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第十七回

 駅を出て地下通路を昇り、月極(つきぎめ)の駐車場へ置いた車を始動する。いつもなら、適当に外食を済ませて帰宅するのだが、何故かそういった思考回路が働かない。車は自宅へとひた走っていた。ビル群が減って郊外へかかると、地平線が際立つ光景が展開する。日没近い太陽は昼間より幾分か大きく(オレンジ)色に染まり、上空は薄朱と橙色に蒼天が色づけられている。

「もう秋だな…」と、体感から、圭介はひと言、そう発した。

 手術(オペ)は予定されたとおり、木曜に行われた。五時間半に及んだ手術は、一応の成功をみたが、三島が説明したように、術後の再発がいつ起こるか予断を許さない。昌には胃潰瘍だ、と云ってある手前、圭介は再発時の話を如何に取り繕うかと術前は悩んだのだが、 ━ 先生の話は全て聞かなかったことにして、忘れりゃいいんだ。母さんが癌であることを… ━ と、勝手な論理で自分を納得させ、冷静であろうと努めていた。昌の余命は、恐らく…と、浮かぶ想いが心の深層を氷結させる。病から逃れようという気持ではないが、母の余生が短いとは、思いたくもなかった。

 手術の最初の夜は、智代が病室で寝泊まった。集中治療室(ICU)は完璧に他人を遠ざけて、万一の急変に呼応している。心臓の脈拍(プルス)を刻む音が、機械化されたされた音に変えられ、規則的なリズムを奏でて室内に継続して鳴り響く。

 三島の術後報告は、幸いなことに手術が順調に推移し、成功裡に集結した・・というものであった。

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