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第三回

 避けるつもりもないが、恐らく手術に至るであろう経緯をどう説明したらいいものか…と、苦慮しつつ、「そいじゃ、一応帰るから…」と、足早に病室を出ようとする。四床のベッドには各々に患者と付き添う家族がいる。適当な会釈で、「母がお世話になります…」と軽く頭を下げて紋切り型の言葉を吐く。別に圭介が計算したのでもないが、至極当然の挨拶のようにも感じられ、彼はそうしていた。

 病院の玄関を出て、何歩か歩んだところで、看護師と目線が合う。圭介は思わず相好を崩した。

「204号室の土肥です。母がお世話になります。宜しくお願い致します」

 幾らか上気したのか、片言を区切り、丁寧な物腰で語る圭介である。

「あらっ、そうでした? はい、分かりました。ご苦労様です…」

 井口というネームプレートを左胸に付けた若い愛想のいい看護師は、擦れ違い様にニコッ! っと微笑んで病室へと入った。容姿、(すこぶ)る端麗である。

 遠ざかる圭介の耳に、「検温ですよ」という快活な声が耳に届いた。その届く声が、未練にも遠ざかる。

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