表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編ごちゃまぜ

こんな乙女ゲームは絶対に嫌だ。

作者: しきみ彰

 ついに、ついにやったぞぅぅうう!!


 わたしは買ってきたゲームを早速開けて、本体にインストールした。

 マッサージチェアのようなこのゲーム機は、リアルでゲームの中の世界を体験できる機械だ。

 しかも今回のリアル体験ゲームは、MMOものじゃない。

 なんと!


 乙女ゲームものだイエーイ!!


 乙女ゲームの主人公をリアル体験できるとか、人生で一度はやってみたいよねっ!


 自他ともに認めるオタクなわたしからしてみれば、こんなにいい話はない。しかもわざわざ前日から並んだのだよこの発売日のためにね!

 インストールが済んだ後、わたしは早速ヘルメットみたいなのをかぶってマッサージチェアに座った。起動ボタンを押せば、勝手に椅子が仰向けに倒れていく。


「いざ、スタートっ!」


 ぷつりと切れた意識は、ゲームの中に滑り込んでいった。



 □■□



 この乙女ゲームのタイトルは『ハッピーエンド+らぶっ♡』というやつだ。最後のハートがうざったいのはわたしもおんなじなのでお静かに。

 内容で言えば人外との恋愛体験ができる、ありがちだけど夢みたいなリアル体験ゲーム。

 わたしは早速、自分の容姿を設定し始めた。

 このゲームの魅力でもあるのがこの容姿設定機能。しかもMMOみたいに他人と同じ世界を共有するわけじゃないので、自分のリアルがだだ漏れでも大丈夫。


 えーと、まず名前は……リアル名使っていっか。『真柴由那(ましばゆな)』っと。

 で、身長は……見栄張って『165センチ』にしとこ。

 髪の色は『黒髪』で、長さは『腰くらい』。一回このくらいの長さを体験してみたかったんだよね。

 目の色は『黒』で、『垂れ目』と……。ここら辺の要素はわたしっぽい。

 顔は『良家の美少女』系のものにした。うん、鏡を見たけど可愛い!


 わたしは『この設定で宜しいでしょうか?』という画面の『はい』の部分を押した。

 これでいよいよ、ゲームが始まるっ!



 □■□



 物語も終盤に差し掛かっていた。


 あはは、夢?

 うふふ、希望?


 そんなことを考えていた時期が、わたしにもありましたよ。ははははは。


 なぁにが『ハッピーエンド+らぶっ♡』だよ。


 この話のどこに、ハッピーエンド要素があるんだ!




 ヤンデレばかりのリアル死亡フラグゲームじゃねぇかあああああっっ!!





 わたしが攻略対象として入ってしまったのはあれだ。超絶ドSで束縛しないと気が済まない独占欲の塊みたいなヤンデレだ。

 お陰様で現在、監禁されております。とほほ。

 ねぇ、この赤い首輪ってなに。この真っ黒いドレスなに。わたしはペットか何かか。

 赤い首輪からはぎらぎらした鎖が付いてて、部屋の隅から隅まで歩ける長さしかない。もう嫌だ。

 その上部屋の豪華なこと豪華なこと。こんな鎖がなかったらも少しヒャッハーしてたわ。天蓋付きベッドにダイブとかしてたわ。


 そんなこんなで涙目になりながらベッドに寝転がっていると、ノックがされた。ヒィッ。きたぁぁああっ。


「由那。ご飯にしようか」


 うん、イケメンさんなんですよ。銀髪に碧眼とかいう超絶なイケメンさんなんですよ、もろタイプなんですよ。


 でも、これは、ない。


 ヤンデレ怖いよ監禁怖いよ。

 でも声がむっちゃくちゃいいよぅぅ……っ。自分の声フェチが今はものすごく憎たらしい。

 そして彼は、わたしがその声に弱いことを分かっていて耳元で囁くのだ。


「由那。僕の由那。可愛い」


 ぞわわわわっ。

 誰だろうかこのゲームの設計者は。今直ぐくくびり殺したい。てゆうかヤンデレに嫉妬されて殺されてしまえ!

 お食事はあーんは当たり前。口移しとか最近ではアブノーマル路線に走ってる。

 睨んだら睨んだでうっとりした目をするし、何この変態怖い。

 しかもこのヒトさ……吸血鬼なんだ。


 わたしお食事にされてるんだ!!


「ふふ。由那の首筋はいつ見ても美味しそうだね。いただきます」


 ぷつり、と微かな痛み。そしてぼんやりと頭まで痺れる感覚。

 ゲームとはいえ、感覚がやたらとリアルすぎる。

 でも下手を打つと、完璧に死亡フラグ一直線だ。どうしたらいい、この無理ゲー。


 血を吸い終えるとわたしの頭がふらふらとしてきた。貧血だ。何もここまでリアルにせんでもよかろうに。

 恨めしく思いながらも仕方がなく、彼に寄りかかる。あああああ。ヤンデレ怖いリアル体験なんかいらん。

 てか思った。わたしさ、プレイし始めてから一度もリアルに落ちれてないんだけど、どういうバグですか?

 でも意識はやっぱり落ちてゆく。


 目が覚めたら、現実世界に戻ってるとかないかな。


 ……まぁ、あり得ないけどさ。


 このゲームは真面目な話、バッドエンドフラグしかないと思うんですよ。
















 由那の可愛い寝顔を見ながら、思わずうっとりする。

 垂れ目なのに意志の強そうな瞳とか、力を入れたら簡単にへし折れそうなこの腕とか、本当に堪らない。

 何より堪らないのは、彼女が未だにここを、ゲームの中の世界だと思っていることだ。

 あのゲームはいわば、召喚装置みたいなものだ。それを媒体にして、僕らは花嫁を得る。魂の波動がおんなじ子にしかそのゲームは渡らない。


「ゆーな」


 吸血行為による貧血で倒れた彼女を優しく撫でる。可愛い。

 この髪も、腕も、何もかも全てが僕のものだ。由那は僕だけを見てればいい。僕だけを知っていればいい。そのために、毎回こうやって吸血行為のたびに、呪いを流しているんだから。


 由那は僕とおんなじ時間を生きる、という呪いを。


 彼女はいつ、この世界がゲームではないと気付くのだろう。

 もし気がついたときは、一体、どんな顔を見せてくれるんだろう。

 その真っ直ぐな瞳が、絶望に打ちひしがれるさまを見てみたい。そして僕に依存して依存して恨んで憎んで、そばにいてくれればそれでいい。


 僕に溺れてしまえばいい。


 いつか手に入るその日まで、僕は君のことを愛し続けるから。


「君を殺すのは僕。君を生かすのも僕。由那は僕だけに依存してればそれでいい。その純粋な瞳で僕を見て、射て」


 そして君が晴れて不老不死になったら、僕との間に可愛い子をもうけよう。大丈夫。何度だって孕ませてあげるから。


 愛おしい由那の唇を貪るように口付け、僕は嗤う。

※こちらは月夜の闇猫様主催の『病愛、ヤンデレ増殖企画』の作品です。

なかなかやみまくってますねリアルでいたら怖いです。

このゲーム、完璧にタイトル詐欺ですよ……(ガクブル)

なかなか楽しく書かせて頂きました!

月夜の闇猫様、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