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第三十七回

 耕二も退職後はやることがないのか、時折り顔を見せてくれるし、智代に至っては、圭介よりも昌を看てくれる時間が長い。濃い身よりはこの二人だけなのだ。それでも一応、三島の心遣いに、「はい、先生。そのように致します…」とだけ感謝する言を圭介は返していた。そして(おもむろ)に腕を見る。六時二十分を少し回っている。

「先生、一寸(ちょっと)、急ぎの用がありますので…」

「いいですよ、当直の係の者に、そう云っておいて下さい」

 珠江との約束は七時だった。充分に時間はある。九時に智代と交代するのだから、それまでには帰ってこれるだろう…。脳のプロテクト・リレー回路が圭介にOKを与えた。

 エルモンテに着くと、既に珠江は来ていた。珠江の意を汲んでから適当にオーダーし、持ってこさせる。

「奢りだから遠慮なく食べろよ…。で、僕に何か用でも?」

 単刀直入の直球(ストレート)勝負だ。言葉にした後で、 ━ 急ぎすぎたか…

 ━ とは思ったが、圭介は意に介せず、ボーイが出した前菜を食べ始める。

「さあ、食べながら…」と、一瞬、動きの止まった珠江をリラックスさせる。(しばら)く、二人の間に無言劇が続く。赤ワインにメイン・ディッシュの肉料理、至極ありふれた食事風景である。

「あのう…、私と際ってみません?」

 唐突に、サーブの球が飛んでくる。「えっ?」圭介は耳を疑って聞き直した。

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