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告げられる危険

 父は、俺の記憶通り20時くらいに帰宅してきて、それから家族で夕食を取った。

 結局、妹の言うように俺のサボリはこの世界では何時もの事のようで

 この日、帰って来た父からも母からも特に咎められるような事は無かった。


「卒業が出来るように、出席日数は満たすんだぞ」


 夕食時に一言、父からこう言われたくらいだ。

 家族の会話は、俺の記憶にある10年前と殆ど変わらない物だった。

 ユキコと母さんが、今日の出来事等をしきりに話し、父はビールを飲みながら

 静かにその話に耳を傾けて、余り自分から喋ったりはしない。


 ただ、ビールの銘柄は俺の知っている物では無かった。

 飲んでみるわけにも行かないので、謎のビールらしき物と認識するしかない。


 食事が終わると、父さんは居間でテレビを見始める。

 ニュースでは、俺の知らない地名や単語が大量に出てきた。

 家の中は見知った光景なのに、外の世界はまるで別世界だと言うのを

 改めて思い知らされる。そう言えばテレビも携帯と同じように魔力で動いているのだろうか?

 となるとこの場合は、父さんの魔力で動いていると言う事になるのだろう。

 少なくともコンセントのような物は見当たらない。

 あの堅物の公務員の親父が魔術師だなんてちょっと笑えてしまう。

 もっともこの世界では、魔力を持っていない今の俺の方がよっぽど異端なのだろうが。


 俺はなるべく顔に出さないように観察を続けた。

 PCも家には有った。幸いな事に母が、PCを起動した後に席を離れてくれたので

 その隙に動かさせて貰う。俺だったら初期起動が出来ない恐れがある。

 ネットに繋がれば何かが判るかもしれない。

 この時代には『ミエナイブログ』は存在しないはずだが

 もしかしたら、変貌してしまったこの世界には既に存在しており

 そこに何らかの行動指針になる物が書かれているかもしれない。

 もちろんPCのOS等も俺が良く知っている会社の物では無くなっていた。

 そうは言っても、インターフェイスは、俺の知っている物と大きく違う物でも無く

 苦も無く俺はネットに繋げる事が出来るであろうアイコンをクリックした。


【エラー】

【ウィザード認証が出来ません】


 ……どうやら、ネットに接続するにも何らかの条件がいるらしい。

 俺の唯一の趣味すら奪われてしまった気分だ。

 これからはどうやって深夜アニメについて語り合えば良いんだ!!

 ちょっとだけ、この世界の匿名掲示板やオタク文化が気になっていたのだが……

 今までの感じからすると、多少は変わっていても同じ雰囲気の物が存在しているはずなんだよなぁ。


 ネットは一旦お預けのようだ。

 観月さんならば、ネットも繋げるのだろうか?

 連絡を取る大義名分が増えた。

 これで気兼ね無く連絡を取る事も出来る。

 先ほど決めたとおりに、明日になったら連絡しよう。


 え?今すれば良いんじゃないかって……も、もう夜遅いしね!

 決して、女の子に電話するのに緊張しているわけじゃない。

 それに、このまま夜が明ければ全てが元通りの可能性だって有るんだ。

 まるで一夜の夢かのごとく、元に戻ってる事を望む。


 Trrrrrrrr


 その瞬間俺の携帯電話が鳴り響いた。

 ま、まさか……観月さんか!?向こうから連絡して来てくれた?


