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ドラゴンになった僕の今  作者: 龍骨埋没
1章 呼ばれるドラゴン
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5 ドラゴン と 我が家

 トオルは大空を存分に飛び回った後に、たくさんの食事にありついた。

 巣ごもりを経て鍛えた体は疲れを知らず、まだまだ飛びたい気持ちで一杯だった。

 時間を重ねるごとに水晶のような煌めきを帯びてきた鱗は、太陽を受けると白っぽく光っていた。

 よく熟れた果実に小型の草食獣を2頭を狩り、胃袋に収めた。卵のカラや水晶は味気ない栄養食品のようなものであったから、味付けのされていない肉や発酵しかけた甘すぎる果実も、美味く感じ尾をふり喜んでしまった。

 泉の水をたっぷり飲んでから、また飛んでいる。かれこれ相当の時間を飛行している気がするものの目的地がないため降りる気になれずにいた。


「これからどこに行こうかなぁ」


 何をするにしても拠点が必要だ。

 ドラゴンの肉体は低ランクの魔物を寄せ付けないし、安全な地域では脅威らしい脅威も存在しない。もちろんドラゴンにすら手の余る存在はいるものの、気にするほどのものでもなかった。

 すでに夕暮れは落ち、夜明けが過ぎている。

 あたりはすっかり明るくなり、飛び回るトオルの眼下にあるのは平和で長閑のどかな風景そのものである。どう考えても拠点を作らず適当に回ってもよいのであったが、人間であった習慣が捨てきれず帰る場所を求めているのだ。


「そうだ、家を作ろう!」


 外界と自分の領域を分ける仕切り、我が家が欲しい。

 トオルは森に降りると、両足で着地。ついで材木を得るため木を腕でへし折るべく腕に力を入れる。


「やあ!」


 掛け声一発! 根本を破壊された木々はメキメキ音を立てながら倒れる。

 その木の皮をはぎ、爪で削り板状にする。表面を弱いプラズマブレスでほんのり焦がす。このブレスが防腐と防水に防虫の処置になるのだ。


「これでよし!」


 満足気にうなずき、材木を地面に敷いて床にする。しかし並べただけでは安定しない。試しに足を乗せ体重を込めれば簡単に移動する。だから植物のツタで材木を巻き、イカダのように組み立てる。ついで床と同じ方法で壁を作り、天井と壁とをツルでガッチリ固定する。


「次は・・・屋根だね」


 家は雨風をしのげてこそ。

 土粘土を探し出しかき集め、ペタペタと屋根に乗せ固めていく。手を土くさくしながら鼻歌交じりで作業する。大人数で作業しなくてはイケないことを独りで簡単にできる。それも疲れない。


「ふ、くふふ、くふふふふ」


 変な笑みがこぼれる。

 自分の体がこんなにも頼もしく思えることは、今までになかった。

 そのためトオルは快感に酔いしれたみたいに口を開き笑う。


「あとは・・・すうううう!!」


 軽く飛び、息を吸い込む。

 ドラゴンの口先が狙うのは、土粘土を乗せた屋根。


 ゴォオオ!


 加減したつもりだが、少々ながら火力が強くて、粘土は黒煙をあげていた。

 不格好ながらも我が家が完成。ドアを作るのを忘れていたから、せっせと壁の位置に穴を開け、枝を組みツルで片側を固定する。鍵はないが、ドアの取り付けに成功する。


「完成!」


 縦横10メートル。天井をやや高めに作ったが、内部に入ると高すぎたと反省する。

 けれど作りなおす気になど慣れない。今度は生活用品をどこかで買い出しに行くとしよう。

 トオルはこれからの生活に想いをたかぶらせて、ニヤニヤと裂けるような笑みになる。


「くふふ・・・ふふふふふ・・・・・・」


 暗い室内。床で寝転がり自分で焦がした木の香りを嗅いでいた。

 興奮が冷めやらず、けれど今日は眠る。ちょっとばかりはしゃぎすぎたのか、今になって疲れが込み上げてきていた。


「ふぁぁ・・・おやすみなさい」


 だれに言うでもなく挨拶をし、トオルは目をつむり就寝するのだった。



家造り。

それは通常ならば困難な作業の連続です。

トオルは手抜き(家造りの知識ない)、単純作業と力技で・・・見てくれの悪い我が家が完成しました。

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