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魔剣士vs魔王

「わ、若頭……」

「ふ~ん……お前ら賊を素通りさせるつもりだったのか?」

「い、いえ!そういうわけでは……」

「ふ~ん……じゃあ、早くやれや。俺に殺されるか、賊を殺すか選べよ」


 やはり俺の危険察知能力はこの世界でも役に立つ。

 思ったとおりに危険人物が出てきましたよ。

 後一歩……後一歩でこの仁義無き世界から逃げ出せたのに……

 何で最後の最後にポン刀持った若頭出てきちゃうんだよ!

 そして若頭に促された、構成員達は、懐より黒光りする奴を取りだす。

 そう……チャカだ。もう全然魔術関係無い!!


「しにさらせやぁぁぁぁぁ!!!」

 

 チャカの銃口に魔方陣が形成される。

 訂正!ちょっと魔術関係有りそう。マジカル☆チャカだっ!

 

 って冷静にそんな事言ってる場合じゃない!

 何とか逃げなければ……駄目だ……あんなもん向けられて足がすくんで動かない。

 し、死にたくない!!俺をもう目を瞑り神に祈るしか無かった。



 ………し、死んでない?

 恐る恐る目を開けると、そこには吹き飛ばされた構成員の皆さんが転がっていた。

 こんな事出来るのは……屍累々の中に悠然と立つ金色の少女。

 俺、今日からレヴィアを女神と崇めるよ!魔王だなんてとんでも無い。


「そんな雑兵で、私達をどうにか出来るとでも思っているのか?」

「ふ~ん……流石、『金色の魔王』と『混沌の支配者』だ」


 『混沌の支配者』何にもしてないけどね。

 びびって目を閉じていただけなんだけどね。


「フッ……無駄な事をやめて、お前も道を開けるのをお勧めしよう」


 本当にもう帰らせて下さい。帰ったらもう二度とこの屋敷には近づかないんで。

 それに俺はウソは言ってない。道開けないと、多分レヴィアが無茶苦茶するぞ。


「それくらいじゃないと面白くねーよなぁ」


 こういう笑顔は見た事がある……そう、俺の隣に居る奴もきっと同じ顔をしている。


「ほう。命知らずだな。だが……それくらいじゃないと面白く無い」


 もう帰って良いかな俺。

 戦闘は戦闘民族同士でやっていてくれないだろうか。


「ロウガ……お前を殺した男の名前、覚えておけ」

「レヴィア・アリスフィード。覚えておかなくても良いぞ。魂ごと消滅したら無意味だ」


 株式会社七菱の桐嶋と申します。何時もお世話になっております。

 普通こういうのだよね?挨拶ってそういう殺気を巡らせてやるもんだったっけ!?

 

 若頭…ロウガと名乗った男は、鞘より己が剣を抜き放つ。

 妖しい光を放つそれは、素人の俺にも素晴らしい代物だと感じさせた。

 対峙するレヴィアは、金色の魔力を拳に集めているようだ。


「我が魔剣……受けきれるかな」

「ふふふ……そのようなナマクラで私が殺せるとでも?」

「試せば判る。まぁ……死ね」


 そう言うと俺の視界からロウガは消えた。早すぎて見えない。

 一方でレヴィアは、突っ立ったままだ。


「れ、レヴィア!」


 思わず俺は叫ぶ。

 同時に、レヴィアの背後にロウガは現れる。

 そして、その剣がレヴィアを貫いた。真っ赤な血が辺りに飛び散る。


「レヴィアーーーーー!!!」

「呆気ないなぁ。金色の魔王、いや、レヴィア・アリスフィード」


 この野郎……ふざけるなよ……!マジで……!


