第二回
「今後のことについてご説明致しますので、ご近親の方と一緒に、改めてお越し下さい。今日は来患の診療中ですので…。それから、二階に検査入院ということで入院措置をとりました。詳しくはナースセンターに聞いて戴いて…」
「それで、治るんですか?」
厳しい口調で、圭介は三島に詰め寄る。
「…、何とも申し上げられません。私としては万全を期すつもりですが、何分にも侵潤部位…、要するに患部の広がる範囲が加速度的ですので一刻の猶予も許されない。リンパ節転移がなければいいのですが…」
「私にはよく分かりません。…宜しくお願い致します、先生!」
来患と来患の間を縫いつつ通された診察室内で、圭介は三島と対峙してそう懇願した。
それから病床の母を看たが、内の動揺を寸分も顔に出さず、悟られぬよう冷静さを保った。
琥珀製の帯止めを少し見遣って、端正な着物姿の母、昌がベッドに腰を下ろしている。四人部屋の窓際にて、ほどよい外部の光線を受ける。
「母さん、必要なものを運ぶから、メモしといてよ…」
とだけ平静さを装う声で、ぼそりと告げるが、内心は穏やかな筈がない。
「もう書いてあるよ、取りあえずのモノだけだけど…」と、昌は椅子代わりのベッドから立つ。
「そうか…。なら、話は簡単だ」