 疾風の如き、速度で俺は携帯電話を開く。

 そこに表示されていたのは


【長瀬シュウジ】


 俺の学生時代の悪友の名前であった。


「現在この電話は使われておりません」

『うお!いきなりつめてぇな!キリちゃん』


 当たり前だ。もう何か疾風の如きアクションを見せた俺が恥ずかしい。

 このタイミングで電話してくるとか空気読めよ。


「冗談だよ。久しぶりだな、シュウ」


 しまった。見知った声だっただけについ素で喋ってしまったが

 十年前はそれこそ毎日、顔合わせてたんだから久しぶりもクソも無いか。


『もう冗談はそれくらいにしようぜ』

 良かった。軽口の続きだと思って流してくれた。


「悪い悪い。ところでどうしたんだこんな時間に」

『いや、キリちゃんが今日休んでたからさ』

「何時もの事だろ、俺がサボるのは」


 少なくともウチの家族はそんな風に認識してた。

 ちなみに俺の知っているシュウは、学生時代は生徒会をやっていて

 学内でも結構な人気者だったが、ガキの頃から趣味が俺と合ったため小中高と腐れ縁のような仲だった。

 十年後は美人の奥さんを貰ってラブラブ新婚ライフを過ごしているらしく、俺とは最近全然遊んでくれない。

 昔は二人であんなに熱くロボットアニメについて語ったりしたのに……

 良い奴はどいつもコイツも先に結婚きやがる……


『そうなんだけどさ。キリちゃん夢中になるとそれしか見えなくなるから

 明日の事忘れてたら拙いなって思って、電話したんだ』


 え?何すっごい嫌な予感がするんだけど。

 何の約束したんだこの世界の俺。


「あ、明日って何だっけ……?」

 恐る恐る聞いてみる。

『マジでか!いや、電話しといて良かったわ』

「だから何があるんだよ!」

『マジで忘れてるの?明日は打ち合わせの日だろ』

「……そ、そうだっけ?」

『ウチの代表のキリちゃん来ないと話にならないんだから頼むよ』


 もう代表とかそういう響きが何か嫌だ。

 俺はそういうのやらない性格の人だよ!

 今までの人生で代表に選ばれた事とか基本的に無いからな。

 そう言うのは俺とは違う人種のやる事だ。俺は平凡な人生を心穏やかに過ごせればそれで良いんだ。


『打ち合わせは授業終わった後16:00からだから、じゃあ、ちゃんと来てよ』


 そう言うとシュウは電話を切った。

 何の打ち合わせかも全然判らないが、嫌な予感しかしない。

 ユキコ……同じ学年のあいつなら何か知ってるだろうか?

 文化祭的なイベントでもあって、それの執行役員とかに俺がなっているなら

 もしかしたらユキコにも話が伝わっているかもしれない。

 多少の不自然さは仕方が無い。あいつに聞こう。


「ユキコいるか?」


 そう呼びながら、俺は力強く妹の部屋の襖を開けようとした。

 純和風な作りの我が家には妹の部屋と言えど鍵などと言う概念は無い。

 ぐっ……あ、開かない?これただの襖だろ??これも魔力的な何かなのか?


「なーにー」


 俺がどんだけ力を入れても開かなかった襖をユキコを軽く開けて姿を現した。

 風呂上りらしいが、ジャージ姿のその格好はまるで色気が感じられない。


「相変わらず色気無………ガボォ!!」


 懇親の回し蹴りが俺の頭を捕らえた。

 どうするんだよ、お兄ちゃんの頭が残念な事になったら


「なに?そんな下らない事言うだけなら、あたし暇じゃないし相手したげないよ」

「申し訳ございませんでした……」


 取り合えず謝る俺。

 謝るスキルは、十年前の俺と比べて格段に磨き上げられている。

 それこそ天下の名刀ばりに……言っていて悲しくなってきた。

 もうちょっと良いスキルが欲しいです……


「で、ホントになに?」

「い、いやさぁ……ちょっと俺最近忘れっぽくてアレなんだけどさ」

「えー、その年で健忘症?大丈夫なの?」

「きっと可愛い妹が、頭にキックとかしてくれるからだと思う」

「あー、じゃあ仕方ないねー。妹可愛いしねー」

「………」


 いや、見た目だけは、本当に俺と双子とは思えない程可愛いんだけどね。

 目はパッチリだし(俺の目は若干腐ってると言われる)、

 髪の毛サラサラだし(俺の髪の毛はかなりクセ毛だ)

 笑うと親戚中がお小遣いを上げたくなると評判だった(俺は笑うと気持ち悪いと言われた事がある)

 本当に雪のように白い綺麗な肌をしている。(あ、これは俺もそうだ。外出ないから。良かった似てる部分あった)

 ただし、家の中ではほぼジャージスタイルなので色気は乏しいが。


 まぁ、そんな悲しい話は置いておこう。


「いやさ、実際……俺って何か代表的な物になってたっけ?」

 努めて軽く聞いてみる。

「は、はぁー!?何言ってるの!?」

 思った以上にユキコは驚愕の表情を浮かべる。

「ユキト、ウチの学校の代表じゃん!交流魔術戦の!」

「こ、交流魔術戦……あ、あぁ、あれね。あのやつね」

「ふぅ……ホントにユキトって何かに熱中するとそれしか考えられないんだから……普段サボってるんだから、そういう時はちゃんとやってよね」

「う、うむ」


 俺は乾いた笑顔のまま曖昧な返事をして妹の部屋から立ち去る。

 詳しい事は全く判らないが、『交流魔術戦の代表』

 その響きだけで俺の胃腸は最大限の警告を発している。

 絶対に関わっちゃ駄目な部類の話だと……




 ……そして俺は決心を固めた。


 御腹が痛い時は、大事を取って学校は休まないとね!……と。

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