レヴィア、強襲
今の状況を整理しよう。
俺は、本当に色々有った本日の疲れを癒すために寝床に入っていた。
かつての友人の事なんかを考えながらも、段々と睡魔が襲ってきた丁度その頃に……
「どうした?何を豆鉄砲顔してるのだ。豆鉄砲男め」
用法絶対に間違えているぞ、クソガキ。
そう、クソガ……じゃない、俺等の代表にして先鋒を務めて試合を終わらせてくれる予定の
レヴィア様がどこからともなく俺の腹の上に現れたのだ。幾ら小柄といえども重いもんは重い。
「と、取り合えず……そこどいてくれ……」
「中々立ち心地が良いから気に入ったのだが……」
「良いからどいてっ!」
「ふん……小うるさい男だ。人間が小さいぞ」
お前にだけは、小さいとか言われたくない。身長幾つだお前。
レヴィア様じゃなくチヴィア様って呼ぶぞ、コラ
渋々と言う感じで、俺の腹の上から降りるチヴィア
「ちょっと貴様、失礼な事考えていないか?」
こいつも勘が良いな。心読む魔術とか使って無いだろうな。
「考えてないよ。と言うか……君は……レヴィアさんだよね?」
「レヴィアで良い、面倒臭い。貴様の方が年次は上だろう」
「そうか。じゃあ、俺の事はユキト先輩って呼んでも良いよ」
しまった。つい調子に乗って願望が口に出てしまった。
いや、ちょっと憧れるだろ!?「先輩」って女の子に呼ばれるの。
会社でも誰も呼んでくれないんだもの。後輩からも「桐嶋さん」だもの。
「面倒臭い。ユキトで十分だ。三文字で済む」
年次上なのに!でも……ファーストネームで呼び捨てされるのって……
家族以外では初めてだな。う、嬉しいわけじゃないから!
俺はロリコンとかじゃないから!
「あー、まぁ……別にそれで良いよ。んで、れ、レヴィ…レヴィア……」
何コレ。女の子呼び捨てすんの恥ずかしい。
どんだけだよ。どんだけ童貞力高いんだよ俺。ステータス画面に童貞力Sとか記載されちゃうよ。
そりゃ三十路前にして、天才魔法使いに覚醒もするわ。混沌すら支配できるわ。
「何だかキモイぞ」
クソガキ……落ち着け。これはフランクな外国人のお取引先の人だ。
これは営業だ。お客様がそういう感じなら、空気を読め。空気を読んで朱に交われ。
「うるせぇ。寝起きなんだよ。それで、レヴィアは、何でここにいるんだ?
と言うか俺の家知ってたのか?つーか、どこから入ってきた」
「質問が多いな。代表魔術師の情報は生徒会の連中から配られただろう」
そういや俺達の分の基本データも有ったな……
そこに住所までご丁寧に載せていたのか……
「住所データが有れば、後は簡単だ。学校からお前の家に繋がる転移法陣の流れを読み取り
そこへアクセスすれば良いだけだ。後は昼間に感じたお前の気配のある場所へ短距離転移すれればこの通りだ」
さも簡単な事のように言っているが、これ誰でも出来る事なのだろうか?
泥棒簡単に入れすぎじゃない?
「貴様の家も、侵入者を排除する強力な魔術結界は張っていたが、私を止めるには至らなかったな」
……そんな防犯対策をお父さんやお母さんがやっていたのか……
魔術師スタイルで結界を張る父母の姿は余り想像できない。
「はぁー……一番聞きたい質問を抜かさないでくれ。何しにここに来たんだ?」
「『混沌の支配者』の屋敷がどの程度の物か確認に来ただけだ」
「期待に添えずに悪かったな。この程度でもこの町なら十分なんだよ」
いや、全然知らないんだけどね。
少なくとも俺の記憶の中での実家がある田舎は、玄関に鍵を掛けなくても大丈夫なくらいだった。
魔術結界とやらを張り巡らせているらしい、この世界の実家の方が違和感がある。
「まっ、相手が私じゃなければ……侵入者は黒コゲだっただろうな」
こえーよ!!この実家こえーよ!!
