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『混沌の支配者-ロードオブケイオス-』

『混沌の支配者-ロードオブケイオス-』

 彼の魔力は、全ての混沌を統べる。

 その能力は因果律の支配までに及び、彼の前では時間と空間すら意味を為さない、

 しかし、神との戦いに敗れ、その身は普通の中学生へと転生してしまう。

 普段は力を発揮する事が出来ないが、怒りが頂点に達すると……


 うがぁぁぁぁぁ!思い出させないで!


 ………誰にでもあるだろ。こういうの。

 それに誰かさんと違って、俺はちゃんと卒業している。

 高校時代の俺は、極平凡なゲーオタとして過ごしていたんだ。

 やめてくれ……銀髪長髪ビジュアル系剣士をリスペクトしたり

 口癖が「ククク……虚無に還るのだな」だった時代を思い出させるのは。


 しかも……恐ろしい事に……本当に恐ろしい事に……この空気は……

 混沌の支配者(笑)をバカにする雰囲気等全く無いのだ……

 痛い時代を経て、培った俺の最大のスキル『場の空気を読む』がそう言っている。

 決して俺の痛い黒歴史ノートが、何らかの不具合でクラスに公開されて

 皆でからかっているとか、そう言うのでは無さそうなのが逆に怖い。


 どうすれば良いの俺。

『混沌の支配者』ってどういう職業なの。何したらお給料貰えるの。

 教えて、中学二年生の頃の俺。


 あの後、すぐにHRが始まった。

 ウチの担任の化学教師の赤城(この世界では化学教師では無いのだろうが)は

 開口一番に「桐嶋、流石に今日は来たか。交流魔術戦はお前に賭かってるからな!」

 等と意味不明な供述をしていた。その分の悪い賭けは、絶対に後悔すると思います。


 本格的に胃が痛い。演技とかでは無くなってきている。

 まだ学校始まってクラスに入ってから10分程度しか経過していないのに

 こんなに消耗しても良い物なのだろうか。果たして俺は、今日と言う日を生き残れるのか。


 本来の俺(十年前ver)で有れば、HRギリギリで登校し

 そんなに目立つ事無く、普通に着席し、軽くシュウ辺りと漫画かゲームの話でもして

 授業はそれなりに真面目に受けると言う、何のネタにもならなそうな

 完全日常系作品(但し、登場キャラは男のみ)みたいになるはずなのに。

 どうして、こんな事になってしまっているんだ……ジャンル変わり過ぎだろ。

 もはや夜明けの炎神王だよ。


 その後、滞り無くHRは終了し、一時間目が始まった。

 教壇に立つのは、俺が知る限りで地理教師のはずの水原先生だ。

 学内でも若くて美人で人気の高い先生で、俺も彼女の授業は必至に聞いて

 やたら地理の点数は突出したもんだが……

「それでは、召喚魔術の基礎から今日は復習して行きましょう」

 とか言っている始末。

「召喚魔術は、何を呼び出すかにもよりますが、基本的に触媒となる物が必要となります」

「桐嶋君は、この前自分の魔力を触媒にしたりしていましたが、それは普通の魔術師には出来ない高等技術ですので、皆さんは真似してはいけませんよ」


 ……うわー、凄いんだね俺は。

 憧れの水原先生の賞賛も、今の俺には胃痛を増やす要因でしか無かった。

 だって、出来ないもの!そんな事!!俺自身が真似出来ないわ!


