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第四十二回

 事実、昌は外観的にも快方に向かっていた。

一寸(ちょっと)、体が軽く動くようになった気がする。それに、このところ、食欲が出てきてねぇ…」

「そうかい? それは、よかった。何か食べたいものがあったら買ってきてやる」

「それじゃ、散らし寿司を頼むかねぇ。あっ、今じゃなくていいよ、この次で…」

「ああ、いいとも! すぐ買ってきてやる」

 圭介の声も知らず知らず快活になっている。内心は当然のことながら喜色ばんでいる。勿論、他にも理由はあった。珠江との婚約が二日前に調った・・・ということである。気分は厳冬期からうららかな陽春期へと変化している。ただ、姉の智代の小言がまた復活したのには辟易(へきえき)としている圭介であった。

「準備は進んでる?」と聞かれ、思わず、「何が?」と応じたのが、いけなかった。

「決まってるじゃない、結婚式のことよ」

「姉さん、僕ももう子供じゃねえんだから…」

 と、圭介は少し噛みながら云い返した。

「そうお? なら、いいんだけど…」

 二人は歩きながら、院内の売店へ向かっていた。通路を右折左折していると、「あらっ、こんなところに蜘蛛がいるわ。嫌ぁねぇ…」と、智代が立ち止まった。圭介が釣られて見ると、一匹の蜘蛛がふらふらと床を這っていた。智代はその蜘蛛をハイヒールで踏んづけようとした。

「駄目だ! 姉さん、待って!」

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