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第二十九回

「まあ、私の知る限りでは、二ヶ月先か三ヶ月先かは分かりませんが、激痛に襲われるという方が多いということです。それを病院で迎えられるか、或いはご自宅で迎えられるか…そういうことです。よくお考えになって下さい。私から、どうしろと云うことは出来ませんから…」

 医師には圭介も過去に何人も会ったが、この三島ほど丁寧者はいなかった。何が丁寧なのか…、それは病状説明に留まらず、医療行為の端々に(あらわ)れていた。 ━ いい先生でよかった ━ 圭介は素直にそう思った。これも運命なのだろうが、死に至るまでを細かに詳述し、『私が最後まで責任を持ちます』と云われては、誰しもそう思うに違いなかった。圭介は三島の姿に神が放つ光背を見る思いがした。嘆いていた圭介は、実のところ、最大級の溜息をついているのである。それが外へは見せられぬから、日増しにストレスは溜まる。三島との語らいが、それを払拭する一種の清涼飲料水のような慰めになっていた。

「母さん、三島先生が昨日、俺に云ってられたんだけどな。身体全体がお弱りのようだから、一度、入院をして戴けないか、ということだった…」

「…、再入院かい? 余り気が進まないんだけど…」

「無理に、とは云ってられないんだけどね。俺もその方が安心だから。…少し痩せたから、太って帰りゃいいさ」

 都合のいい理由をつけ、そこへ少しの嘘も雑ぜて圭介は軽く云う。

「お前がそう云うんなら…」

 余り乗り気でもない昌だが、渋々、応じた。

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