 その後二時間目、三時間目、四間目と同じように魔道具だの、属性術だの、魔術基礎理論

 だのの授業が続いた。

 幸い、俺レベルには必要ない講義だと思われているようで、教師に指名されて

 いきなりボロが出るような事態にはならなかったが……それが本当に幸いな事なのか

 もう俺には判断がつかない。

 何時、ボロが出るのかと言う緊張感と完全に俺の知っている学問とは違う授業の数々、

 そんな状態なのに、周囲は無駄に俺を賞賛する。

 昼休みを迎える頃には俺は、疲弊しきっていた。

 本日のメインイベントはまだ残っていると言うのに……


 誰かと喋る気も恐ろしくて起きないので、昼休みはどこか人気の無い所で過ごそうと

 四時間目の授業が終わると、逃げるように教室を飛び出した。


 その時、携帯が鳴った。

 またシュウか……今は親友と言えども一緒に飯を食べる気は起きない。

 一応、携帯を取り出し、確認する。

【観月エリナ】


 携帯には、そう表示されていた。



「お疲れの様子ですね……」

「……そういう桐嶋さんこそ……」


 俺達は、人気の少ない特別教室棟で落ち合っていた。

 もっとも、本来の理科室とかでは無くなっているのだろうが。

 観月さんは、昨日会った時より明らかに疲れている様子だった。

 俺も同じような顔しているようだが。


「桐嶋さんが学校に居るとは思いませんでした……」

「色々有ってね……自分の意志と言う物は、全く介入してない」

「どうでした?学校?」

「多分、一緒だよ。授業の内容は、学年分俺の方が高度なのかもしれないけど」

「一緒じゃないかもしれません……」

「?と言うと……?」

「……あんまり言いたくありません」


 もしかしたらと言う、考えが俺の頭を過る。

 携帯電話を充電すら出来なかった、俺ですら混沌の支配者(笑)何て呼ばれているんだ。

 俺と同じ境遇に有りながら、魔力を明らかに内包していた彼女は……それこそ……


「……何て言う、二つ名だったの?」

「!!!」


 みるみる内に観月さんの顔が赤くなっていく。

 相変わらず顔に出易い子だ。だが、それが良いと僕は思いました。


「だ、だだ……誰かに聞いたんですか!?」

 お、落ち着いて観月さん!首絞めないで苦しい!死んじゃいます!

「ち、ちがう…!チガ……」

「あぁ!す、すいません!すいません!!申し訳ありません!」


 死にかけたお蔭で観月さんは冷静になってくれたようだ。

 本当に何時か、死んでしまいそうで怖い。

 しかし、この反応からするに、彼女にも付いているようだ。

 とびっきりに残念な感じの二つ名が……


 ならば俺も隠す必要は無いだろう。

 どっちにしても、この学校に居る限りその内バレるだろうし。


 俺は息を整えた後、静かに告げた


「俺も……呼ばれているんだよ……二つ名……」

「えっ!桐嶋さんも?」


「フフフ……この学園に名を轟かす『混沌の支配者』とは我の事だ!」

「……………」


 あれ?受けなかった?精一杯笑いを取りに行ったつもりだったんだが。

 そういう冷たい反応が来ると……本当に死にたくなってくる……


「私……」

「ん?」

「私は……皆に『碧き光を纏いし虚空の姫君』って呼ばれました……」

「……………」


 あ、あいたたたたたた……


「う、うん……良いと思うよ……」

「何ですか!その顔!!表情完全に死んでるじゃないですか!」

「観月さんには良く似合っていると思う……」

「何でですか!わ、私、一般人です!中二病じゃありません!」


『混沌の支配者-ロードオブケイオス-』と『碧き光を纏いし虚空の姫君』どっちがマシかは考えないでおこう。不毛だ。


「ところで姫君は……」

「何ですか支配者さん」

「お互いを傷つけあうのは止めよう」

「桐嶋さんが言い出したんですよ……」


 ふくれっ面で文句を言う観月さん

 彼女は表情がコロコロ変わって面白いのでついからかいたくなる。

 ……十年前、同じ学校で過ごしていたのに、こんな境遇にでもならなければ

 俺達は、こんな会話する事も無かったと思うと少しだけ悲しい。


「話を戻そう。結局、授業とかは大丈夫だったの?」

「それは……その……出来て当たり前って扱いを受けていたので……」

「そっか。俺とやっぱり殆ど一緒か」


 と言う事はだ……


「も、もしかして……交流魔術戦って……」

「はい……学校代表らしいです。私……」

「代表って何人いるんだろ?」

「どうも情報集める限りですと、3人みたいですよ」

「何をするかは知ってる?」

「そこまでは……あ、今日打ち合わせが有るんでそこで分ると思いますけど……

 正直、ちょっと不安です……」


 …………どうするのコレ。

 三人だけの学校代表の内、二人が『混沌の支配者(棒)』と『碧き光を纏いし虚空の姫君(笑)』なんだけど。

 しかも、シュウの様子からしてかなり盛り上がっている様子。

 今から、チェンジは効くのか、否、チェンジ出来ないと拙い。


「ど、どうしたんですか?無表情で天を仰がないで下さい。私変な事言いました?」


 観月さんは、どうやら気づいていないらしい。

 ならば、教えてあげよう残酷な真実という物を。


「素人二人+一人で……どうにかなるもんなのかな学校代表って」

「え……………えっ?」


 数秒後、俺の言いたい事を理解した観月さんは、無表情で天を仰いでいた。


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