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第二十七回

「お風呂にするかい? それとも…」

 昌の声がドア越しに小さく響いてくる。圭介は我に帰ると、明るく、「汗掻いたから、先に風呂に入る…」と、大き目の声でドアに浴びせた。

 次の日、この日は幸い土曜だから勤めに出る必要もなかった。友人に逢うと上手い口実をつけ、圭介は家を出た。家を出る前、昌が、「この頃、どうも入れ歯の具合が(おか)しくってねぇ。噛み合わせが、よくないんだよ…」と云っていたことを思い出す。そして最近、昌の動作が寸分、緩慢になったような気もする。圭介は、思うまい…とアクセルを踏み、車の速度を上げた。

 病院も通いなれた所為か、要領も充分に呑み込めてきた。待合所で三島が来るのを待ちながら、圭介は全てを忘れようと、据え置かれたラックから新聞を取り出して目を走らせた。それでも、気持は昌のことに傾く。残念ながら、この病院の歯科は担当医の都合で、(しばら)く閉鎖状態にあった。だから、入れ歯が悪いのなら、こことは別に歯科医院への病院巡りになりそうな雲行きである。昌に頼まれたこともあったが、便利な経路にある歯科医院の地図を圭介は想い描いた。幸い、駅近くの月極めの駐車場近くに、頃合いの歯科医院が一つあった。昌がどう云うか分からないが、ともかく、そこならば都合よくいきそうだ…と、圭介は算段していた。

「お待たせしました…」と、三島がカンファレンス室から出て待合所へやってきた。挨拶もそこそこに、三島に誘導され検査室に入る。

「どうぞ、お掛け下さい」

 と三島が椅子を勧め、シャウカステンのスイッチを入れた。

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