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ドラゴンになった僕の今  作者: 龍骨埋没
3章 禁書をめぐるドラゴン
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2 ドラゴンの3分クッキング


 料理に必要な所要時間――――3分間。

 つまり180秒のなかで作業が完了してしまったのであった。

 さすがに早すぎるためトオルはどうすればいいか悩んだ。

 下ごしらえをした程度の生肉を出したと疑われそうな気がしたから。


(な、なんでこんなに早くできちゃったんだろう?)


 常温にしているシカの肉をステーキサイズに爪で切りわけ塩と胡椒で味付けし、揉み込んだ。

 本当はここで時間を待ったほうが良いらしいのだが、トオルは迂闊にもレシピ本を読み飛ばしてしまっていた。釜に薪を入れ炎を使う能力で、ちょうどよい火加減をつくりあげる。ただしドラゴンは炎に強いため、本人はちょうどよいと思ったが実際は超強火。肉を炒めればフライパンに焦げ付くほどの温度。


「よし!」


 そのときのトオルは自分の両手を叩き合わせ意気込んでいた。

 揉んで下味をつけた肉を熱したフライパンに乗せるまでが1分。

 ピーラーがないため野菜の皮を爪で剥き、包丁で切断する。

 キャベツ、ニンジン、ジャガイモ、タマネギといった在り来りな野菜を爪で粉々に刻む。ついで隣の釜に水を張った鍋をおき一口サイズの鶏肉を入れ塩や香辛料で味付ける。沸騰した鍋を見下ろしていた頃には2分が過ぎていた。

 そして待つこと1分。

 すべての料理に火が通っていた。


「・・・・・・なんでぇ?」


 首を傾げてトオルは慌てた。

 別に不思議なコトはなにもないのであるが、異世界の常識を知らなかった。普通の鍋や調理器具は売れなくなってきた御時世、しのぎを削りあい職人たちが腕を競い合って完成した鍋、フライパンは火加減に応じて材料に火の通り具合がよくなるようになっているのだった。

 要するにトオルの使った火力でも食材は焦げにくく瞬間的に火が通る。

 そのため人間離れした速度で下ごしらえを終え、人間離れした火力で調理したから即座に完成してしまっていた。地球の料理速度しかしらないトオルは自分がドラゴンだから特別なコトをしたのだと勘違いし長めの首を右往左往させていた。


「な、なんか変だよ。これ大丈夫なのかな? あ、美味しい」


 試しにスプーンで味見してみれば、ドラゴンの舌は満足してくれていた。

 問題はマナリアの、魔女の舌を唸らせてくれるか、ということである。

 悪い意味で唸らせるのは誰にでも出来るが、美味しいと思わせるのは中々に難しい。


「不安だ」


 胃が痛くなってきたが、好意を寄せた相手が料理を食べて美味しいと言ってくれれば、嬉しくなれるはずだ。スープとステーキを皿と椀によそい、お盆に乗せる。ついでナイフ、フォーク、スプーンを並べてマナリアの座る椅子の前に置いた。


「お待たせ」


「・・・・・・偉く早いな」


 不審げなマナリアに、トオルは誤魔化す。


「実は、途中までつくってたから、ほとんど温めるだけだったんだ」


「なるほど。そういうことだったのか」


 マナリアはあっさり信じてくれた。

 それから軽い祈りを捧げてから二人で食事をはじめる。

 魔女は肉を食べて、ふぅむ、と唸り出していた。


「家庭的な味だな。こういう味は好ましいぞ」


「よ、よかった。口にあったんだ」


「このスープも、小さい頃によく食べていた香辛料を思い出すよ。ローリエだったか」


 それからマナリアはしみじみとした様子で料理を食べていた。

 どことなく悲しげというか、切なげな雰囲気を放っているので幼少期の思い出に浸っているらしい。


(マナリアの小さいころって・・・・・・何百年前なんだろう?)


 少なくとも100年ではたりないはずだ。


(やっぱり何かあったのかな? 色々ありそうだけど、想像がつかないや)


 トオルはナイフを使い肉を切り分け口に運ぶ。

 塩味の混ざった肉汁が口に溢れ、遅れてピリピリと胡椒の刺激が舌で踊る。自分からすれば、頑張ったけど手抜きと言わざるを得ない料理だった。けれど満足してもらえたならば良い気がする。

 マナリアは食べ終わるまで、なんだかウワの空だった。




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