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第三十九回

 試合は、デュースの様相を呈し始めた。互角なのだ。圭介は内心で嬉しいのだが、先が全くといってよいほど見えない。結婚となれば、職場の雀達の的になるのは必定だ。この事態は、圭介にとって恐ろしい。そういう訳で、気分的にはデュースなのである。だが、よくよく考えれば、母の昌を安心させられるかも知れない。以前から縁遠い自分を嘆いていたではないか。珠江と別れて病院への帰路、見えなかった一筋の光明が不意に見えてきたような快活な気分が現れたりもした。

「母さん、実は…、際ってくれるという()が出来たんだよ。この歳で云うのは、照れるんだけどさ」

「へぇーお前が? そりゃ、よかったじゃないか。母さん、それが心残りだったんだよ…。それで?」

「うん。最初は冗談か、勘違いくらいに思ってたんだけどね、(あなが)ち、そうでもないみたいでさ。今度は、といっても長い間、そんな話もなかったんだけどね。上手くいくような気がする…」

 昌の衰えた顔に、久々の喜色が浮かんだ。いやそれは、受けた光線の具合だったのかも知れないが、圭介にはそう見えた。

 (ようや)く暑気が失せた。昌が入院して二週間になる。入院の二日後、圭介は十日間の介護休暇を思い切って会社へ申し出た。理由は明快、母の病状回復への奔走の為である。夏期休暇を取らない分だったし、母が悪いという事情は社内に知れ渡っていたから、部長以上は何も言わなかった。

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