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第十八回

 二日目の夜、母の病床横に臥す。脈拍(プルス)を刻む機械音、緑色に浮き上がるベッドサイド・モニターに囲まれ、何か落ち着けぬ不安を抱いて圭介は瞼を閉じる。生と死を分ける(はざま)の部屋に、静寂の時がただ流れる。

━ 俺がやみくもに足掻(あが)いても、母さんの病状がよくなる訳じゃない。先を知るは神仏のみか…。母さんがよくなったら旅行に連れてってやろう。どうか、救って下さい ━

 そう巡った術中の想いが、ふたたび昌と二人の集中治療室(ICU)で甦って浮かんでくる。それでも、圭介はいつの間にか微睡(まどろ)んでいった。

 深夜、もう更けて三時頃なのだろう…。外科付きの看護師が点滴注射の(パック)を替えに入室して、圭介は微かな音に目覚めた。その圭介に気づいたのか、にこっと笑みを向けて、「大丈夫ですよ…」と、小さく慰めの言葉を吐き、去っていった。内科の井口さんとはまた違った感じの人だ…と、圭介は単に思った。それ以上の想いは、流石に今日は浮かばない。静穏なのだが、室内の照明は白色蛍光管の眩い光に覆われている。昌の体内から吸引排出されるドレーン装置と体内から装置を結ぶチューブが圭介の眼にはまた異様に映る。その光景を遮ろうと、圭介はふたたび瞼を閉じた。眠ろうと無理には思うが寝つけない。だが、人間である証か、ふたたび微睡んで、意識は次第に遠退いていった。

昌の意識が戻り、口元を水に浸したガーゼで拭っていたものが、三島のOKもでて、吸い飲みで口を潤してやる。一日交代で智代とバトンタッチするため病院へと馳せると、その都度、母の容態に回復の兆しが増していた。

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