「中々良い気迫だユキト。だが……お前達二人とも私を舐め過ぎている」

「何!?」

「あっ……」


 完全に刀はレヴィアの腹を貫通している。

 しかし、レヴィアは何時も通りの不適な笑顔を崩しては居ない。

 少しだけ目尻に涙が浮かんではいるが。


「これは恐れ入るな。まさか、俺の剣を受けて……ノーダメージか」

「バカ言うな。痛いに決まってるだろ。痛いけど……我慢できる!」

「は、ハハハ……無茶苦茶だな」


 本当に無茶苦茶だ。でも、良かった本当に……


「我慢できるけど……痛かったからお返しだ……散魂しろ……!」


 涙を溜めたレヴィアの瞳が妖しく光る。同時に光の柱がロウガの居た地点を貫く。

 ロウガは、刀を離し柱を避けるが、レヴィアは連続して光の柱を顕現させ続ける。


「ふははは!!逃げるだけか!さぁ……散り行くが良い……」


 何かもう言動が完全に悪役だぞレヴィア……


「チッ……しかし、すばしっこいな……」

「無駄だ。お前のその魔術は俺には当たらん」

「そうか。ならば……違う魔術で殺すとしよう……」

「首を撥ねれば魔王も死ぬだろ?もう殺そう」


 レヴィアは光の柱を止めると、目を瞑り俺には聞き取れない言語を呟き始める。

 ロウガは、指先より光の剣を迸らせる。あんな事も出来るのか、あいつ。


 どんどんヒートアップしていく二人と取り残される俺。

 レヴィアとロウガは、お互いに一撃必殺で相手を葬ろうとしている。

 良いのかコレ……いや、絶対に良くないだろ!

 今までみたいに口八丁で収められないか?いや……流石にここまで来ると……


「何やってるの!!お兄ちゃん!!!!」


 一触即発。それはレヴィアとロウガの最大魔力がぶつかる直前だった。


「……決まってるだろう。賊の始末だ」

「私……友達を傷つけるお兄ちゃんなんて大嫌い!」

「…………………大嫌い………………」


 その一言でロウガはがっくりと崩れ落ちた。

 今までのバトルは何だったのだと言うくらいアッサリと。


「いや、これはエリちゃんのためだよ。エリちゃんが落ち込んでいたじゃない?

だったらお兄ちゃん的には思うわけじゃない?このクソガキ共が、お兄ちゃんすら

最近は入れて貰えないエリちゃんの部屋に忍び込んで、エリちゃんにあんな事こんな事をして

辱めたんだって思ったら……そりゃぶち殺そうってなるでしょ?お兄ちゃん間違ってない!」


 ……俺の危険信号は消えていた。

 さっきまでシリアスだったロウガがいきなり残念な感じになった事によって。

 似ているとは思っていたが……やはりこの人は観月さんのお兄さんか。

 それも完全に変態レベルのシスコンと見た。


「最悪です……もう色々有りすぎて整理出来ない……」


 観月さんは頭を抱えている。

 良かった、忌まわしき記憶から立ち直ってくれたんだね!


「桐嶋さん……」

「は、はい」

「後で……事情説明して下さいね」

「は、はひ……」


 こ、怖い。微笑んでいるはずなのに、シリアスだった頃のロウガと同じ冷たい目してますよ!!


「ふん、ようやく魔術失敗から立ち直ったか……どんな魔術師にも失敗はある。

それを糧にして新たな真理を探す事こそ……」

「だからね!こいつ等はやっぱり死刑だよ。エリちゃんのためを思ってお兄ちゃんはやってるんだ

だからお兄ちゃんを嫌いとか言わないで。本当にお願いだから」

「姫様ー!若頭ーー!無事ですかーー!!」



「……どうしてこうなった」

「観月さん……一般人って何だろうね」

「もう言わないで下さい……」


 観月さんはとてもとても遠い目をしていた。

 ……こうして俺の人生初の同世代の女の子の部屋に遊びに行くミッションは終了した。

 今はただ、生き延びれた事に感謝しよう。そして、今後は軽はずみに女の子の部屋に

 突撃するのはやめよう。俺は、そう固く誓うのだった。

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