さっき、ユキコが桐嶋家の威信みたいな事言っていたが
割と有名な魔術師家系なのか、ウチが魔術師っぽいのなんて
母方の爺さんの外見くらいだぞ。あれは仙人っぽかった。
「ふーん……『混沌の支配者』はこういう俗物的な物も読むのか」
まぁ、そりゃ俺も男だからな。特に高校時代なんて性欲魔人みたいなもんだ。
最近は……あの頃に比べるとレベルが落ちてきているような気がする。
一冊のエロ本を聖書かのように読み込んだあの日…………
「っておい!!!」
「何だ?急に大きな声出すな。家族に迷惑だぞ」
「な、ななな何をしてやがりますか!」
「『混沌の支配者』の部屋に興味があったんだ
私と同レベルと言われる貴様がどういった書物でその力を高めたのか」
「何でそれでいきなり秘匿してある禁書をいきなり探り当てるんだよ!!」
「本棚に入っている魔術書などカムフラージュに過ぎないんだろう。判っているぞ」
もう何これ。死にたいんだけど。何回死にたいと思わせるんだよこの世界。
「……ふん、下らん」
俺に圧倒的な羞恥心を与えた上に下らないと言い放ち、我が禁書を放り捨てるレヴィア
「何が巨乳のお姉さんだ。バカらしい」
「……安心だろ。貧乳のお子様は、深夜に部屋で二人きりでも襲われる心配が無くて」
「…………」
あ、やばい。レヴィア怒ってる。顔真っ赤だ。
しまった……怒りでいらん事を口走ってしまった。
「いつか……大きくなるし……」
「え?なんだって!?」
もう一回お願いします。
その、瞬間光の柱が俺の目の前を通過した。
「うるさい。黙れ……次は当てるぞ」
俺の中のメモ帳がレヴィアの特色を記録していく。体格にコンプレックス有り……と。
あと観月さんと違って、あんまり弄ると殺される可能性がある。ユキト、覚えた。
もう黙って好きにさせていよう。逆に現在の俺の部屋がどういう風になっているのか
こいつ目線で解説して貰った方が、有意義かもしれん。
エロ本が発見された以上、もうこれ以上は出てこないだろう。
”アレ”はこの部屋には置いていないはずだしな。
それから一時間程レヴィアを好きにさせてみた。
「ふぅー……余り面白い魔術書は無いな」
……そりゃ無いよね。さっきから君、俺の布団に寝転がって足パタパタさせながら漫画読んでただけだからね。
全然俺の目論見通りに動きやがらない。猫か。猫なのか、お前は。
と言うかそういうの免疫無いからやめてくれ!良かったな俺がロリコンじゃなくて!
そう言えば何故か漫画のラインナップは元の世界と余り変わって無いのはどういう事なのだろうか。
魔術的な要素で描かれたジアンプコミックスなんだろうか。まぁ、考えても判らん事だ。
「……何を見ている?」
「本当にお前何しに来たのかなって……」
「あ……」
こいつ、途中で本来の目的忘れてたんじゃないか?
「ふ、ふん!お前の蔵書のレベルは判った。目的は達成された」
「じゃあ、用事が済んだなら帰ってくれ。俺はもう眠いんだ。明日も学校だしな」
正直、学校に行くかどうかはまだ決めてないのだが。
「本当にユキトは馬鹿なのか?」
「どういう意味だ?」
「私たちは代表魔術師だぞ。学校のカリキュラムに合わせてやる必要など無いだろう」
そう言えば、俺のサボリも全然問題視されてなかったどころか良くある事扱いされていたな。
そういう理由からだったのか。じゃあ、代表魔術戦までの一月は安心して、元の世界に戻す方法を探せるな。
「そういうわけなので、行くぞ」
「どこへだよ……今、何時だと思っているんだ……」
「フフフ……魔力が高まり始める時間帯だろう?」
こいつ深夜一時にこんなに元気なのは、打ち合わせの後に即効で寝たからか。
俺は夜更かしはするが、完全夜行性ってわけじゃないんだぞ。
「さぁ、行くぞ。もう一人の代表のところへ」
「は?それって……」
…………え?もう一人の代表って……観月さんの部屋に?
「そう、我々に匹敵するもう一人の魔術師……エリナ・ミツキの居城へだ」
いやいや、それは駄目だろう!深夜に女の子の部屋に侵入は洒落じゃ済まない。
捕まるぞ!!主に俺が。新聞に「『混沌の支配者』、女子高生宅を強襲!」とか書かれたくない。
アウト。流石にそれはアウトだレヴィア。
「フッ……確かに『虚空の姫君』の力の源泉も見ておく必要があるな」
「フフフ……ようやく理解したか。それでこそ私に肩を並べるに相応しい」
「よせ……混沌がそれを求めているだけだ」
心の葛藤に反し、俺は決め顔で中二台詞を言っていた。
男にはやらねばならない時があるんだ。




