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気づけば雪がちらつく季節になっていた。

あれからじっちゃんから連絡はなく、あたしも連絡していない。


結局 コンクールは一次予選さえ通過できなかった。


あんなに頑張ろうと誓ったのに、頑張れと背中を押してもらったのに、この惨敗に自分が嫌になる。でももっと嫌なのは、自分の実力のなさを目の当たりにしたことなのかもしれない。


仕事の依頼は切れることなく、細々と仕事を続けていられるけど、今のままで良いと思えるほどの自信も実力もキャリアも何もなく、何も積み上げて行けていない自分に嫌気が差してしまう。


あたしは一体何を目指していて、どこに向かっているのだろうか?

目の前にかかったままの濃い霧は晴れる気がしない。どうすればこの闇から抜け出せるのかも、分からない。



あれからずっと考えている、あの時じっちゃんが言った意味を。

あたしはずっとじっちゃんを頼っている。それは今さら始まったことじゃなくて、ずっと昔からじっちゃんに頼りきっている。

でも、あたしにはそれが「好き」に繋がらないし結婚になんて到底繋がらない。

じっちゃんはあたしにとってかけがえのない存在で、一生失くしたくない存在で、恋愛なんかじゃまとめられない存在なのに。何が違うんだろう、どうしてダメなんだろう。そんな気持ちがあたしの中を支配して、まるで出口の見えない暗闇の中をグルグル回っているかのように、あたしの気持ちは落ち着く場所を知らない。


あの後じっちゃんからメールは来るけれど、この前みたいな無理な誘いは一度もなく、あたしからじっちゃんに連絡をすることも無くなっていた。

こんな風にじっちゃんと長く会わないのはいつぶりだろう。


“好き”に形があるのなら、じっちゃんへの愛はまるで家族愛だ。

じっちゃんと本当の兄弟だったら、こんな苦しい思いをしなくてよかったのかもしれない。だって恋愛関係になることなんて皆無で、どんなに嫌がっても一生繋がっていられる。どんなにひどい喧嘩をしてもどんなに長い間会わなくても決して切れることはないのだから。


あたしはどうしてじっちゃんの兄妹に産まれてこれなかったんだろう


そんなどうしようもない、答えのない問いを頭の中でふつふつと考えている。


ねぇ、じっちゃん。あたしたち兄弟みたいなままじゃダメなのかな?


大切な人を失いたくないのに、大切な人と一緒にはなれない。

このジレンマをどうにかして欲しくて、どうにかする方法を模索してみたけれど八方塞がりで、今までの関係にはもう戻れないと分かってはいるけれど、どうにかしてみたくてもがいてみるけれど、結局は何も変わらない。


せっかく手に入れた大切な仕事も、全然はかどることなく目の前に溜まっている。

この問いに答えが見つかったなら、あたしは前に進めるのだろうか。



『ミオ、元気? もし落ち着いたならまたご飯行こう。落ち着いたら連絡ください。』


透き通るような青空が広がる昼下がり、今年初めて氷点下を示した日に久しぶりに届いたじっちゃんからのメールはしごくシンプルなものだった。





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