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第四十回

 癌が不治の(やまい)であることは、重々、圭介には分かっている。しかし、彼は諦めてはいなかった。彼の出身校はN大の経済学部である。そのN大医学部の(つた)教授と圭介は知己の間柄であった。運命はどう展開するかは分からないものである。偶然、教授と知り合って話が弾み、それ以来の付き合いとなった蔦教授から圭介は驚くべき事実を知らされた。

「先生、何かいい手立てはないでしょうか。主治医の三島先生の診断によれば、余命はあと一ヶ月だと…」

「そうか・・・、土肥君のお母さんがねぇ。いや、手立てはなくもない。というのは、…少し話が難しくなるがな。私の同僚の大学院医学研究科の山東教授と尾崎教授が共同で取り組んだ増殖型弱毒性ウイルス、これを普通は単純ヘルペスウイルス或いはHSVと我々は呼ぶんだが、この臨床試験が成功してもう随分になる。それがだ、今や新薬シードとして発掘され、近々、なんとか製薬、…()えて名は伏せておこう。そこから発売になる。薬事法十四条の承認申請が済み、国に承認されたからだが、そのサンプルワクチンを入手できる筈だ。他にもワクチンはあるがね。まあ、私が山東、尾崎の(いず)れかの先生にお願いした上でのことだが…」

「急ぐんてす、先生。如何ようにもお礼はさせて戴きます。先生、何卒よろしく!」

「なに云ってるんだ、君と僕の仲じゃないか、礼などいい、早急に手配しよう。担当医は三島さんと云ったかな? 僕が直接、赴いて立ち会おう」

「助かります。一生、ご恩にきます。お願い致します!」

 平伏して、圭介は何度も懇願した。

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