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第二十四回

 昌も、にこやかな表情に戻って、「時々、会えるわねぇ…」とミルクティーを耕二に勧める。昌が立とうとしたとき、足元が疑わしくふらつき、思わず圭介と耕二が介添えしようとしたが、すぐ姿勢を立て直したので、二人ともまた座り直した。叔父に母の容態のことは詳しく云ってはいない。ミルクティーを啜る叔父を垣間見ながら、つまらぬことをまた話さねばよいが…と。気が気ではない。幸い、耕二はそれ以降、昌の病状の話題には触れず、外国の珍しい話などをして、事も無げに帰宅した。

 季節は巡り、梅が散ると桜の蕾が膨らんだ。頬に絡む風も時折り暖かく、時間の余裕を持てば、今こうした感覚を味わえるのだと圭介は思った。ここ(しばら)く、こうした感覚はなかった。久々に覚えた忘れかけた感覚である。手術から約半年が経過していた。しかし昌は、既にこの時、病魔に侵されつつあった。恐れられた再発である。

 隔週に一度は必ずといってよいほど、圭介は昌を伴って病院へと送る。その日も昌を病院玄関で降ろし、月極めの駐車場へと急いだ。

「母さん、気をつけて…」と声を出したが、その日に限って何故か胸騒ぎがした。

とり越し苦労か…とおもったものの、駐車場から地下鉄、地下鉄から会社へと歩く道すがら、何かすっきりしない気分が続く。そして、その胸騒ぎが現実となったのは昼前であった。

「次長、飯にしますか?」と、課長の倉持に促され、圭介は、「ああ、そうだな…」と次長席を立とうとした。

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