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第六回

 目覚めた圭介にと、母が作りテーブルへと置いたハムエッグ、トースト、サラダも、今朝は殺風景で何一つとしてない。圭介が二階からぼんやり下りて来ると、「早くしないと遅れるよ!」と、(あたか)も小児の登校を促すように昌が云って、「ああ…」と無造作に返していた昨日までの原風景が消滅している。しーんと静まり返る部屋で、冷蔵庫を思慮なく意味がないのに、敢えて開いたりする。朝刊も恐らく新聞受けに入ったままだろう。一日は疾うに始まっているのに、圭介を取り囲む空間は、未だ眠りの淵にある。休むと云ってある余裕からか、

━━ 別に慌てなくてもいいか。…だが、姉さんに十時と云ってあるからな ━━

 などと考える圭介であった。

 姉の智代とは四つ違いなのだが、母にも、そして姉にも、未だに子ども扱いの語り口調で完全に嘗められている圭介なのだ。会社では課長以上の次長職にまで出世して部下を叱咤する身だというのに、身内には蛇に睨まれた蛙状態で、さっぱりなのである。

 九時前、圭介は喫茶店に一人、窓際のボックス席に座り、モーニングの軽食をとっていた。姉とはこの喫茶店で落ち合うことになっている。その際、昌の病状について詳細を語るつもりだ。携帯で、母が入院したことまでは云ったが、詳細について語ってはいない。姉のいらぬ心配から、昌が気づくのを恐れてのことだが、それとて、告知せぬのが善なのか…と、分別に(さいな)まれる圭介なのである。

 告知については、特に癌患者のそれについては、是非の論が二分している。

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