるだろう。


 人間らしい打算を考えつつ、街の長たる男はドラゴンを利用する道を選んだ。


「いいとも。仕事がなくなるまで働いてくれたっていいよ」


「それじゃあ、明日もよろしくお願いします」


 怖い笑みであるが、毒気がなさ過ぎる・・・・・・。

 打算ある人間の言葉に騙され無邪気に喜ぶ。街長は働きと態度によっては給金の値上げも考えてしまいそうだった。





 それから1年後。

 高校2年生。その人間の精神を持ったまま転生したトオルの内面は変わらず、外見もそう変わらないまま生活を続けているのだった。


「ふぁぁぁ」


 自宅であくび。まだ単純な文字しか学んでいないため、絵本を読んでいる。

 内容はシンデレラと桃太郎を足して割ったような姫様が妖精を3人も引き連れ、魔女と人喰い鬼を成敗しに行くものだった。

 絵本に限らず児童向けの小説くらいならば読めるのだが、大人が読むような小説は意味が解けず無理だった。


「なんか過激なお話だなぁ」


 ぽつりと呟き、4本指で目をこする。

 焦がした材木とツル。そして土粘土を熱し焼物にした天井を作った簡素な家。

 しかし過去と比べ背もたれのある椅子に独り用の小柄なテーブル。その他、日常品が置かれた家は、生活するに不自由なかった。そのためトオルは現在の生活に満足して、平穏が続けばいいな、などと願っていた。


 家の戸をノックされる。


 また街長の相談だろうか?

 瓦礫の撤去や道を塞いだ大岩などを破壊するのを手伝わされることがあった。他にも緊急の用事として隣の街から薬を取ってきてくるよう頼まれる程度に頼られているのだった。

 トオルとしてはそこそこに友好的な関係を築けていると思っている。


「どうぞ」


「失礼するぞ。おまえが人間かぶれのドラゴンか?」


「・・・どちら様です」


 トオルは怪訝な目つきになるのを堪えた。

 鋭い目つきをした、腰まで銀髪を伸ばした少女が現れた。服装はボンテージみたいな、手足の露出が多く如何わしさを感じさせる。緑色の目がこちらを睨むように観察。頭にかぶるとんがり帽子は、童話の魔女が身に付けるヤツと似ていた。


「私は宮廷魔女・・・まあ王に頼られる魔女と思っておけばいい。それにしてもプライマル・ドラゴンとは、これは都合がいい」


「はい?」


 椅子に腰掛け絵本を広げていたトオルは、いっそう訝しんだ。


「この国は反逆者の手に落ちようとしている。魔女マナリア、おまえに助力を頼みに来た」


 状況がつかめない。

 トオルは目をしばたかせ、絵本を閉じた。







話が進んでいきます。

白衣&幼女も後に出てきますよー。


それにしても展開が・・・遅いですね。

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