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第十九回

 喜ばしいことなのだが、人間とはやはり生き物なんだ…と、圭介を思わせたりもした。

 集中治療室(ICU)から個室、個室から二床病室、二床病室から四床病室へ・・、昌の回復とともに外科病棟での入院生活は続いていった。

 執刀医の三島本人が、「長引いても三ヶ月ほどでしょう」と太鼓判を押してくれたこともあるが、圭介は退院までの容態は、さほど気にしていなかった。彼は予後のことを悩んでいたのである。 ━ スキルス形態で進行した……手術しても再発率は非常に高くなっておりまして…… ━ 圭介の脳裡を過るいつか云った三島の言葉が、繰り返し、そしてまた繰り返し、反芻しては彼を責め(さいな)んだ。しかし、日を追って回復する母の病状を見ていると、三島が云った警鐘も嘘のように思える。圭介はふたたび、その時はその時だ…と考えないことにして、テンションの下がる自分を慰めた。

 術痩の治癒も順調で、圭介が予想していたよりは少し早めの退院となった。約二ヵ月半の入院生活だった。既に師走も半ば近く、街頭のあちらこちらにクリスマスなどの歳末風景が溢れている。母を(かば)って乗り込む車。運転席の姉は何を考えているのか、「もういい? でるわよっ。忘れ物ないわね?」と、感情の籠らない事務的な声で云ってのける。「ああ、いいよ…」と、圭介も返す。

 見送りに出た三島と井口を含む看護師が三名、玄関口から車に近づく。昌はそれに気づき、慌てて自動ドアを下ろす。「もう帰ってきちゃいけませんよ」と、笑いながら三島が中腰になって昌へ優しく語る。

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