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ドラゴンになった僕の今  作者: 龍骨埋没
1章 呼ばれるドラゴン
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20 準備 と 対策


 トオルは傍観しロイドはその後ろに隠れている。

 鼻先を爪で掻き、雄叫びをあげる国王の兵士たちを眺めていた。人数は100人強といったくらいだろうか、護衛に人を使っていたにしても総数は少ない。対してアイゼンの私兵は50人程度。人数は何分の1といった程度しか居なさそうだった。


(なんでだろ。もっと人員を使っても良いと思うんだけど)


 事情があるのかもしれないが、深くは考えないようにしよう。

 ここは争いの場でありドラゴンだからといって油断は禁物。そう気を引き締める。


「トオル! 一先ずロイドを守ってやってくれ! そいつ独りでは危なっかしい」


 マナリアの叫びに首肯する。

 そうしている内にアイゼンの私兵。武器を持たぬ10名ほどが仲間をかばうように前に出てきた。やがて国王軍が10名に向かい雪崩れ込んでいく。


「マナリア、貴様は戦いに参加しないのか?」


 唐突に不気味な笑みになるアイゼンの表情が、トオルには引っかかった。


「魔法を使える者を連れて来なかっただろう? 魔法が使えない弱き相手に、魔法を使う魔女はいない。それに陛下は穏便に済ませよ命令された。ならば兵に兵を当てるのが定石というものだ。強すぎる力ではいじめになってしまう」


「なるほどなぁ」


 ドゴン!


 轟音が鳴り響きトオルは目を疑った。

 マナリアが引き連れてきた兵士たちが、投げ捨てられた石さながらに宙を舞っている。

 魔力の気配は少しもない。魔法でなく違う何かで飛ばされたことになるのだ。


「・・・・・・」


 自信たっぷりだったマナリアは、真顔になっている。

 特攻した兵士の半数近くが10名ほどの兵士に、それも素手で吹き飛ばされてしまっていた。

 吹き飛ばされた瓦礫が落ちるかのような音を立て、国王に忠実な兵士たちは落下する。

 それからうめき声をあげ、苦しみ出していた。重りを身につけ、勢い良く地面にぶつかったのだ。衝撃も相当なものだろう。


「確かにそうだな、弱いものいじめになってしまう」


 10人の兵士は武器を持たない。

 残りの兵士はすべてチェーンソーのような武器で武装しているが、10人の壁は100人掛かりの攻撃を物ともしせずに跳ね返した。1人が10人を押し返す。あまりに怪力すぎる。


「・・・なんだそいつらは? 魔法を使わず、特別な道具も使わず、そんな怪力を発揮できるものか、外の連中は、ここまで強くなかったぞ」


 マナリアは懐疑的な視線でアイゼンの私兵を眺める。


「ふん。何も考えず何の策もなく挑むとでも思っているのか。だとしたらとんだ間抜けだな」


 ここにきてアイゼンは愉快で仕方ないと微笑んでいるのだった。

 トオルは背後のロイドが翼のつけ根にしがみつき怯えているので同情していたが、それよりも気になったのは鎧の背後だ。陽炎が浮かんでいる。


(排熱してる? もしかして、あの分厚い装甲の内側は・・・)


 簡単な推測をしたが、もしかしたらありえるかもしれない。チェーンソーがあるのだから。

 少人数に仲間が吹き飛ばされたコトがショックだったのだろう、マナリアの兵士はまだ残っていたが精神的な痛手で逃げ腰になっていた。しかし、それでもまた特攻を仕掛けようとするが――


「総員! 下がれ。私がやる」


 マナリアは魔女の帽子を片手でつまんで前に出る。


「しかしマナリアさま」


「我々はまだ戦えます」


「問題はありません」


 兵士の数名がまだ戦えると訴え出る。

 マナリアはそれを一瞥し、言葉を放つ。


「下がれ。あいつらは何か妙だ。表の兵士は貧弱で犠牲が出ないと踏んでいたが、やつらはそうではないらしい」


「その通り。準備してきたのだよ。国王の兵士が何人こようがひねりつぶせるように。そしてマナリアの対策も完了している!」


「大口を叩くのは、まだ早いな!」


 マナリアの腕が緑色に輝いた。


「我! 終焉の大地に挑みし魔女なり」


 詠唱をはじめるマナリアの様子に、トオルは興奮を禁じ得ない。

 ゲームやマンガでしか見たこと無い本物の魔女の行動を凝視していた。

 背後のロイドはゴブレッドの酒をあおり、喉を潤している。


「やっちまえマナリア!」


 ロイドが声をかけ、マナリアは詠唱を完了させる。


「妖しき新緑の光よ! 魔の加護により、敵を薙ぎ払うべし!」


 マナリアの右手を覆った緑の光が、太い光線となり発射された。

 10人中5人を薙ぎ払い、吹き飛ばした緑の光。それがアイゼンに向かった瞬間だった。


「言っただろうが! 耳がないのか!?」


 緑の光線がアイゼンを貫く寸前に、見た目よりも俊敏な動きで妖しく光る緑色を回避した。それは城の壁に触れると、粒子を散らし辺りを吹き飛ばす。緑色の爆発が、トオルの目を眩ませるようだった。


(あの動き・・・なんか不自然だ)


 体よりも鎧が先に動いているように見えた。

 次にアイゼンは左手の円形盾(ラウンド・シールド)を構えてマナリアに向ける。


「対策は済んでいるとな!」


 アイゼンの盾から放たれたのは、火薬のような粉末だった。

 灰色のそれがマナリアに勢い良く吹きつけられるが、マナリアは難なく防御陣を展開した。

 現れたのは光の球体。その内側にマナリアは腕組みしながら片目をつむった。


「そんな粉で私がどうこうできるとでも――――ん?」


 光の球体。魔法の防御の内側に、粉が侵入していた。



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