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うどんを食べ終わってしばらくして、じっちゃんは少しだけ自分の話しをしてくれた。

職場のちょっとおかしな上司の行動をいつもみたいに面白おかしく実演してくれて、相変わらず変なことに興味をそそられるじっちゃんに笑わずにはいられなくって、さっき泣いてたのは何だったのかって思えてくるくらい、最後は大笑いしてしまった。

それからあたしたちは店を出た。

「じゃ、帰ろっか」

そう言ってにっこりわらったじっちゃんは、あたしの手を触れるくらいの強さで握った。

ちょっとだけ、ビクッってなったけど、あたしは知らんふりしてそのままじっちゃんの横に並んで歩き続けた。


駅にたどり着くと、いつもなら改札口で別れるのに今日はじっちゃんもいっしょに改札を通り抜けた。

びっくりしてじっちゃんの顔を見上げていると、じっちゃんは苦笑いしながら言った。

「送ってくよ」

「え?いいですよ。ちゃんと一人で帰れるし」

「うん。でも心配なんだ。だから、送らせて」

そう言ってあたしの顔を下から覗き込むように上目遣いで聞いてくるもんだから、あたしは無言で頷くことしかできなかった。



- 発車します ドアにご注意ください

放送が流れ電車が動き出す。

電車の中はそれほど混んでおらず、まばらに空いた座席もあったけど、あたしたちはドアの側に立った。

あたしの立った側と反対側に向かい合わせになるようにじっちゃんは立って、少し離れた場所からあたしを見ていた。

「明日、仕事じゃないの?」

「仕事だよ」

「遅くならないの?」

「大丈夫」


思った以上に会話が続かず(おそらくじっちゃんに会話しようという気がないんだと思う)、あたしは無理に話をすることを諦めて通り過ぎていく景色を眺めることにした。暗闇の中なのに鮮明にあたしの目に流れ込んでくる見慣れた景色たち。置き去りにされていく光が存在を主張するように目の裏に残存していく。

じっちゃんが自分から口を開くことはなかったし、あたしも、もう何も言わなかった。


普通電車で4駅目。最寄駅に滑り込んだ電車がゆっくりと止まり、ドアが開く。

あたしとじっちゃんは無言で駅に降り立つ。


改札を抜けると、じっちゃんがギュッと手を握ってきた。さっきみたいに驚くことはなかったけど、やっぱりびっくりしてじっちゃんを見上げてしまった。

じっちゃんは少しだけ笑ってもう一度、さっきより少しだけ強く握り直してあたしの手を引くように歩きだした。

じっちゃんはないも言わない。あたしも何も言えない。だからあたしは、半歩前を歩くじっちゃんと繋いだ手を見つめながら歩くことに集中した。


気づくとじっちゃんが足を止めていて、顔をあげると

「着いたよ」とじっちゃんが言った。

「よく、場所憶えてたね」

「1回行った場所はだいたい忘れないから」

そう言ってちょっとだけ自慢げに話すじっちゃんの顔はいつもと一緒でちょっと笑ってしまった。


「ミオ」

真剣な顔でじっちゃんがあたしを見つめる。

「はい」

「俺はどんな時でも、ミオに頼って欲しいんだと思う」

「うん、いつも頼ってるよ」

「これからもずっと。」

「ずっと・・」

「そう、ずっと」

あたしはなんて言っていいのか分からずそれ以上言葉を発することができなかった。

「また連絡するよ。おやすみ」

唐突にじっちゃんはそう言って会話を終了させた。あたしの頭をポンポンとかるくたたいて、「じゃ」と言って帰っていった。




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