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ドラゴンになった僕の今  作者: 龍骨埋没
1章 呼ばれるドラゴン
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12 衣装 と 友達

 さまざまな不安な要素があるなかで、トオルは衣服を着させられることになったが。

 ここで少々ながら問題が生じてしまっていた。2足歩行をし人間かぶれな生活を起こっていようと体型が変わるわけではない。翼を通せる服はないし、尻尾をそのままに履けるズボンも存在しない。


「うーむ、これしかないか」


 マナリアは片手で帽子をおさえていた。

 賢そうな彼女であるが服装を選ぶ際に翼や尻尾の問題を失念していたらしい。かくいうトオルもドラゴンの体になってから時間が経過しているのに人間感覚で服を着ようとしていたのだから笑うしかない。


「こうすれば戦士風に見えるか。いや、むしろ、ドラゴンは気品より力強さが大事だろう。これがいいのかもしれないな」


 やや自分に言い聞かせているようであった。その表情はまだ悩ましげであるから間違いない。

 マナリアが気難しそうな顔をするときは、だいたい帽子に触れている。考える際の癖らしいかった。


「なかなか様になっているぞ。私は好きだな」


「そ、そうかな? じゃあ、着ておくよ」


 自分的には微妙な格好であるものの、美人に褒められるのは嬉しい。

 服装を褒められるなど初めてかもしれない。口がにやけてしまう。


「服が壊れても弁償を気にする必要はないからな」


「うん? 壊さないよ」


「どうなるかな。今日はどうせ、アイゼンが仕出かす。魔法で攻撃されれば、トオルは平気でも着ているモノは無事じゃすまん」


(いま、初めてマナリアに名前を呼ばれたんじゃないかな)


 トオルは余計にニヤニヤしてしまい、口を両手でおさえる。


「なんだ? どうした」


「なんでもないよ・・・僕が来たのに攻撃してくるかな?」


「するだろうな。計画を変更するなら、あの場で多少なりとも動揺するだろうが。アイゼンのおまえを見た時の目。見下していただろう。察するに『せいぜい足掻いてみせろ』と言いたかったのだろうな。もしやドラゴンスレイヤーでも雇っているのかもしれん」


「え!?」


 トオルは鏡をのぞきこんだまま口に当てた手を首に移動させる。

 街長が言っていた、ドラゴンを斬首にしたドラゴンスレイヤーの存在。


「まあ、ドラゴンが襲ってきた全盛期など過ぎ去って久しいから、どうせボンクラだ。本当にいるかどうかもわからないからな」


「ねえマナリア、驚かさないでよ・・・」


「ん? ウヒヒヒ、いま、初めて名前を呼ばなかったか? やっと心を開いてくれたか」


「・・・話を逸らさないでよ」


 にこやかなマナリアは素直に喜んでいる。


「ドラゴンの友達はいないからな、トオルと仲良くなれば第一号となるんだ。嬉しくてな」


「と、友達」


「いやか?」


「ううん・・・実は僕ね、友達がいなくてさ」


 トオルには悩みがある。


 心を置ける友達がひとりも出来ていない。


 理由は単純明快で、街の人々はトオルをドラゴンとしか見ていない。そのため『ドラゴンとは友達になれない』と考えているものも多いのだろう。さらに加えて人間を超える身体能力に、実力を持っている。だから『うっかり殺されかねない』とトオルに子供を近づけようとしない親も多々いる。

 口論になり喧嘩をするのは人間同士でも数多いのに、ドラゴンと人間では更に増えかねない、喧嘩の機会が多ければそれだけ『大怪我ないし殺害』される可能性も否定出来ない。というのが街人たちの見解であるらしいのだ。無論、トオル本人としてはショックだった。


(でも・・・仕方ないよね)


 鏡に映る自分の顔を眺めれば・・・やはり人間を食べそうな顔をしている。

 さらに街は今から4年と半年前にドラゴンの爪にかかり、20数人と建物が30程も破壊されてしまったそうだ。そんな恐ろしい目にあえば、嫌でもドラゴンをけむたがるのも理解できてしまう。


(僕だって・・・人間のままならドラゴンは怖いもの)


 自分の実力がどこまで高いのかは分からないが、少なくとも一般人とは比べ物にならない。

 空を長々と高々と飛べるし、プラズマを吹き出せる。その他にも色々なスキルを自分なりに会得しているのだから、正直なところ、友達になろうっていうのは無理だろう。


「気にすることじゃない」


 マナリアは励ましの言葉を送ってくれた。


「私と仲良くなってくれれば、そのまま友達だぞ」


「うん。ありがとう」


 初めての友達が魔女。

 しかし異性であることに変わらない。


「だが・・・今夜は王族と反逆者の争いになる。小規模な戦争と言い換えてもいい。そんなところに連れてきた私を許してくれ」


 マナリアは落ち込んだ様子で背に触れてくる。

 鏡を覗いても自分の背中に隠れていて表情がわからない。

 しかしトオルは、鏡の自分を見つめる。

 ドラゴンの顔がうなずき、


「気にしないで。僕が役に立てるなら・・・頑張るよ」


 そう力強く言った。


「すまない。恩に着る」


 マナリアは甘えるように背に頬を当ててきた。

 尻尾と背に、マナリアが倒れこみ体重をあずけてくる。

 人間の体重はこんなにも軽いものなのかと、トオルはちょっと、しんみりした。


(僕の体は、人間よりずっと頑丈なんだよね)


 ほんのちょっぴり、人間だった頃が懐かしくなる。

 マナリアの体重はあまりに軽く。重さが感じられないのが残念だった。




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